2016/12/29 繁盛の黄金律

独立開業を成功させるには、「慣らし運転」と「謙虚さ」を忘れるべからず

新規開店は、ソフトに、静かに、目立たないように~独立開業で失敗する4つの原因【後編】~ -「独立開業で失敗する4つの原因」後編です。前回は「立地の失敗」「資金不足による挫折」の話をしました

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Vol.64

“慣らし運転”の時期が必要

前回に続き、「独立開業で失敗する4つの原因」の後編です。前回は、“4つの原因”のうち、「立地の失敗」「資金不足による挫折」の話をしました。

失敗の3番目は、「開店時の混乱で力を出し切れなかった」ことによる失敗です。開店時の混乱は誰でも予想しているのですが、多くの場合、その予想を大きく上回ります。営業が不慣れなところにお客がドッと押し寄せ、「開店すれば何とかなるだろう」という甘い判断のもとに見切り発車をした結果、お店を大混乱におとしいれるのです。

この点では、チェーングループの開店手順はよくできています。チェーン店では、正式開店前に「ドライラン」という期間を持たせます。1~3日間ほど、特定のお客を招待して、お店の“慣らし運転”をするのです。調理もサービスも一定のレベルに達していないのですから、出てくるメニューも、それにともなうサービスも、未完成品です。未完成品ですから、お金を取るわけにはいきません。来店する人は「招待客」なのですから、その間の食事は無料ということになります。

地域との交流を深めるために、幼稚園児や保育園児、それにその父兄を招待することもあります。また、お年寄りグループを呼ぶこともあります。無料なのですから、多少のミスは許してもらえますし、その招待がその後、店を知ってもらうための足掛かりにもなります。また、地域の住民を対象に、抽選で「ドライラン」期間中の来店を募り、日時を決めて招く方法もあります。ここでは時間も指定するところがミソです。来店客が特定の時間に集中することなく、順繰りにさばくことができます。まさに“慣らし運転”です。

さらには、こういう方法もあります。招待客を特定せず、来店したお客に半額セールをするのです。この場合、不慣れなため半額なのですから、その趣旨を来店したお客にしっかりと告知しなければなりません。そうでないと、「何だこの店は」という怒りを買い、「半額」にありがたみがなくなります。その場で半額にせずに、半額券を渡すのもアリですね。次の来店につながります。

「ドライラン」は大々的に告知しては意味がなくなります。静かにひそかに開店して、徐々に本来の営業スタイルに近づけていくことが目的なのですから。

軌道に乗ったときに、大きな落とし穴が待っている

チェーングループでは、開店ヘルプチームが入ることが通例です。一般の個人店でも、開店時に「助っ人」を呼ぶことが多いでしょう。これがまた問題なのですね。「助っ人」が去ったあとに、本来のメンバーがキチッとしたメニューづくりとサービスを実践できるかどうかわからないからです。たいてい大きな落差が生じます。この落差が、店の評判を落としてしまうのです。

初来店時、お客は十分満足していたのに、二度目の来店で失望、落胆。ここで「もう来ないぞ」と決意を固められたら、それでおしまいです。1人のお客を失うだけではありません。このお客が悪い評判を流します。そして、それは一気に広がってしまうのです。

新規開店にあたっては、最初の1カ月が勝負です。この1カ月の初動ミスが、取り返しのつかない致命傷になります。せっかくよい物を持っていたのに、この1カ月のミスで敗退しなければならない店がどれだけ多いことでしょう。最初の1カ月は、儲けることを考えてはいけません。食材費も人件費もハネ上がるひと月なのですから、トントンになればよし、と思わなければ、店は軌道に乗りません。そのためにも、出店にあたっては十分な費用を持っておかなければなりません。

最後に4つ目。「売上を利益と勘違い」についてです。「そんなバカな!」と思われるかもしれませんが、こういう人が結構いるのです。特に、開店当初、順調なスタートを切った店の経営者こそ、このワナにはまりやすいのです。慢心が最大の敵です。現在の集客力=人気が、永遠に続くと思ってしまうのです。そうなると、明日の食材費だけを取っておいて、残りはパッと使ってしまおう、という気持ちが出てきます。気が大きくなるというやつですね。人件費、家賃をはじめてとして、そのほかの経費が出ていくことを頭の片隅ではわかっていても、明日からの売上で何とかなると思ってしまうのです。

一度、“遊びの味”を覚えたら、あとはもう坂道を転げ落ちることになります。商売には身が入らなくなり、せっかくの人気もアッという間に消えてしまうのです。だいたい、最初の繁盛が続くと考えることが間違いです。一段落すると(ふつう3カ月後)、来店客数は下降線をたどります。そのときは、テコ入れが必要です。当然、販促などの費用もかかります。そのためにお金の蓄積も必要です。1円も無駄にしてはならないのです。また、メニューの改変も必要になってきます。そのための準備もしておかなければなりません。一刻もムダにはできません。

外食経営でもっとも必要なことは謙虚さです。軌道に乗りはじめたときに、大きな落とし穴がパックリと口をあけて待っていることを、片時も忘れてはなりません。勝ってカブトの緒を締めよ、です。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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