2017/12/21 繁盛の法則

野菜中心の料理でファンを増やす中国料理店とは

「野菜が中心の中国料理店」とアピールする東京・飯田橋の「中国菜 膳楽房」は、中国料理の技法をベースにしながら、油っぽくなく、あっさりとした料理で、幅広い層から支持を集めている。

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中国菜 膳楽房

Key Point

  1. 10年の修業後に独立開業
  2. 野菜を中心にした料理で差別化
  3. 隠れ家的な立地で地道に集客

数千年の歴史と多様性を持ち、流行り廃りのない中華に着目

「野菜が中心の中国料理店」とアピールする東京・飯田橋の「中国菜 膳楽房(ぜんらくぼう)」は、中国料理の技法をベースにしながら、油っぽくなく、あっさりとした料理で、幅広い層から支持を集めている。「必要最小限の味付けにし、素材の味わいを引き出しています」と、オーナーシェフの榛澤(はんざわ)知弥氏は語る。飯田橋駅からほど近く、神楽坂の商店街から細い路地を入ったところにある木造2階建てを使った店舗は、隠れ家的で、古民家カフェのような雰囲気を持つ。大きめの窓から店内の様子がさりげなく見え、オフホワイトを基調に、ナチュラルで清潔感のある内外装に仕上げている。

オープンは2013年4月30日で、店舗規模はワンフロア12坪×2階、計30席。この奥まった立地から、オープン半年ほどは客数が少ない時期を経験したが、徐々に認知度が上がり、今ではランチだけで1日60~70人、夜も40~50人を集客し、特に夜は連日ほとんど予約でいっぱいになるという人気店となっている。

榛澤氏は1976年東京・高円寺生まれで、学生時代に個人経営の創作居酒屋でアルバイトを始め、料理や飲食店の仕事のおもしろさを体感した。その店で計6年働き、後半の3年間は料理長を任されていた。将来は自分の店を持ちたいと考えるようになった榛澤氏は、料理のジャンルを絞るに当たり、数千年といわれる歴史と多様性を持ち、日本でも根づいている中国料理に着目した。もはや流行り廃りのあるような料理ではなく、さらには新たな試みも可能であり、オリジナリティを出せるのも魅力と判断した。そこで、自身も20歳の頃からお客として通っていた東京・幡ヶ谷の中国料理店「龍口酒家(りゅうこうしゅか)」に、「修業先を紹介してほしい」と頼みに行ったところ、そのまま同店で10年間働くことになった。

独立前の修業は10年をひと区切りと考えていた榛澤氏は、開業に向けて準備を始め、当初は土地勘のある吉祥寺や西荻窪などで物件を探した。たまたま縁あって紹介されたのが、以前は1階が麻雀荘、2階に家主が住んでいたが、8年ほど空き家となっていた築約50年の現物件だった。都心での独立開業には不安もあったが、仲介業者の尽力もあって条件が折り合い、出店を決めた。耐震補強も施しながら、1階には榛澤氏の希望でオープンキッチン、カウンター席、テーブル席を設け、2階は元の古民家の雰囲気を活かした、落ち着いた客席フロアとした。

(写真手前左から右回りに)夜のメニューの皮がパリッと香ばしい「自家製 腸詰」(850円)、マレーシア産の金芯菜(きんしんさい/ユリ科のキスゲの仲間のつぼみ)を使った「金芯菜とエビの炒め」(1,250円)、独特のクロレラ麺を使った和え麺の「里麺」(850円)

同店を経営と研究の拠点に、新たなアプローチを模索

ランチタイムで圧倒的に人気があるのは、「日替わりランチセット」(950円)で、主菜、副菜、スープ、漬物、ご飯が付く。内容は榛澤氏が当日考えるというが、ホイコーローなどのスタンダードメニューから、季節の野菜を使った料理など、バリエーションが豊富で、週に何回も食べに来るリピーターが多く、1日に40~50食が出ている。ほか、白ゴマをたっぷりと使った「担々麺」(950円)や、特製クロレラ麺に、チャーシュー、ザーサイ、長ネギの細切りを加え、しょうゆとゴマ油がベースのタレで和えた「里麺」(昼はスープ付きで800円)も好評を得ている。里麺(りーめん)は、修業先の龍口酒家の名物「シェフのおまかせコース」のシメに提供している麺で、榛澤氏が「ここで修業していた証にもなるので、独立後に自分の店でも提供したい」と話し、許可を得てメニューに加えた。ランチの客単価は900円で、30~40代を中心とする女性が7割強を占める。近隣の住人や企業に勤務している常連客が多いが、最近は遠方から来店する人も増えている。

夜は、カメ出し紹興酒やワインの品ぞろえを充実させ、料理は単品約30 品目、本日のおすすめ料理約20品目、コースの「膳」(3800円)、「楽」(4500円)、「房」(6500円)をそろえている。また、龍口酒家と同様に、お客がストップをかけるまで料理を提供するおまかせコースにも対応する。夜の客単価は5000円で、アルコール類が売上の約3割を占めている。

同店が路地裏の立地にありながら徐々に認知度を上げてきた要因は、以下のようになるだろう。

  1. 人気中国料理店で10年の修業後に独立開業を果たしている。
  2. 野菜を中心に、さっぱりした料理で差別化している。
  3. 隠れ家的な立地で地道にリピーターを増やしている。

「まずはこの店の今の状況を今後も継続していけるように、知名度を上げて安定させるというのが第一目標です。また、将来的には店舗展開も考えています。『膳楽房』という店名は、“食事を楽しむ場所”という意味と同時に、楽房をラボ(研究所)とひっかけて、料理を研究する場所という思いも込めています。味付けや調理法に関してはクラシックな中国料理ですが、ここでいろいろな研究を重ね、新しいアプローチができたらと考えています」と、榛澤氏は次の目標を掲げている。

中国菜 膳楽房
住所

東京都新宿区神楽坂1-11-8
TEL 03-3235-1260
営業時間
11:30~14:30(L.O. 14:00)、17:00~23:00(L.O. 22:30)
定休日
月曜日(それ以外に、火、日曜日に月1回ずつの不定休あり)
https://r.gnavi.co.jp/gd49900/