2017/12/19 特集

人気店の経営者へ10の質問 2018年、そしてその先へ 前編

全国の気鋭の経営者8人に2017年の振り返りから、2018年、そして10年後の自社未来図まで、10の質問に答えていただいた。前編では北海道、北関東、南関東、滋賀を地盤にする4人の経営者が登場。

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2018年のキーワードや展望、10年後の自社未来図から尊敬する経営者まで
「今年の一皿」に「鶏むね肉料理」が選ばれ、「チーズタッカルビ」や「強炭酸ドリンク」など、様々な食のトレンドが生まれた2017年。南北に細長く、気候も、都市の規模や人口も違う日本で、各地の経営者は日々どんなことを考えているのか。新春企画として、全国の気鋭の経営者8人に、2017年の振り返りから、2018年、そして10年後の自社未来図まで、10の質問に答えていただいた。前編では北海道、北関東、南関東、滋賀を地盤にする4人の経営者が登場。

目指すべきものは、飲食企業ではなく、食流通商社

株式会社ラフダイニング大坪友樹氏COMPANY PROFILE2005年、札幌市南区澄川に1号店を出店。「港町酒場 もんきち商店」「港町のモンキチ」「炭焼バルSACHI」「産直大衆ビストロSACHI」など9店舗を札幌市内に展開する。2015年には道内の漁港から仕入れた鮮魚を全国の飲食店に卸す「SHIHACHI」を立ち上げ、物流事業に参入した。YUKI OTSUBO PROFILE1980年、北海道生まれ。大学を卒業して株式会社ニトリに就職後、24歳で起業して飲食業界に転身。2005年に1号店を出店した。店舗展開を進めるなかで、北海道の食材にこだわるようになり物流事業も開始。飲食ビジネスのプロデューサーとしても活躍する。

2017年を振り返って

当社では、大きく「飲食」「物流」「イベント・デザイン」の3事業を展開しており、将来的には流通商社を目指しています。そこに向かって各事業をどう“深化”していくべきか、考え、悩んだ年でした。

飲食事業部に関しては、今後も順調に既存店売上高を伸ばすことが難しくなることを想定し、時代の変化に前もって順応するべく、既存業態のブラッシュアップを抜本的に行いました。店舗価値を高めることを考え、主力の「港町酒場もんきち商店」とは雰囲気を変え、客単価も高く設定した新ブランド「港町のモンキチ」を7月に出店しました。物流事業では、2015年に、飲食店向けに北海道の鮮魚の卸売を行う「SHIHACHI」を立ち上げています。仕入先は道内の漁港20カ所、卸先は全国の飲食店80社100店舗にまで拡大し、ようやく2年の歳月をかけて、黒字に転換。今後のベースが固まったことは大きな成果です。

2018年の展望とキーワード

キーワードは、「ヒト、モノ、コトのシェア」です。企業の経営者には、様々な能力を持った方がいますよね。その能力をつないでシェアできれば、より大きなことができる。そのためには事業間連携が必然で、ホールディングス化がベストな形ではないかと思っています。その実現に向け、今、道内のイベント企画会社と資本提携する話が進んでいます。この会社が持っている若い人材のデータベースを活かして、人材と企業のマッチングをする新たな事業展開が可能で、自社と地域の飲食企業の仲間たちの、人材不足解消に結びつけることもできる。これが「ヒト」の部分です。「モノ」では、「SHIHACHI」がポイント。北海道の資源を飲食店が共有し、おいしい料理を提供することで、広く価値を伝えていきたい。鮮魚店との資本提携の話も進めています。「コト」では、仲間と共に町を元気にする同志で集まり、「横丁作り」を行っていきたいと思います。

自社店舗のエリアの状況

札幌全域に出店しており、将来を考えると危機感はあるものの、現状は決して悪くないと考えています。東京への出店も考えたことはありますが、北海道に住む人、遊びに来る人に満足していただくことが、この地で法人を作った私たちの役目ではないかという思いに至りました。ですから、飲食店事業はこれからも札幌がベースです。

「人材問題」への対策

実は社員不足で苦労した経験はほとんどありません。アルバイトメンバーに関しても、スタッフが新たなスタッフを紹介してくれて、1度入った人が定着し、どんどん人が育つのです。ちなみに、現店長たちは全員、アルバイトからの昇格。なぜ人が辞めないのかというと、国による「人はどうしてその会社で働きたいのか」という調査結果をもとに、そこに紐付いた取り組みをしてきたからです。

一例をあげると、企業理念は全スタッフで、全員が共感できるように考えて再構築しました。「今日のお客様に、あなたがいてくれてよかったと思ってもらえる日々を送りましょう」というものです。自分たちの想いをまとめ上げた理念なので、想い入れが違う。それをベースに仕組みを作ることで、行動に結びつきます。

10年後の自社未来図

ホールディングス化し、北海道で一番愛されるグッドカンパニーになりたいです。売上高を伸ばすことよりも、着実に、「価値」のある商社になっていきたい。売上目標は35億円。今は売上の9割が飲食事業ですが、10年後には7割が物流、3割が飲食と考えています。

気になる食材

まだ全国的に知られていない北海道の食材を紹介していきたいですね。

注目している業態

業態ではないですが「横丁」です。お客様が、好きな店から料理やお酒を持ってきて、ワイワイ食べ、飲み、語り合う。今、そんな横丁作りに着手しており、赤提灯が集合したような横丁がイメージ。地元の人たちが仕事帰りに、食と出合いを楽しみに来店できるコミュニティーを作りたいと願っています。

ベンチマークしている店

特定の店はありませんが、居酒屋から高級店まで、様々な店に行き、よいところを学んでいます。

尊敬している経営者3人

2人になりますが、1人は愛知の株式会社OHANAの創業者で、居酒屋甲子園3代目理事長の松田真輔さん。企業は家族であり、「大きな家族をつくる」という、今でも残る僕のビジョンを明確にしてくれました。その後、松田さんは、会社を若い社員に譲って歌手という新たな夢に挑み、40歳でメジャーデビューを果たされた。挑戦することをあきらめないその姿には、勇気をもらっています。もうひとりは、札幌の繁盛店居酒屋「松田丸」店主の小林義能さんです。人間力溢れる人で、約束を守ること、義理を大事にすることなど、人として大切なことを教えていただきました。

マイブームや趣味

ひとつは海外旅行です。いろいろな国に行って感性を磨いていきたいですね。

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