2011/07/05 繁盛の法則

17年間愛され続ける街角の西洋食堂とは

ご飯、みそ、しょう油をベースにフレンチの技法を加えた料理を提供。お箸で食べられる日本人好みの洋食を、アットホームな雰囲気の中で提供している東京・代々木八幡の「せきぐち亭」は、多くのリピーターに支えられている地元の人気店である。

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せきぐち亭(東京・渋谷)

駅前商店街から横道をやや入った場所にある15坪28席のこぢんまりした店舗

Key Point

  1. 日本人好みの洋食で常連客を掴んでいる
  2. 日々改良を加え、常に味を進化させている
  3. 店主の目が行き届く店舗でお客との交流に努める

ご飯、みそ、しょう油をベースに
フレンチの技法を加えた料理を提供

お箸で食べられる日本人好みの洋食を、アットホームな雰囲気の中で提供している東京・代々木八幡の「せきぐち亭」は、多くのリピーターに支えられている地元の人気店である。創業は1993年12月6日。ハンバーグやシチューなど、家庭でも登場するような洋食の定番メニューを、フレンチの技法によりレストランならではの味に仕上げている。

オーナーシェフの関口康史氏は、フランス料理店やステーキハウスでの修業を経て独立した。その際、料理の師匠から、高級フレンチよりも大衆的な飲食店のほうが、事業として成立しやすいとアドバイスされ、日本人に合う料理を手頃な価格で楽しめる店を目指した。また、繁華街で不特定多数のフリー客をターゲットとするより、常連客の多い店にしたいと、小田急線・代々木八幡駅および地下鉄千代田線・代々木公園駅から徒歩1分の、やや横道に入った現在地を選んだ。15坪28席のこぢんまりした店舗に、「西洋食堂」という看板を掲げている。

「日本人に合う料理は、ご飯、みそ、しょうゆがベースだろうと考えました。そこに当店らしさを加え、家庭では食べられないような料理を目指しています。また、お客さまが笑顔になり、幸せな気分で帰っていただきたい。それが当店をオープンしたきっかけであり、今日まで変わらない私のポリシーです」と関口シェフは語る。特に、気軽に楽しめるランチに、創業時からのコンセプトがよく表れている。ランチメニュー950~1,100円は、ハンバーグやビーフカツといったメイン料理に、副菜の3種、ご飯、みそ汁がつく。ご飯がおいしくないと、すべての料理が台無しになると考える関口シェフは、新潟産コシヒカリを使い、電気炊飯器ではなく、ガス火を調整しながら鍋で炊く。女性客には120~130g、男性客には180~200gのご飯を茶碗で提供し、お代わりも1杯は無料としている。みそ汁は、かつおだし6割、いりこだし4割で合わせ、みそも2種類を使い、数品目入れる具材は毎日変えている。昼の客単価は1,000円で、営業時間中は満席が続く。

日々継ぎ足しながら作る濃厚なデミグラスソースに定評がある。手前がビーフシチュー2,835円(パンまたはライス付き)。奥がハンバーグステーキ200g 1,260円

味は日々改良して進化させ、
お客との心の交流を重視する

ソースで、毎日毎日継ぎ足しながら、濃厚な味わいに仕上げている。甘味を出すために、ニンジン、タマネギ、セロリ、パセリ、ニンニク、トマトなどの野菜類をたっぷり使い、端肉や筋肉などを焼いたときに出る肉汁も加え、旨みを凝縮させていく。このデミグラスソースを存分に味わえるのが、夜の「おすすめの煮込み料理」のビーフシチュー、テールシチュー各2,835円、タンシシチュー3,990円などである。ハンバーグステーキ200g1,260円は、夜はデミグラスソースか、しょうゆベースの和風ソースのどちらかを選べる。夜の客単価は3,000円で、ゆっくりと食事を楽しんでいくお客が多い。なお、昼のハンバーグステーキのランチセットは150g950円、200g1,100円とし、通常は和風ソースだが、各100円増でデミグラスソースにすることもできる。

「毎日毎日作りながら、少しずつ改良を加えています。今日よりも明日、明日よりあさってはもっとおいしい料理を作りたいという気持ちを持ち続けることが大切です。よく"秘伝の味"とか、"昔ながらの伝統の味"と称される名店の味は、絶えず改良を加え、味を進化させているのです。そうしないと、時代の流れに味が合っていかない。10年前の味と今の味が実際には違っていても、"いつも同じ味だね"とお客様から言われたら、それが正解なのです。

飲食店では、味がいい、ボリュームがある、雰囲気がいい、サービスがいい、価格が手頃、という5つは最低限の条件であり、当たり前のことと思っています。それ以上に大切なのは、お客様との心の交流、人間対人間の付き合いです。それができないと、経営はうまくいかなくなるんですね」と関口シェフは説明する。

同店が街角の洋食店として、常連客を17年以上魅了している要因は以下のようになるだろう。
1日本人が好む大衆的な洋食に、フランス料理の技法を加えて独自の料理を作り出している。
2ていねいな調理を継続しつつ、日々改良を加えて味を進化させ、時代の変化に合わせている。
3オーナーシェフの目が行き届く規模の店舗で、お客との心の交流に努めている。

1952年生まれの関口シェフは、将来はもっとメニューを絞り込み、上質な素材を使って丹精込めて作る料理を、限られた親しいお客に提供するような店にしていきたいという夢を描いている。

住所
東京都渋谷区富ヶ谷1-52-1
TEL
03-3465-8373
営業時間
11:30~14:30 L.O.、18:00~21:30 L.O.
定休日
不定休(月1回程度日曜休)