2018/05/18 繁盛の法則

ブランド豚の認知度アップに貢献するアンテナショップとは

嬉嬉豚とんかつ専門店「君に、揚げる。」(東京・池袋) に学ぶ-群馬・前橋産のブランド豚肉の認知を目指すとんかつ専門店。揚げたてのとんかつの味わい、ボリューム感、手頃な価格で注目されている。

URLコピー

君に、揚げる。

Key Point

  1. 良質な「嬉嬉豚」専門店として訴求
  2. ひと手間かけたアイテムで差別化
  3. 副菜の充実した定食として提供

食肉卸業者直営店ならではのお値打ち感が好評

「嬉嬉豚(うれうれぶた)」という、群馬・前橋産のブランド豚肉の認知度アップを使命とするとんかつ専門店「君に、揚げる。」は、株式会社ナチュラルポークリンクのアンテナショップである。東京・南池袋に2017年11月15日にオープンした同店は、揚げたてのとんかつの味わい、ボリューム感、手頃な価格と三拍子そろった店として注目され、10坪9席の小規模店ながら、平日で1日平均120人、土・日曜日は150人が来店し、早くもフル回転する人気店となっている。

同社は埼玉・朝霞市に本社を置き、新座市に食肉加工工場を有する食肉卸業者で、飲食店、ホテル、病院、学校給食などへの業務用販売をメインとする。牛肉、豚肉、鶏肉、食肉加工品などを総合的に扱うが、なかでも同社の社長である諏訪秋彦氏は豚肉好きで、前橋の高橋養豚場で飼育されている豚肉を、2014年から「嬉嬉豚」と名付けて販売を開始した。この嬉嬉豚を40日間熟成させた熟成肉「ねむるぶたおふトン」も、2017年から本格的に発売し、ともに商標登録も済ませている。

「嬉嬉豚を特に女性に食べていただきたいので、女性が1人でも来店できるような店づくりにしています」と諏訪氏は語る。スタッフは女性2人で、とんかつを手際よく揚げている平成生まれの店長の川口梨菜氏と、川口氏をきめ細かくフォローする母親の川口美絵氏が、息の合った調理、商品提供を行う。ともすると男性的なイメージの強い一般的なとんかつ店とは一線を画し、店内には柔和な雰囲気が漂っている。

主力商品は10種の定食各850円で、メインのロースとんかつ、ヒレかつ、肉巻きメンチかつ、肉巻きエビフライの単品もしくは盛り合せに、ご飯、具だくさんの豚汁、小鉢、おろしポン酢が付く。しかも、ご飯またはキャベツの大盛りにも無料で対応している。土・日曜日はキャベツの大盛りを希望する人が約半数、サラリーマンの場合はご飯の大盛りの注文が約半数を占める。キャベツと呼んではいるが、「とんかつには千切りキャベツという概念を打ち破りたい」という川口店長の想いから、同店ではキャベツの千切りにニンジンと水菜を加えてサラダ風にしており、シソのノンオイルドレッシングとゴマドレッシングの2種を卓上に用意している。大盛りともなると、皿からあふれんばかりの量を盛り付けている。

開店当初、定食類は各750円だったが、昨年末からの野菜類の高騰を受け、2月1日より100円値上げし、同時に「嬉嬉豚熟成肉ねむるぶたおふトンとんかつ定食(200g)」(1600円)を新メニューとして加えた。現在の客単価は900円で、平均月商260万円を上げているが、アンテナショップならではのリーズナブルな価格設定であるため、原価率は60%近くになっている。

オーダーの約半数を占める人気商品「嬉嬉豚ロースとんかつ定食(200g)」(850円)で、キャベツを大盛り(無料)にしたもの。とんかつにはレモンと練りからしを添えるほか、ヒマラヤ産岩塩、とんかつソース、しょうゆが用意されている。定食として具だくさんの豚汁、小鉢、おろしポン酢が付き、卓上の手作りピクルスも食べ放題

メンチやエビフライも肉巻きにして独自性を出す

一番の人気商品は、嬉嬉豚の特徴である餅のような弾力と、濃厚な旨味を堪能できる200gのロースとんかつで、オーダーの約半数を占めている。1日に50~60枚しか用意できないので、ほぼ連日売り切れとなるほどだ。盛り合せでは、ロースとんかつ(100g)と肉巻きエビフライ(2本)、ロースとんかつ(100g)と肉巻きメンチかつ(80g)、女性向けとして提供しているヒレかつ(60g)と肉巻きメンチかつ(80g)などがよく出ている。とんかつ用の肉類は、本社工場でカットされたものが届き、店内で筋切り、衣付けを行う。メンチは嬉嬉豚の肩ロースの薄切りで巻いて特徴を出しており、またエビと嬉嬉豚の脂の甘さが合うため、エビには嬉嬉豚のバラ肉のスライスを巻いてフライにしている。店内での手作業の調理が多く、ひと手間かけた料理にすることで、独自性を打ち出している。

カウンターキッチン内の2槽式のフライヤーは178~180℃に設定し、交互に使って高温を保つようにし、200gのロースとんかつで5分半かけて揚げ、引き上げてから2分半~3分間の「蒸らし」時間を取る。この蒸らしが重要で、余分な油を切りながら、余熱で芯までしっかりと火を通す。商品提供まで15分ほどかかるが、混雑時にはウエイティング中のお客の食券を早めに受け取り、着席後になるべく早く提供できるように努めている。

同店が肉卸業者のアンテナショップとしての役割を十分に果たしている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 弾力があって柔らかく、濃厚な旨味を持つ「嬉嬉豚」の専門店という特徴を明確化している。
  2. ていねいな調理とひと手間かけた料理で独自性を出している。
  3. 充実した副菜でバランスのいい定食として提供している。

「ここは嬉嬉豚の魅力を広めていくための店で、利益を上げることが目的ではないのですが、飲食店の経営は難しいですね」と諏訪氏は苦笑しつつも、確かな手応えを得ているようだ。

君に、揚げる。
住所

東京都豊島区南池袋2-13-10 東海キャッスル小林 1F
TEL 03-5957-0429
営業時間
11:00~16:00、17:00~20:00
定休日
水、木曜日