2015/10/28 挑戦者たち

輪っしょいファミリー 代表 南風見 一樹

沖縄の人たちに、おいしい料理や世界の食文化を知ってもらいたいという南風見一樹氏。来店客やスタッフ、先輩経営者たちにも愛されている南風見氏に、これまでの歩みや今後の目標を語ってもらった。

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様々な食体験ができる店を出し、沖縄の人々を幸せにしたい

沖縄の人たちに、様々なおいしい料理や世界の食文化を知ってもらいたいと話す、輪っしょいファミリー・代表の南風見一樹氏。生粋のサービス精神で、来店客やスタッフからはもちろん、先輩経営者たちにも愛されている南風見氏に、これまでの歩み、そして、今後の目標を語ってもらった。

――消防士を目指していた南風見(はえみ)さんが、飲食業に入ったきっかけは?

中学から柔道に熱中し、スポーツ推薦で大学に入りました。初めて飲食店で働いたのは、大学在学中の19歳のとき。沖縄・久茂地に叔父が居酒屋を出し、そのオープンを手伝ったのがきっかけです。将来は消防士になりたかったので、あくまで学生のアルバイト。そこである先輩に出会い、「飲食業も楽しい」と思い始めた頃、その先輩が独立して、国際通りに居酒屋をオープンしたので、こちらも手伝っていました。当時はチラシを配って呼び込みをする店が少なく、これを徹底するだけで結構、繁盛しましたね。その後、先輩は店舗を増やしていき、私は調理や接客に加え、経営に関わる仕事も任せてもらうようになりました。

ただ、消防士の夢もあきらめていなかったんです。でも、那覇市の消防士の試験は、100人受けて合格者が1人いるかいないかという超難関で、落ち続けました。消防士は年齢制限があり、最後のチャンスも逃してしまったとき、叔父の居酒屋の業績が芳しくなかったため、立て直しを頼まれ、今度は社員として入社。統括マネージャーとして経営に関わることになりました。蓋を開けてみると問題が山積みで、メニューの変更、内装、スタッフの意識改革など、全部やり直しました。ここでは、先輩の店での経験が活きましたね。1億5000万円の年商が2年で4億円になり、その後は順調に店舗も増やして、カラオケ店も出店。「これなら何でもいけるな」と、ちょっと天狗になっていましたね。

そんなとき、株式会社みたのクリエイトが経営する「産地直送仲買人 目利きの銀次 新都心本舗」を訪問。そこは、自分がやっていることとはまったくレベルが違いました。メニューの価格、クオリティ、内装、スタッフのホスピタリティ…。頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。そこで、田野(治樹)社長のブログを2日で全部読み、そこに登場するほかの経営者さんたちについても調べまくりました。その後、人づてに紹介してもらい、田野社長と会うことができ、話をさせてもらいました。初めての自分の店「産直市場 輪っしょい 国際通り松尾店」をオープンする前のことです。

――「輪っしょい」1号店は、どのような経緯で誕生したのですか?

「輪っしょい」は、まだ叔父の会社で働きながら、国際通りの物件を先輩に譲ってもらって出店しました。田野社長の「目利きの銀次」は、メニューや内装などが同業他社から参考にされていますが、実はこの店も影響を受けています。「目利きの銀次」が魚を売りに成功していたので、何かを前面に打ち出すことが絶対に必要だと考えました。そこでオープンにあたっては、肉に特化。しゃぶしゃぶ店を手がけた経験などから、肉メニューの開発は得意でしたし、沖縄の経産牛が安くておいしいことも知っていました。狙い通り店は盛況で、半年後には「無国籍産直市場 輪っしょい 那覇久茂地店」を、さらに、その1年後には「琉球楽園ダイニング Ohana 」を出店。叔父の会社からも離れて、独立しました。

1979年、沖縄県生まれ。柔道で県内トップクラスの実績を残し、スポーツ推薦で高校・大学へ進学。1998年にアルバイトで初めて飲食業の世界へ。同時に、消防士を目指して奮闘するが、2007年からは本格的に飲食業の道を進み、2010年に独立・開業。現在、沖縄県内で5店舗を経営する。

――そして、4店舗目が大ヒットを飛ばすことになるのですね?

4号店の「竹炭・備長炭炉端焼きたけすみ 那覇店」は、ようやく自分自身が納得して作った店舗です。オープンから着実に売上を伸ばし、現在、60坪120席で平均月商1600万円の実績を残しています。それまでは資金不足と居抜き物件ということもあり、100%満足する店づくりができず、悔しかった。1~3号店でしっかり結果を残したことで借入もスムーズになり、ずっとお願いしたかった造形集団株式会社の兼城(祐作)さんにデザインを頼んで、生け簀も作りました。食材や価格にもこだわっています。「たけすみ」の売りは、県内の肉と全国の鮮魚。全店舗に共通した想いですが、私は地元の人に来てもらいたい。県産のブランド肉といったら、沖縄の人でも石垣牛とアグーくらいしか知らない人は多い。伊江島牛や伊江島あい鴨、石垣島の美崎牛など、ほかにもおいしい肉があることを伝えたいんです。

また、若い人でも月に3回は来店できるよう、客単価は3200円に抑えています。これが3500円になると沖縄では値頃感がなくなり、来店頻度が下がる。入店後1時間は、ビールなどのドリンクが188円というサービスも、来店頻度を上げることが狙いです。「たけすみ」のある久茂地は特殊なエリアで、少し歩けば国際通りがある観光地であり、近くに県庁があってビジネス街でもある。さらに少し歩けば住宅地があり、多くの飲食店が並ぶ繁華街でもあります。そんな場所におしゃれな内装で、接客がしっかりして、食材にもこだわった店はあまりなかったので、うまくはまったのだと思います。

――今年6月にオープンした新店は、どんなお店なのでしょうか?

「すみたけ/ラボラトリオ」は1階が居酒屋、2階はスペインバル。この店は入店時にフロアが選べ、どちらでも同じメニューが食べられます。「すみたけ」は、「たけすみ」よりも少しアッパー層を意識しました。「たけすみ」のお客様からのリクエストもあり、メニューも少し高い価格帯に設定しています。それでも、割烹などでしか食べられない食材やわら焼きなど、沖縄ではあまり見かけない料理を、リーズナブルに提供しています。また、自社で「やいまハーブ山羊」というブランド山羊の生産も始め、メニューにも取り入れて、とても好評です。将来的には、このブランド山羊を全国に流通させたいですね。

2階の「ラボラトリオ」では、さらに挑戦的な試みをしました。液体窒素やエスプーマなどを使った「分子ガストロノミー」を採り入れたメニューを提供しています。このチャレンジも、沖縄の人たちのため。テレビなどで、東京や大阪と変わらないくらい食に関する情報量が入ってくるのに、それを実体験できる場所が沖縄には圧倒的に少ない。だから、沖縄でも最先端の食文化を体験できる店を作りたいと考えました。まだまだ認知度は高くないですが、徐々に受け入れられている実感はありますね。

「すみたけ/ラボラトリオ」オープン時に。物件を決めたのは「階段の吹き抜けが気に入ったから」(南風見氏)

――今後の目標や展望については、どのような考えをお持ちですか?

これまで“人”に恵まれ、外食オーナーの経営塾「太陽の会」などにも参加させていただいていますが、いろいろ勉強させてもらうなかで、「自分はまだまだだな」と感じます。今後はもう一度足元を見つめ直し、社内の整備に取り組みます。店舗数も増やしたいですが、まずは沖縄の主要13市町村への出店を目指します。それは働くスタッフの誇りにもなりますし、人材確保の面でもプラスになるはず。「たけすみ」を出店した頃から、外国人スタッフも積極的に採用してきました。店が増えると人材の問題も大きくなるので、しっかり考えないといけません。

東京進出も考えていますが、まずは会社の基盤を強くして、沖縄の人たちを食で幸せにしたいと思っています。

竹炭・備長炭炉端焼き たけすみ 那覇店(沖縄・那覇)
http://r.gnavi.co.jp/fcnw2jub0000/

竹をモチーフにした独創的でおしゃれな空間で人気の店。竹炭を使った炉端焼きで、県内のブランド牛や全国各地の鮮魚が楽しめる。
すみたけ/ラボラトリオ(沖縄・那覇)
http://r.gnavi.co.jp/9ubhb0gp0000/

1階はわら焼き炉端が売りの居酒屋、2階はスペインバル。分子ガストロノミーをはじめ、挑戦的な試みで注目を浴びている。

Company Data

会社名
輪っしょいファミリー

所在地
沖縄県那覇市久茂地3-29-41 久茂地マンション203

Company History

2010年 「産直市場 輪っしょい 国際通り松尾店」オープン
2011年 「無国籍産直市場 輪っしょい 那覇久茂地店」オープン
2012年 「琉球楽園ダイニング Ohana」オープン
2013年 「竹炭・備長炭炉端焼き たけすみ 那覇店」オープン
2015年 「すみたけ/ラボラトリオ」オープン
     現在、直営5店舗を運営

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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