2019/04/03 繁盛の法則

高品質の天ぷらを大衆価格で提供する“天ぷら酒場”とは

「高級なイメージの天ぷらを大衆価格で」をコンセプトにした「天ぷら酒場上ル商店 門前仲町本店」。天ぷらは単品約50品目以上そろえ、個性のある「創作 天ぷら」を20品目用意。着実に売上を伸ばしている。

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上ル商店

Key Point

  1. 最新機器による高品質の天ぷらを提供
  2. 創作天ぷらなどで集客力を強化
  3. オペレーションを工夫して人件費率を低減

マイナス電子の力でサクサクした天ぷらを実現

 「高級なイメージの天ぷらを大衆価格で」をコンセプトとする「天ぷら酒場上(あが)ル商店 門前仲町本店」は、2018年11月のオープン以来、老若男女を誘引し、毎月、売上を伸ばしている。

 天ぷらは和食を代表する料理のひとつだが、専門店となると、職人の熟練技術により品質レベルを維持し、顧客の定評を獲得している高級店が多い。

 「カウンターで揚げたてを提供する専門店のような品質の天ぷらを、どこまで大衆価格で出せるかがポイントでした」と、業態開発を担当した株式会社TBI JAPAN業態開発部部長の浅野源氏は説明する。大衆価格の天ぷら店というアイデアを温めていた浅野氏が、知人を通じて出合ったのが「アニオンフライヤー」という機器だった。大量のマイナス電子を放出する、多重電極プレートを備えたアニオンフライヤーを通常のフライヤー内に設置すると、マイナス電子により油の分子構造が安定化(イオン化)するため、揚げ油の酸化や食材の匂い移りを防いでくれる。揚げ時間も約20%短くなり、揚げ物への油の浸透量が少ないため、サクサクした食感であっさりした揚げ上がりとなり、しかもそのサクサク感が長く持続する。同時に、水の分子もマイナス電子が包み込むため、水分の多い食材も安全に天ぷらにすることができる。

 加えて東京・江東区の地下鉄門前仲町駅からほど近い、1階路面店という現物件を取得できることになり、1号店の出店にふさわしい立地と判断した。近くの富岡八幡宮や深川不動尊周辺には商店街が広がり、ビジネス街でもあるとともに、付近のマンションに住む人も多い。この立地と、大衆天ぷら店という構想が合致したため、14坪34席の店舗の出店に踏み切った。

独自の「創作 天ぷら」のなかでも、名物料理となっている「うにくらたま天 2切れ」(写真奥から2番目/500円)、巾着型の「すき焼きの天ぷら 2切れ」(写真奥/480円)。肉の天ぷらのなかでは「北海道産大沼牛レア天ぷら 2切れ」(写真手前/500円)の柔らかな食感が好評。エビ天7本を立てて盛り付けた「海老天丼」(写真右/980円)など、若い世代にSNSで拡散してもらえるように、視覚的訴求力を意識した商品も多い

創作天ぷらや毎月10日の「天ぷらの日」をアピール

 天ぷらは単品約50品目(80~500円)と季節商品約10品目をそろえ、野菜、海鮮、肉、かき揚げのほか、他店との差別化と同時にアニオンフライヤーの特徴を活かした「創作 天ぷら」20品目を打ち出している。なかでも、ゆで卵の天ぷらの上に、ウニ、イクラをのせ、ノリで巻いて食べる「うにくらたま天 2切れ」(500円)や、油揚げの中に具材を詰め、巾着型にして揚げる「すき焼きの天ぷら 2切れ」(480円)、「ビーフシチューの天ぷら 2切れ」(430円)など、ユニークな商品が人気を集めている。

 ドリンクは約60品目(280~2800円)で、京都・利休園の抹茶を使った「宇治抹茶割り」(480円)、山椒の実を漬け込んだウイスキーを炭酸で割った「山椒ハイボール」(400円)、佐多宗二商店製の山椒風味の芋焼酎を使った「山椒焼酎ハイボール」(480円)など、オリジナリティの高いアイテムをそろえている。夜の客単価は2600円で、アルコール類が売上の4割弱を占め、週末など多い日には100人以上を集客している。

 平日のランチタイムは、天丼3種(850~1200円)、「天ぷら定食」(950円)などに加え、2019年1月から、天丼とカレーを合体させた天カレー3種(900~1050円)を加えた。昼の客単価は1000円弱で、平日は平均約50人が来店している。

 天ぷらを大衆価格で提供し、しかも来店客にストレスを感じさせないために、同店では箸やお手拭き、調味料などをカウンター上、もしくはテーブル席の引き出しにセットしておき、注文時にはオーダー表に記入してもらうなどの工夫をしている。こうすることで、人件費率は約20%に抑えており、原価率も高い商品と低い商品とを織り交ぜ、トータルで30%としている。

 さらに2019年2月からは、毎月10日を「天ぷらの日」とし、天ぷら1品、ドリンク1杯を10円で提供するキャンペーンを開始した。好反響を得るとともに、「常に何か新しいことをやっている店」と印象付ける効果もある。

 同店が大衆価格の天ぷら店という業態に挑戦し、着実に売上を伸ばしている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 最新機器の導入でクオリティの高い天ぷらを提供している。
  2. 創作天ぷら、新商品、キャンペーンなどで集客力を強化している。
  3. オペレーションを工夫し、来店客にストレスを感じさせずに人件費率を抑えている。

 なお、経営元のTBI JAPAN(本社/ 東京・新宿、中田強太社長)は、2003年の創業で、北海道から沖縄までに約130店の飲食店を経営している。これまではターミナル立地の飲食ビルの中~上層階に、多彩なメニューをそろえた総合居酒屋をメインに出店してきた。しかし、最近の消費者の利用動向などを鑑み、2017年末から専門業態の開発に着手した。そのひとつが、ラム肉と牛タンのしゃぶしゃぶ食べ放題の「めり乃(の)」であり、東京、横浜に計4店を出店している。次いで打ち出した「上ル商店」も、“天ぷら酒場”という幅広く受け入れられやすい業態、価格帯を武器に、多店舗化を目指していく。

上ル商店 門前仲町本店
住所
東京都江東区門前仲町1-3-5
TEL 03-6240-3201
営業時間
11:30~14:30(LO.14:00)、17:00~23:30(LO.フード22:50、ドリンク23:00) 土・日曜日・祝日11:30~23:30(LO.フード22:50、ドリンク23:00)
定休日
無休