2016/05/27 繁盛の黄金律

繁盛を続けるための5つの鉄則

繁盛店を生み出すのも難しいですが、繁盛店を長く維持するのは、もっと難しい。繁盛店は理詰めだけで生まれるものではなく、いろいろな要素が絡み合って、偶然に生まれることも多いからです。

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Vol.57

絶えざる変化をしていないと、繁盛店を持続できない

繁盛店を生み出すのも難しいですが、繁盛店を長く維持するのは、もっと難しい。繁盛店は理詰めだけで生まれるものではなく、いろいろな要素が絡み合って、偶然に生まれることも多いからです。

店主は、己の卓越した技がすばらしい商品を生んだ結果だと思っています。しかし、たまたま立地がよかった、原価率の高い商品で競争を勝ち抜いた、値付けがジャストフィットしていた、居心地のよい空間が集客に寄与した、メニューが時代にマッチしていた、酒の品揃えと値付けがよかった、サービスマインドのある人間がそろった、などと、店主が自信を持つところと別の要因で、繁盛を手にするケースの方が多いのです。

店主の自信過剰と勘違いにより、繁盛店を短命に終わらせるケースが後を絶たないのが、この業界です。また、2号店の9割が失敗に終わる、と言われているのが、飲食店であります。それも、1号店が繁盛した理由を、自分の都合のよいように解釈してしまうからです。

さて、繁盛を短命に終わらせないための鉄則があります。当たり前の話ですが、次の5つです。

  1. 主力商品を常に磨き込む。
  2. 常に新しい商品を投入する。
  3. どんどん変化をさせる。
  4. サービスのレベルを上げる。
  5. 店の改造・改装をし続ける。

この5つをやり続けても、繁盛店を持続できないことがあるのですから、やらなければ、客数=売上は「つるべ落とし」的に下がっていきます。実にシビアな商売なのです。これらの鉄則をひと言で言いますと、「どんどん変化、進化させている」ということになります。

良質のチェーン店が、個人経営の店に比べると比較的寿命が長いのは、この鉄則を守り抜いているからです。一カ所にとどまっていると、近い将来必ず死ぬ。このことをチェーン店はよくわかっているのですね。

利益を、店と商品の質向上に再投資しているか

さきほどの5つの鉄則は、すべてお金がかかります。これは別の言い方をすると、利益のすべてを懐に入れてはいけない、ということです。また、それよりも先に、この5つの鉄則に追加投資できるだけの利益が確保されていなければなりません。しっかり儲けて、それを未来に投資できて初めて、繁盛店は繁盛店の地位を守り抜くことができるのです。「人件費を払ってしまうとほとんど金は残らない」というのでは、繁盛しても、その繁盛はすぐに終息してしまいます。繰り返しますが、繁盛店はたっぷり利益を生み出せる店でなければなりません。

先述の「未来への投資」については、次の4つから成ります。

  1. 商品への投資
  2. 変化への投資
  3. 人への投資
  4. 店への投資

ここで注意しなければならないのは、改装などのハードへの投資のほかに、変化への対応や人材育成といったソフトへの投資が必要な点です。いや、ソフトへの投資のほうが、より重要だと言ってもよいでしょう。

食の世界は、絶えず変化しています。お客さまは常に新しいものを求め、違う店に移ろうと身構えています。この変化についていくためには、適切な情報を手に入れなければなりませんし、新しい食材を手に入れて、第2の看板メニューづくりに力を注いだり、新潮流の店のチェックをしなければなりません。そのためにはお金が必要です。

また、調理能力とサービススキルを上げていかなければなりません。従業員の育成・訓練のためには投資を続けなければなりませんし、模範となる店に、定期的に店主が従業員と一緒に出かけることも必要になります。時間もお金もたっぷりかかるということです。一般的に言って、店主ひとりが“新手(あらて)のお店”や繁盛店に行って、新商品開発のネタを探して来る、くらいが関の山です。それすらしないで、ただただ日々の営業を繰り返している、というのが大半かもしれません。

いつの間にか、商品も店構えも古くさくなり、従業員は絶えず入れ替わって接客レベルは上がらず、時代から取り残されて、閉店の止むなきに至る。これが大方の繁盛店の行く末であります。この道をたどってはなりませんね。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。