香港では珍しい日本産和牛の希少部位を売りに繁盛店へ成長!

近年、和食への注目度が世界的に高り、海外に進出する日本の外食企業も増加傾向に。アジア各国で、“日本の食”を売りにする繁盛店を取材。海外出店を成功させるためのヒントを探る。今回は香港の焼肉店をリポート。

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香港では珍しい日本産和牛の希少部位を売りに繁盛店へ成長!

【香港・中環】
298ROOM

2/F, Pearl Oriental House, 60 Stanley Street, Central, Hong Kong
https://www.298hk.com/
日本産和牛を一頭買いし、希少部位も提供する高級焼肉店。テーブル間のスペースをゆったりとっており、周りを気にせず落ち着いて食事ができると好評。

スタッフも焼き方を学びサービス向上につなげる

 世界的な大企業やブランド店が建ち並び、屋台から高級店まで幅広い業態の飲食店がひしめく香港の繁華街・中環エリア。その裏通りにある「298ROOM」は、香港在住の実業家・安崎彪氏が、シェフの小原昌浩氏とともに経営する高級焼肉店だ。

 15年前、安崎氏は自身が幼少期を過ごした香港に移住し、貿易会社を設立。2012年に飲食業にも参入した。「当時、香港の焼肉店が扱うのはあまりおいしくない冷凍肉ばかり。舌の肥えた層には“日本式の焼肉”が必ず受ける」(安崎氏)と考え、同年12月、友人を介して知り合った小原氏を誘い、1号店となる全22席の焼肉店「298Kitchen」をオープンした。

 主力食材である和牛は、香港で食材輸入を手掛ける日本の業者を通して日本産を入荷。「輸入する場合、細かく部位ごとに仕入れることは難しいため、塊肉から部位に切り分けていました。その作業を続けたおかげで、いつのまにか様々な部位をさばくスキルや希少部位の知識が身に付いていました」と小原氏は振り返る。当時の香港で和牛を扱う飲食店は少なく、多彩な部位を楽しめることも話題になり、3週間の予約待ちが出るまでに成長。「予約が取れない」という声が増えたこともあり、2号店を出すことにした。同じタイミングで、コストダウンのために一頭買いを検討していたため、「2号店は希少部位を売りにした高級店にし、ややカジュアルな1号店と部位を振り分け、一頭分を無駄なく使い切ろうと考えました」と安崎氏。そして2014年春、香港で新たに知り合った日本の輸入業者と組んで一頭買いを開始。同年6月に、1号店の約3倍の席数を持つ2号店「298ROOM」をオープンした。

 売りは、一頭買いならではの希少部位。トモサンカク、ザブトンなどを含む8種が並ぶ「A5希少部分盛り合わせ」(760ドル=約1万868円~)は、提供する際に、イラストを使って部位をこまかく説明。香港の人にとってなじみのない部位も多かったが、ていねいな説明を続けたことで、それまで霜降り肉ばかりを食べていた人が、希少部位や赤身肉のおいしさを知り、店のファンになっていった。「香港でいち早く『焼きしゃぶ』も導入しました。最初は、焼いた肉を生卵につける、すき焼き風の食べ方を嫌がるお客様もいたので、ポン酢を用意しました。しかし、今ではほとんどのお客様が生卵を使います」と安崎氏。希少部位を楽しめることや、日本ならではの焼肉スタイルが受け、アッパー層を中心に週末は予約で満席になる盛況ぶりを見せている。

 一方、スタッフ育成にも力を入れている。「お客様の代わりに焼くサービスを行うため、部位の特徴や焼き時間などをしっかり教えています。ポイントは、実際に試食してもらって違いを実感してもらうことです」と安崎氏。スタッフの出身地は香港やインドネシア、ネパールなど様々。総じて、日本人に比べると時間にルーズな面があるため、遅刻や欠勤には罰則、皆勤には賞与を与えるなど、目に見える評価基準を提示。これにより、遅刻や欠勤が減少し、勤務意欲も向上したという。

 現在、とんかつ店と焼鳥店もオープンし、香港で計4店舗を運営。「次は日本でも店をオープンさせて、日本人と外国人スタッフの交換留学をしたい。相互で知識や意欲を高めれば、サービスの向上だけでなく、人材の定着率アップにもつながると考えています」(安崎氏)と将来を見据えている。

「298ROOM」成功のポイント

1 パートナー

和牛の卸業者や現地の不動産店と良好な関係を築き、上質な肉を仕入れたり、物件情報を優先的に流してもらう。

2 メニュー

一頭買いの強みを活かし、希少部位を提供。当初、香港では珍しかった「雲丹サーロイン巻き」なども話題に。

和牛の一頭買いで希少部位も提供!8種の部位が味わえる盛り合わせが人気
(上)一番人気は「A5希少部分盛り合わせ(500g)」。内容は日によって異なり、写真はタン、ハラミ、ランプ、フィレ、イチボ、リブロース、トモサンカク、ザブトンの8種類。あっさりとした赤身やジューシーな脂身など、部位ごとの違いがわかりやすいと好評。部位ごとに焼き方も伝える
(下)「雲丹サーロイン巻き」(3貫210ドル=約3,003円)。生肉を食べる習慣がなかった香港でも、徐々に浸透して人気メニューに

3 人材

スタッフに和牛の各部位を食べさせて教育。時間にルーズなので、皆勤賞や遅刻への罰金を設けて、管理している。

焼肉の焼き方など徹底指導。罰金や報奨の設定で遅刻や欠勤が減少
スタッフには焼肉の焼き方などを指導。また、月に計15分以上の遅刻をした人には罰金を課す一方、1カ月皆勤で約8,000円、2カ月連続で約15,000円の報奨を出す。褒めるだけでなく、給料で評価を示すことで意欲を高めている

4 販促・演出

盛り合わせやコースでは、提供する部位を牛のイラストで紹介。希少部位のおいしさが浸透した。

「盛り合わせ」の提供時に、部位シートを使って説明
「A5希少部分盛り合わせ」を注文した来店客には、その日提供する肉の部位と並び順を書いた「部位シート」で内容を説明する。「牛のどの部分を食べているのかわかり、それぞれの味の特徴も覚えやすい」と好評を得ている

「298ROOM」の主なメニュー

●アラカルト

  • A5希少部分盛り合わせ(760ドル=約10,868円~)
  • カルビ(130ドル=約1,859円)
  • ミスジ焼きしゃぶ(220ドル=約3,146円)
  • タン塩(90ドル=約1,287円)
  • ハラミ(170ドル=約2,431円)
  • 大和豚バラ薄切り(120ドル=約1,716円)
  • 車海老(85ドル=約1,215円)
  • 帆立とキノコのバター焼き(90ドル=約1,287円)
  • 298特選ユッケ(140ドル=約2,002円)
  • 298自家製キムチ(60ドル=約858円)
  • すじぽん(85ドル=約1,215円)
  • 梅そうめん(100ドル=約1,430円)

●コース

  • おまかせコース(1,000ドル=約14,300円)

●ランチ

  • 298セット(298ドル=約4,261円)
  • 和牛カレーライスセット(150ドル=約2,145円)
ワインと並んで、日本酒も香港の人から人気が高い。「十四代」「久保田」「獺祭」など約10銘柄をそろえる

店舗データ

業態   焼肉店
オープン 2014年6月
    66席
客単価  昼/200ドル(約2,860円)夜/1,000ドル(約14,300円)
客層   20~60代まで幅広く、男女比は半々。来店客の半数が香港人で、日本人は1割と少ない。

※ 1香港ドル(文中では「ドル」で表記)=約14.3円(2018年1月)別途サービス料10%

マネージング・ディレクター、創業者 安崎 彪(たいが)氏(左)、エグゼクティブ・シェフ、創業者 小原 昌浩氏(右)
香港で貿易会社を経営していた安崎氏が、東京の有名焼肉店・きらく亭出身の小原氏とともに開業。

香港の基本情報

面積      1,103平方km(東京都の約半分)
人口      約737万人(2016年末)
言語      中国語(一般には広東語が多い)、英語
通貨      香港ドル(文中では「ドル」で表記)
飲食店数    約16,620店(日本料理店 1,280店)(2015年)
香港市民の月収 約21万円(中位数)

店舗周辺エリアの特徴

香港の中心地・中環は、オフィスや商業施設のほか、イギリスの名残を留める建物などの観光スポットもあり、飲食店の激戦区でもある。周辺の企業に勤めるビジネス層や国内外からの観光客など、様々な層が行き交うエリア。

出典:日本貿易振興機構、香港政府統計処

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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