2018/01/31 繁盛の黄金律

店長、あなたの“立ち位置”が間違っています!

5分に一度は入口の状況をチェックし、待ち客数をキッチンに伝える-ランチタイムでウエイティングが出ているのに、何のケアもしていないために、みすみすお客を逃している光景をよく見かけます。

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Vol.76

5分に一度は入口の状況をチェックし、待ち客数をキッチンに伝える。

「ピークタイムにチャンスロスあり」ということは、この連載で以前にも指摘しました。ランチタイムでウエイティングが出ているのに、何のケアもしていないために、みすみすお客を逃している光景をよく見かけます。もったいない話です。

お客が来店したら、その後の30秒が勝負です。そのお客にどう対応するか、です。にっこり笑顔でキチッと声がけ。これをしっかりと行っていれば、よほどのウエイティングが出ていない限り、お客は待ってくれるものです。ある有名喫茶店では、冬の寒い日には、待っているお客に使い捨てカイロを差し上げています。うれしい気遣いではありませんか。これだけで、待つことの苦痛はずいぶん軽減されます。

ダメな店の共通点は、店長の“立ち位置”が間違っていることです。調理が間に合わないということで、キッチンにこもりっきりの店長がよくいますが、こういう店が「ダメ」の典型です。店長は5分に一度は、店の入口付近に行って、ウエイティングの状況を把握して、待ち客にお詫びの言葉をかけなければなりません。そして、その状況をキッチンに伝えることです。「ただいまお待ちのお客様は8人です」というように。そして、ピーク時の店長の仕事は、オペレーションの目づまりを取りのぞき、流れをスムーズにして、提供時間を早め、お客の滞席時間を短縮させることです。ですから、キッチンに入って調理を手伝うこともあります。しかし、それは緊急の対応であって、前述のようにキッチンに入りっぱなし、というようなことは絶対にあってはならないのです。

滞席時間が長くなるのは、お客が長居をするからだ、と思っている人はいませんか。それは大きな間違いです。長居の最大の理由は、商品の提供時間の遅れです。忙しいランチタイムに長居するお客なんて、まずいません。滞席時間が長くなるのは、すべて店の責任で、客数を正確に予測できていないことが、最大の原因なのです。その予測ができていないから、何が何個(皿)売れるかの予測ができないのです。ですから、プレパレーション(下ごしらえ)が十分できない。人員の手配ができない。また、ピーク時の訓練が不十分になるなど、すべて悪いほう、悪いほうに回っていきます。こういう店は、毎日が「不測の事態」の連続です。

かくして店長はキッチンに入りっぱなしとなり、来店の対応がまったくできません。お客は「こりゃ、ダメだ」ということで、店内を一目見たとたん、きびすを返して去っていくことになります。また、待っているお客も、案内がないので、空いた席を見つけて適当に着席します。4人用の席に2人で、ひどいときには1人で占拠することもあります。総席数が50席あるのに、25人で“満席”になってしまうような事態が発生してしまいます。また、テーブルのバッシングが遅れて、ウエイティングが出ているのに、そのテーブルには誰も座れない、などということも起きます。

「ずいぶん忙しくバタバタ動いていたのに、売上は大して取れなかったなぁ」ということがよくありますね。これはすべて、準備と訓練と気配りの不足が原因です。正確な客数予測ができていないのですから、準備のしようがありません。何はともあれ、店長が5分に一度、入口に立ってみる。もしくは、入口の状況をしっかりとチェックする。これを実践してみてください。これだけでチャンスロスがだいぶ減り、客数は伸びます。

どの時間のプロなのか、自店の「プロの領域」をはっきりさせよう

「ダメなお店」に限って、「ピーク以外の時間帯にもう少しお客が増えないものか」などと考えます。たいてい、ランチのピークは13時半で終わります。「じゃあ、その後は喫茶タイムにしてお客を増やそう」などとしますが、とんだ考え違いというものです。喫茶タイムには、別の喫茶専門店があるのです。その店は喫茶のプロです。プロを相手にして素人が勝てるはずがありません。夜も同じです。アルコールを売ったことがない店が、アルコールメニューをそろえたところで、お客を呼べるでしょうか。商売の中身が違うのですから、簡単ではありません。

これは外食業に限ったことではありませんが、「餅屋は餅屋」です。わが店はどの時間のどういうお客を対象にしたプロなのか。まずは自分の「プロの領域」をはっきり見定めることです。そしてそこをとことん深掘りして、どこにも負けない強さを身につけることです。

「プロの領域」がはっきりすると、やるべきことが明確になります。「まだまだ取りこぼしが多いぞ、チャンスロスしてばかりだ。ほかの時間帯に目移りしている場合じゃないぞ」ということを痛感することになります。何ごとも正確な客数予測が前提になりますが、何はともあれ、目いっぱいお客が来ている時間帯はまだまだお客を増やせるということです。

まずは、店長、あなたの動き方を根本から変えてみましょう。そして、店の入口で日々チャンスロスが発生していることを、くれぐれもお忘れないように。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。