2018/12/05 繁盛の法則

常連客へのきめ細かい対応で売上を伸ばす四川料理店とは

東京・赤坂に行列に並んでも食べたい中華ランチが「四川小吃 雲辣坊」の「麻婆豆腐」。本場・四川風の麻婆豆腐は辛いなかにも複雑な風味と旨みを持ち、クセになる味わいで多くの常連客をつかんでいる。

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四川小吃 雲辣坊

Key Point

  1. 中国人シェフによる本格四川料理を提供
  2. 日本人オーナーがきめ細かい接客を実践
  3. 昼は相席により客席のフル回転を実現

辛味と旨みを併せ持つ麻婆豆腐でリピーターを魅了

飲食店の激戦区である東京・赤坂のなかでも、行列に並んでも食べたい中華ランチのひとつが、一ツ木通り沿いにある「四川小吃 雲辣坊(シセンシャオチ ウンラーファン)」の「麻婆豆腐」(ランチの定食880円)である。中国人調理師が作る本場・四川風の麻婆豆腐は、辛いなかにも複雑な風味と旨みを併せ持ち、クセになる味わいで多くの常連客をつかんでいる。

オープンは2011年5月で、当初は中国人オーナーシェフによる3店舗目として、「同源楼(どうげんろう)四川小吃(シャオチ)」という店名だった。そのオーナーは、際コーポレーション株式会社に勤務していた四川料理を得意とする料理人で、同店と同じビルの2階にある「同源楼」で独立。徒歩3分ほどの場所に2店舗目の「四川雅園」を出店した。そして、3店舗目の「雲辣坊」を出店するときに、際コーポレーション時代に同僚だった現オーナーの鈴木大輔氏が運営に参画。諸事情により、2016年に鈴木氏が同店の経営を引き継ぐことになり、ほかの2店舗も現在は別々のオーナーによって運営されている。グループ店だった頃の名残りで、類似のメニューも残っているが、徐々に各店独自の商品開発などを進めており、いずれも赤坂の人気中国料理店として支持されている。

鈴木氏は1974年横浜生まれで、大学進学を機に東京に移った。大学では中国語を専攻し、1年間の中国留学も経験した。卒業後は中国語を活かした仕事に就きたいと、大手物流会社、旅行代理店を経て、2003~2008年に際コーポレーションで勤務。店長職も務めた。その後、ホテルのバンケットマネージャーとして働いていたときに声がかかり、飲食業に復帰した。

オーナーとなった鈴木氏は、店名を変えると同時に、内装を一新し、L字型に客席側に出ていた厨房を店内奥にまとめ、客席の稼働効率を向上させた。16坪の店内に28席を配し、最大約20名 の宴会にも対応できるようになった。

夜の人気のメニューから、前菜の「豚バラ肉のニンニクソース」(734円/写真手前)、「麻婆豆腐」(950円/同奥。ディナーはサービス料5%加算)。昼の「麻婆豆腐定食」は、前菜、ザーサイ、お替り自由のスープとご飯、手作り杏仁豆腐が付いて880円と、お値打ち価格で提供している

相席の導入によりランチの客数増を実現

同店の3名のシェフは全員中国人で、ホールは昼は鈴木氏と中国人のアルバイト1名、夜は鈴木氏のみで稼働している。店内ではスタッフの中国語が飛び交うが、鈴木氏自らが常にホールに立ってきめ細かく対応することで、柔和な雰囲気が生まれ、常連客を喜ばせている。特に顕著なのは、常に行列ができているランチタイムの対応である。「赤坂はビジネス街なので、約8割が常連客です。このお客様が何を注文するか、来店された時点でだいたいわかりますから、やりやすいですね」と鈴木氏。また、2~3名で来店し、それぞれ別の定食をオーダーした場合、メインの料理を取り分けて食べることが多いため、お客から言われる前に取り皿と取り分け用のスプーンとフォークを用意する。常に客席に気を配り、お替り自由のご飯やスープ、お茶の減り具合、デザートの手作り杏仁豆腐の提供のタイミングを見極める。さらには、次に席に案内するお客が左利きだとわかっていれば、箸の向きを左利き用に変えてからその席に通す、といった具合である。

また、28席しかない客席をより効率よく回転させるため、2017年9月から一部の客席でランチタイムに相席を導入した。相席にする場合は、テーブルの中央にメニュー表を衝立のようにセットして視線を遮り、抵抗感を少なくしている。当初は鈴木氏も常連客の反応を懸念したが、お互いに譲り合ってくれ、相席もすんなりと浸透していった。それまでは100人前後だったランチの客数が120人ほどに増え、うち約6割が女性である。ランチの客単価は950円で、「麻婆豆腐」の定食が注文の3~4割を占める人気商品となっている。

夜は、3~4人のグループで酒とともに料理をじっくり味わう利用が多く、客単価は4200円で、平均30人が来店している。2017年秋に現在の2代目の若い料理長に代わり、鈴木氏のリクエストに応じて、冬の味覚のアンコウを使った「鮟鱇の唐揚げ 山椒風味」(1800円)、「鮟鱇の四川辛味鍋」(2500円)や、「ラムスペアリブのクミン揚げ」(1480円)など、新しいメニューも登場している。2017年までは月商400万円台前半だったが、2018年10月には月商540万円となり、着実に売上を伸ばしている。

同店がビジネス立地で常連客に愛される要因は、以下のようになるだろう。

  1. 中国人シェフによる本格的な味わいの四川料理を提供している。
  2. 日本人オーナーが個々の客に合わせた細やかな接客を実践している。
  3. ランチタイムは相席を導入し、限られた客席をフル回転させている。

「最近は月商500万円超で順調に推移しています。新規のお客様ももちろん歓迎なのですが、常連のお客様がホッとできる場所を作っていきたいですね。また資金的に可能であれば、中国内陸部の蘭州ラーメンを売りにした店や、新疆(しんきょう)ウイグル自治区のウイグル族の料理の店などもやってみたいと思っています」と鈴木氏は展望を描いている。

四川小吃 雲辣坊
住所

東京都港区赤坂3-18-8 エムプレスビル 1F
TEL 03-3583-3585
営業時間
11:30~15:00(14:30 最終入店)17:30~23:00(L.O. 22:00)土曜日、祝前日~22:00(L.O. 21:00)
定休日
日曜日、祝日