2018/12/28 繁盛の黄金律

「楽しく、愉快に、ノビノビと」働いてもらうための秘策(後編)

前回に続き、パート・アルバイト(PA)の採用力と定着率向上について。コンビニは人材をし続けられていますが、外食業も負けてはいられません。8つのポイントを見ながら解説します。

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Vol.88

8つの点で、外食業はコンビニに負けている

 前回に続き、パート・アルバイト(PA)の採用力と定着率向上についてです。個人店、チェーンを問わず、外食業は危機的な状況に突入しています。人は採れないし、採ってもすぐに辞めてしまう。以前からそういう問題はありましたが、今やどんな採用ツールを駆使しても、「応答なし」になってしまうことが珍しくありません。

 この状況からなんとか脱出しなければなりません。コンビニも採用は苦しくなっていますが、外食業に比べれば、はるかにPAを採れています。コンビニは外食業に比べると、はるかに仕事が楽だからです。コンビニの有利な点を挙げてみますと、

  1. 仕事をおぼえやすい。
  2. 軽労働である。
  3. 短時間でシフトに入れる。
  4. シフトがしっかりと守られている(無理な延長要求がない)。
  5. お客との対応がシンプル(対応時間が短い。それだけ無理難題の文句を言われる確率が低い)。
  6. 店のメンバー(店長など)との関係におけるストレスが小さい。
  7. 控え室、トイレ、更衣室がしっかりと確保されている。
  8. 休憩は約束どおりに取れる。

などがあります。

 もともと仕事が単純であり、お客ともシンプルな対応ができる、というところが、コンビニの優位点であることがわかります。外食業は仕事がややこしくて複雑で、お客との対応に神経を使わなければなりません。その点が敬遠される最大の理由ですが、さらに、店長や料理長や従業員といった店のメンバーにも、気を遣います。これがまた大きなストレスになります。

外食業ならではの楽しさをもっとアピールすることが必要

 はっきり言って、外食業はまず、コンビニに負けている8つのポイントを克服しなければなりません。コンビニに勝たなければ、PAは永遠に外食業には来てくれません。そう覚悟しなければいけません。8項目をもう一度見直してみると、外食業でもコンビニに勝てる(可能性のある)ポイントはいくつもあります。克服しづらいのは、複雑な作業とお客との応対(サービス)の2つだけです。あとは外食業でも乗り越えられることばかりです。

 要は、経営者に、それを克服する気があるのかどうか、です。チェーングループは、必死になって外食業のハンデを克服しようとしています。その結果、作業の単純化と軽労働化が進み、また、カウンターサービス(キャッシュ・アンド・キャリー方式)に転換することなどによって、サービスのストレスの軽減化も実現しています。その結果、外食業でも、チェーングループと個人店の間で、採用力の差が生まれています。旧態依然の営業を続けている個人店が、ますます不利な状況に追い込まれているのです。

 まず、機器の導入などによって、複雑な作業もどんどんシンプル化しなければなりません。サービスに伴うストレスも、オペレーションの仕組みの変更(改善)によって、ずいぶん除去できるものです。ストレス軽減に向けて、やれることはすべてやる。その方向を追求しつつも、もうひとつ、強く訴えなければならないことは、「外食業ならではの楽しさ」です。

 複雑だからこそおもしろい。スキルを身に付けなければならないから、楽しい。こういう外食業ならではの魅力を、常にアピールし続けなければなりません。外食業の魅力は(それが難点でもあるのですが)、調理とサービスです。一定のトレーニングを付加することで、プロとして働くことができる。この「プロとして」には、「初歩レベルの」という但し書きがつきますが、そこに向かうステップが用意されていれば、プロへの意欲は自ずと沸いてきます。いったんそのコースに乗ってしまえば、しめたものです。どこまで行っても単純労働の繰り返しのコンビニで働くことのつまらなさが、鮮明になってきます。そのためには、お店を「学校」にしてしまうことです。調理とサービスのカリキュラムがあって、一歩一歩ステップアップしていく。そして、スキルが確実に身に付いていく。お店をそういう「場」にしてしまうことです。「学校」でありながら、お給料が出るのですから、こんなにありがたい職場はありません。

 考えてみると、スキルが身に付くPAの働き場所というのは、あまりないことがわかります。外食業は特殊な働き場所なのです。そこがまさに外食業の優位点です。「学校」として機能させるためには、もちろん教え上手の教師(店長、料理長、トレーナー)がいることが、絶対の条件です。そして、「良き教師」にもっとも重要なのは、誰に対しても公平である、ということです。単純化の追求と、スキルの授与は、決して矛盾するものではありません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。