2019/04/18 挑戦者たち

株式会社 てりとりー 代表取締役 福本 浩幸氏

大阪で沖縄をコンセプトにした居酒屋を展開する株式会社てりとりー。今年6月、9店目を沖縄に出店する。代表の福本氏は大阪出身。縁のなかった沖縄に深く関わるようになった経緯や、スタッフの育成方針などを聞いた。

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自ら考え、行動できる人を育て、そのチャレンジを応援したい

――メイン業態は沖縄料理ですが、もともと沖縄に縁はないそうですね。

 生まれ育ったのは大阪の堺市です。小学校からずっと野球一筋で、大学時代に野球部の仲間と行く居酒屋での飲み会がとにかく楽しく、「こういう商売をしたい」と思うようになりました。祖父が商売人だったことの影響もあるかもしれません。就職先に酒造メーカーを選んだのは、将来、自分で店を持つときに向けて、飲食店を外から見て勉強したいと考えたからです。入社後は、営業として兵庫県内の業務用酒販店を担当。飲食店の経営者の方々とお会いする機会も多く、繁盛店に共通することなどを自分なりに学びました。並行してクラブチームで野球も続け、当時は仕事と野球だけのストイックな毎日。5年後に退職する頃には、500万円の蓄えができました。

 退職後は縁があって、お世話になったお客様が経営する居酒屋で1年間修業。そこで夏限定フェアに出していたのが沖縄料理でした。調理ができない私にとって比較的ハードルが低く、思い描く「楽しい居酒屋」と沖縄のイメージが合致し、「これだ!」と直感。その後の半年間、別の飲食店でも店舗運営の基礎を学んだ後、そこの社長さんに物件を紹介していただき、2010年に「南の島酒場 てりとりー」をオープンしました。

 開業までの経験で学んだのは、どんな仕事も手を抜かずに取り組む大切さです。2軒目での修業中はアルバイトとして働きましたが、アルバイトだからと適当な仕事をしていたら、物件を紹介してもらうことはできなかったはず。目の前の仕事や関わりを持つ人に常に真摯に向き合うことが、後の財産になると実感しています。

――1号店は梅田駅から徒歩5分の立地。集客への自信はありましたか?

 損益分岐点を超すまでに7カ月かかりましたが、それは最初から覚悟していました。来ていただいたお客様に楽しんでもらうことに全力を注ぎ、寝る間も惜しんで働き、時間をかけて軌道に乗せました。この、「一等駅の二等立地でリピーターの獲得に注力する」という方法を以降も続けています。

 翌2011年に「梅田日本酒バルエビス」を出店。最初の2年間は苦戦しましたが、メニューをブラッシュアップしたり、日本酒をより充実させた結果、折からの地酒ブームもあり、好調に推移しています。さらに翌年の2012年には、当社を含めた3社合同でシンガポールに出店し、私は責任者として2年間現地に駐在しました。契約満了となり、現在は日本での事業に専念していますが、当時シンガポールで様々な業種の経営者や投資家の方と知り合い、ビジネスについて多くを学べたことは、今につながっています。

 その後、2013年に大阪駅近くのビルに出した店は、当初、東南アジア料理を打ち出していましたが、赤字続きで大ピンチに。その時点で唯一、安定した業績を上げていたのが1号店だったことから、途中で沖縄料理に業態変更し、以降は“沖縄”を軸に展開しています。お客様に楽しんでいただきたいという想いから沖縄料理を選んだので、「めんそーれー」と笑顔でお出迎えすることと、帰り際にお土産のサータアンダギーを手渡し、店の外までお見送りすることは、今でも徹底しています。そうしたことがお客様の印象に残り、再来店につながると考えています。

Hiroyuki Fukumoto 1981年、大阪府生まれ。神戸大学を卒業後、宝酒造株式会社に就職し、業務用酒販店の営業を担当。退職後、1年半ほどの修業を経て2010年、大阪・梅田に1号店をオープン。現在、沖縄料理居酒屋のほか、日本酒バル、チューハイ専門店など8店舗を大阪市内で展開している。

――6月に控える沖縄初出店に関してその経緯や狙いとは?

 那覇市の県庁前駅近くに日本酒を売りにした店をオープン予定で、出店を決めた理由の1つは、スタッフがより頻繁に沖縄に足を運べる仕組みを作りたかったから。また、隠れた沖縄の商材を発掘するという狙いもあります。加えて、2020年には那覇空港に第2滑走路が完成予定で、観光客がさらに増えることが予想されるためです。

 沖縄の商材に関してはすでに新事業を始めていて、現地の生産者から海ぶどうを茎付きで仕入れ、業務用としてネットで販売しています。生産者にとって茎を取り除く手間が省けて歩留まりが大幅によくなり、その分、飲食店は安く購入でき、我々にとってもビジネスになる。このように今までとは違う切り口から、沖縄の潜在的な魅力や可能性を掘り起こし、発信していくことに、楽しさとやりがいを感じています。

――スタッフの育成において、力を入れているポイントは?

 従業員が自ら考え、行動することが重要という考えから、挑戦できるステージをたくさん用意しています。例えば、年2回の社員旅行は、行先や行程のアイデアを社員から募り、各自の企画についてプレゼンしてもらったうえで、社員全員の投票で決めます。何かを企画し、周りを巻き込み、運営するのに必要なスキルを磨くと同時に、自分にとっての「楽しい」を形にしていく経験を積んでほしいと考えています。また、コミュニケーションを図るために3カ月に1度、個人面談を実施しているほか、自己研修手当をはじめとするキャリアアップ支援や独立支援など、現在、従業員のチャレンジを応援する様々な制度を整えています。

 変化が激しいこの時代、当社のようなベンチャーが生き残っていくためには、私1人の頭で考えていても限界があるので、全員の集合知で勝ち抜いていくことが重要です。また、従業員がやりたいことに主体的に挑戦できる機会を用意することは、ベースアップやキャリアアップにつながり、その結果、飲食業にネガティブなイメージを持つ人の意識を変えることにもつながるのではないかと考えています。

 会社としての現状の課題として、店舗数が増えて組織が拡大しているなか、理念やミッションを従業員一人ひとりに浸透させていく難しさを感じ始めています。今後は、よりその部分に重点を置いた組織づくりが必要になるでしょう。経営者に求められる役割というのは、突き詰めれば、従業員にきちんと給与を支払い、そして何より成長の機会を与えること。これまで心のどこかにあった「従業員に嫌われたくない」という余計な意識は捨てて、経営者としての本分を全うしていきたいと、気持ちを新たにしています。

社員旅行をはじめとする社内イベントの詳細は、立候補した社員が各自の企画案をプレゼンし、投票で決まる

――今後、注力したいことやビジョンを教えてください。

 現在、展開する沖縄料理業態の6店舗を合わせると、来店客数は月に1万2000~1万5000人。つまり、それだけ沖縄を好きな人や、沖縄に興味を持つ人がいるということです。この状況を活かし、店舗自体をメディアと捉えて、沖縄に関する情報発信や交流の拠点づくりを進めたいですね。沖縄という軸を、より“立体化”していこうと、戦略を描いています。

 目の前のお客様に喜んでいただく、という飲食業の醍醐味に加えて、最近では、沖縄の取引先の方々に感謝していただけるうれしさも、原動力になっています。お世話になっている沖縄のみなさんにもっと恩返しができるよう、飲食業の枠に捉われない切り口で、まだ知られていない沖縄の魅力を発信していきたいと思います。

Company Data

会社名
株式会社 てりとりー

所在地
大阪府大阪市北区中崎西1-4-22 梅田東ビル301号

Company History

2010年 「南の島酒場 てりとりー」オープン
2011年 「梅田日本酒バル エビス」オープン
2013年 株式会社てりとりー設立。「沖縄キッチンてりとりー」オープン
2014年 「沖縄ん家 てりとりー」オープン
2015年 「沖縄食堂ハイサイ HEPナビオ店」オープン
2016年 「沖縄食堂ハイサイ 天王寺MIO店」オープン
2017年 「沖縄食堂ハイサイ なんばこめじるし店」オープン
2018年 「梅田チューハイ35」オープン

南の島酒場 てりとりー(大阪・梅田)
https://r.gnavi.co.jp/kbx2602/
6時間煮込んだトロトロの自家製ラフテーや、ゴーヤチャンプルーなど、沖縄直送の食材をふんだんに使った沖縄家庭料理が人気。
梅田 チューハイ35(大阪・梅田)
https://r.gnavi.co.jp/grgt0t2b0000/
「チューハイを飲んで夢を語る店」をコンセプトに、昨年4 月オープン。「宝焼酎 純35」と超強炭酸で作るチューハイが名物。