2019/03/26 特集

シェフにも、店にも、メリット盛りだくさん! 十人十色の「コンテスト」活用法

場所、規模、内容など、様々に開催される「料理コンテスト」。「腕試し」や「モチベーションアップ」など、その参加理由や実施の目的も千差万別。「料理コンテスト」を集客のほか、店・スタッフの成長につなげよう!

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コンテスト入賞を店の強みにし、集客力を高めファンを増やす。第三者の評価が自信にも

【兵庫・芦屋】食&人の縁 うたげ

「朝ごはんメニューコンテスト」大賞 (ととろ豚 肉味噌とお豆腐の尼めし 680円) あたたかいご飯の上に冷たい豆腐と熱々のととろ豚の肉味噌を乗せ、生卵をトッピングした熱冷どんぶり。全体をかき混ぜて食べる。ランチで提供することも

Web、店頭、店内の随所で受賞料理をアピール

 こだわりの飲食店が多い兵庫・芦屋で、産地直送の厳選食材と、料理コンテスト受賞料理を集客のフックにしているのが、創作中華の居酒屋「食&人の縁 うたげ」だ。

 オーナーシェフの細谷吉応氏が最初に料理コンテストに応募したのは、前職のホテル料理長時代の2009年。「朝ごはんメニューコンテスト」だった。賞金に引かれて応募した、と笑うが、「将来的な独立を考え、コンテストで入賞すれば、店の“武器”になる」(細谷氏)という狙いもあった。ホテルで使っていた宮崎のブランド豚「ととろ豚」を使った応募作品は、「忙しい朝に一品で栄養バランスのよい食事が摂れる」と高評価を受け、大賞に。「私のことをまったく知らない、第三者の専門家に評価され、自信につながりました」と細谷氏は語る。加えて、大賞受賞者として翌年、千葉・幕張で行われた食に関する博覧会で、実際に受賞作品をライブで調理する貴重な体験もした。

「ふるさとニッポン メニュー大賞」30選 (ととろ豚のとろ~り角煮 クリームアボガドソース  980円) コンテストの目的は東日本大震災の被災者応援。スプーンで切れるほど柔らかく煮た豚の角煮に、被災した仕入先の鶏卵生産者への想いを込めて卵を添えた。女性に人気の一品

 また、2011年には東日本大震災の被災者激励を目的とした、「ふるさとニッポン メニュー大賞」に応募。震災後、被災地に住む、ホテルで使っていた卵の生産者と一時的に連絡が取れなくなり、その生産者に想いを馳せ、卵を使った料理を考案。見事「30選」に選ばれ、テレビでも紹介されたところ、これを見た生産者から連絡が入るという、うれしい出来事もあった。

シェフごはん「ヤマキ鰹節コンテスト」一品料理最優秀レシピ賞(岡山県産 鶏の唐揚げ 自家製カツオマヨネーズがけ 680円) お題は鰹節を使うこと。鰹節で鶏肉に下味を付け、出汁が効いた和風味の唐揚げに。さらに、鰹節を加えたマヨネーズをかけ、野菜を沿えて色合いを華やかに

 その後2012年、念願の独立。オープン後の2013年には、「シェフごはん ヤマキ鰹節コンテスト」に応募し、「一品料理最優秀レシピ賞」を獲得。それらの受賞料理はメニューに加えていたものの、受賞したこと自体をアピールしていなかったが、友人からのアドバイスでレジ前や店内にPOPを設置し、メニューブックにも掲載すると、注目度が歴然とアップ。来店時などにおすすめするとそこから会話が弾み、高い注文率につながっているという。また、毎年年末には受賞料理3品を盛り込んだ「コンテスト受賞コース」(飲み放題付き4500円)と銘打ったコースを用意しており、好評を博している。「店の認知度や印象が高まり、リピーターの獲得を含めて、集客につながっていると実感しています」(細谷氏)。ほかにも様々な料理コンテストで受賞歴がある細谷氏は、「テーマを踏まえて考えていると、あるタイミングでレシピがひらめきます」と言うが、日頃からアンテナを張り、テレビやWebなどで情報を収集し、食べ歩きや視察で舌を養うなど、努力を怠らない。「コンテストは集客につながるだけでなく、自信になる。またチャレンジしたいですね」と細谷氏。今後は、料理長と一緒に応募して切磋琢磨し、“ダブル入賞”を狙うつもりだ。

ぐるなびのトップページでも、コンテスト受賞料理が食べられることをアピール
こだわりのページでも、コンテスト受賞料理を売りとして明確に伝えている
  • メニューブックでは1ページを使って、名物料理とコンテスト受賞料理をまとめて紹介。目に留まりやすい工夫をしている
  • 店頭のボードでも、細谷氏のプロフィールと、コンテストで受賞した料理を写真つきで紹介
オーナーシェフ 細谷吉応氏
芦屋市出身。調理師専門学校で学び、中華料理店などで修業を積んだ後、専門学校の講師を経て、尼崎市内のホテルの料理長に就任。2012年に独立して「食&人の縁 うたげ」をオープン。様々な料理コンテストで受賞歴がある。
食&人の縁 うたげ
兵庫県芦屋市松ノ内町1-20 アルパ芦屋1F
https://r.gnavi.co.jp/kbe2500/
JR芦屋駅から徒歩3分、飲食店が並ぶ一角にあり、コンセプトは「生産者直送の食材にこだわった創作中華」。幅広いジャンルの店で研鑽を積んできたオーナーシェフの細谷氏が、中国料理の枠にとらわれない料理を提供。個室感覚のテーブル席も好評だ。

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