2011/12/27 Top Interview

レストランは街の資産。存在意義のある店づくりを~株式会社 HUGE 代表取締役社長 CEO 新川義弘氏

徹底した実力主義で知られる株式会社グローバルダイニングに在籍中は、東証2部上場をはじめ、同社の成長の一翼を担った新川義弘氏。2005年に株式会社HUGEを設立した以降も、新業態を着実に成功へ導き、日本の外食シーンを牽引してきた。

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更新日:2022.7.14

目次
デリカテッセンとバルの融合 原点は「こんな店がほしい!」
"キャラクターの立った店"を五感を総動員して作る
得意なのは「長く続けること」。「街の資産」となる店を
Company History

 徹底した実力主義で知られる株式会社グローバルダイニングに在籍中は、東証2部上場をはじめ、同社の成長の一翼を担った新川義弘氏。2005年に株式会社HUGEを設立した以降も、新業態を着実に成功へ導き、日本の外食シーンを牽引してきた。2011年9 月にはデリカテッセン業態をスタート。新たな航海を始めた新川氏に、発想の源にある思いと、外食産業の未来について語っていただいた。

株式会社 HUGE 代表取締役社長 CEO新川 義弘(Yoshihiro Shinkawa)。1963年生まれ。1984年長谷川実業(現・株式会社グローバルダイニング)入社。1988年同社取締役、2002年同社取締役最高執行責任者に就任し、店舗運営を統括する。2002年に日米首脳会議の場となった「権八」で、小泉純一郎首相と、ジョージ・W ・ブッシュ米大統領の接客を担当。2005年同社を退社し、株式会社HUGE を設立。

デリカテッセンとバルの融合 原点は「こんな店がほしい!」

 新川義弘氏率いる株式会社HUGEが、2011年9月にオープンした「グラーノデリカテッセンバル」(東京・恵比寿)は、その名のとおり、デリカテッセン(テイクアウト用の洋風惣菜やサンドイッチを販売する飲食店)とバルが融合した店だ。約30種類の惣菜をテイクアウトすることができ、ランチやディナーのイートインではフルサービスのもてなしも行う。提供する料理のコンセプトは、雑穀を取り入れたヘルシーで上質な家庭料理。なるほど、これまでありそうでなかった新しい外食シーンといえる。

 「もともと、私はデリカテッセンが大好きで、デパ地下へも頻繁に行きます。惣菜から、まんじゅう、作り置きの焼き鳥まで、あれもこれも食べたくなるタイプです。これまで、東京中のおいしいものを求めて歩きました。でも、ロンドンのノッティング・ヒルにある『オットレンギ』という店に行ったときの楽しさは忘れられません。そこは惣菜やパンやケーキをテイクアウトでき、夜は日本で言うところの居酒屋になるのですが、実に活気があっておもしろい。いろいろな人が惣菜を買いに来て、仕事帰りのビジネスマンが立ち寄ってビールを飲んでいるかと思えば、颯爽とバーバリーを着こなした女性と、若い英国紳士のカップルがいたりと、店の雰囲気もかっこいい。笑顔があふれ、おいしくて、ワクワクする空間です。こういう店が日本にもほしい! 絶対作ろう! と思ったのです」。

 これまで"ファインダイニング"の「レストランダズル」、スパニッシュイタリアンのカジュアルレストラン「リゴレット」をはじめ、100席を超える大型店を成功させてきたHUGEとしては、小さな店舗空間への進出という点、また、外食と中食の融合という試み、さらには雑穀や家庭料理へのアプローチという意味でも、従来とは違った新しい領域へのチャレンジとなる。

 「デリカテッセンについては、まだまだ当社はビギナー。しかし、新しいことを始めるときは壁があって当然。自分がロンドンで見たリアリティーを信じて、前進するだけです」と並々ならぬ意欲を語る。

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"キャラクターの立った店"を五感を総動員して作る

 人気のある店はどこも、席の間隔が狭く、ぎゅっと詰まっているけれど、座れば居心地の良い空間に包まれる――。新川氏が作ってきたレストランの多くが、まさにこれ。根底にあるのは、「レストランは五感で感じるもの。だから、店を作るときも五感を総動員し、商品、デザイン、立地、サービスの全体を練り上げる」という姿勢だ。店舗の大小や商品に違いはあっても、店づくりの基本姿勢は一貫している。

 「あの街の、あの角に、こんな店があって、そこでは○○がうまい! ◎◎が好き! と言ってもらえるような、具体的なキャラクターが立っている店であることが大切です。例えば『2500円のうまいワインがある』とか、『お惣菜屋だけど夜は一杯飲めるよ』などと、会話の中で話題にしてもらえるキャラクターです。そして、店に入ると、お客様がみんな笑顔で、食べて飲んで、しゃべって、笑って、元気になれること。これは飲食店の特別な価値です。お客様にとっても、"満席が何よりのごちそう"です。ここからブレないことが、私たちの場合、大切なことだと思っています。『いつも満席で入れないから、早く2店目を作ってよ』とお客様に言われて増えていく。そんな展開が理想的ですね」。

得意なのは「長く続けること」。「街の資産」となる店を

 特徴的な業態を次々に打ち出してきた新川氏だが、「本当に得意なのは、長く続けること」と言う。オープン後、10年続く店は1割といわれるほど継続が厳しい飲食店で、あえて「百年品質のレストラン」を掲げる。

 「社是は"街の資産となるレストラン"です。東京ではこだわりの店がたくさんできていて、飲食店のレベルはおそらく世界一。とはいえ、店を作るだけでは飲食店の本当の使命を果たすことにはならないと思うのです。その街にあり続けられる店、街の人々の止まり木のような店として、5年、10年と続け、"街の資産"となりたい」。

 ランチタイムもディナータイムもなるべく貸切をとらないのは、フリー客の期待を裏切りたくないからだという。"ちょっと飲みに(食べに)行こうか!"というノリに応えるのも、飲食店の価値の一つ。新川氏のまなざしが、客の目線から外れることはない。「飲食店は新規客の再来店を勝ち取る戦い」と言いきるのも、新川氏自らもう一度行きたい店とは何かを、真摯に追求しているからだ。

 「飲食店を選ぶ動機で一番多いのが、『おいしかったから、楽しかったから、また行きたい』という再来店欲求なのです。その次が信頼する人からの口コミや、Webや雑誌などの媒体ではないでしょうか。もちろん新規のお客様の集客は大切ですが、一つ一つの店をちゃんと地に根付いたものにして、リピートしてくれるお客様の期待を裏切らない店、ブレない店であり続けたいと思います」。

 アジア諸国にとって、今も憧憬の都市といわれる東京。とはいえ、20~30年前に比べれば、外食産業がそれなりに成熟した反面、一昔前の"勢い"が今一つ感じられないのも事実。

 「東京はもっともっと夢のある空間にならなければいけないし、関東圏で3000万人というターゲットはまだ十分に魅力的です。都会のワクワク感やドキドキ感を、インターナショナルなレベルで形にしたい。その先に海外進出があると思いますが、今はまだ日本を、東京を究めたいのです」。 若い頃から、「これでいい」と満足したことがないと語る新川氏。飽くなき探究心が、若々しく精悍な顔から伝わってきた。

Company History

2005年

9月株式会社HUGE(ヒュージ)設立

2006年

4月「カフェ リゴレット」(東京・吉祥寺)をオープン
以後、リゴレットブランドを都内各地、横浜、仙台に展開
「レストラン ダズル」(東京・銀座)をオープン

2009年

7月「新(ARATA)」(東京・六本木)をオープン

2010年

10月「ムーチョ モダン メキシカーノ」(東京・丸の内)をオープン。
「ブラッセリー ディ アンド スウィートルーム」(東京・日本橋)をオープン

2011年

2月メキシカン業態2 店舗目の「アシエンダ デル シエロ モダン メキシカーノ」(東京・代官山)をオープン3月本社を東京目黒区に移転9月「グラーノ デリカテッセン バル」(東京・恵比寿)をオープン
現在、5業態14店舗を運営

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