2019/06/06 繁盛の法則

和食とチーズという意外な組み合せが好評な個性派店とは

和食とチーズを合わせる「和cheese TENSAI」。温めたラクレットチーズを、たっぷりかけて提供する「TENSAIラクレットチーズ鬼おろし天つゆ」は、来店客の9割がオーダー。チーズ好きの女性を多く獲得している。

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和cheese TENSAI

Key Point

  1. 和食とチーズの組み合せを訴求
  2. 厳選素材とあっさりした天ぷらを活かす
  3. 店長の和食修業を基にしたメニューを開発

天ぷらにラクレットチーズをかける看板商品で集客

 和食とチーズを合わせるというユニークな発想の「和cheese TENSAI(てんさい)」は、チーズ好きの女性を中心とするファンを着々と増やしている個性派店である。オープンは2018年3月で、恵比寿駅から徒歩2分ほどのビルの2階に位置し、15坪32席の店内は、カフェのような雰囲気だ。

 店名の「TENSAI」は「天菜」とも表記し、カラッとした揚げ上がりの天ぷらにも特徴がある。フライヤーの中に「ドクターフライ」という電極パネルをセットし、そこから発生する電波振動により、素材や油の中の水分子を安定化させることで、油の吸収を抑え、低カロリーであっさりした天ぷらに仕上げている。この天ぷらに、温めて柔らかくしたラクレットチーズを、お客の目の前でたっぷりとかけて提供する「TENSAIラクレットチーズ鬼おろし天つゆ」(1880円)は、来店客の実に約9割がオーダーする代名詞的なメニューとなっている。

 店長の合原寛晃氏は、1982年福岡生まれで、高校時代に割烹料理店でアルバイトしたことをきっかけに、料理に興味を持つようになった。高校卒業後、名古屋の和食店に就職して修業を開始し、23歳までは名古屋で、その後、東京に移り、銀座や六本木の高級和食店に勤務した。途中で3年ほどバーにも勤め、酒の知識を修得。店で働くかたわら、個人でレシピ開発や料理の撮影を手伝うフードコーディネーターの仕事を請け負ったり、菜園で野菜を育てたりと、食に関する活動の場を広げていった。

 そして、野菜の栽培で出会った、チーズ好きの仲間と意気投合したことから、「和食とチーズを掛け合わせたお店をやってみよう」と考え、共同経営という形態で同店を出店することになった。とはいえ、実際の商品開発や調理全般は合原氏に一任されている。また、知人から「ドクターフライ」を紹介され、この機器を使ったあっさりした天ぷらであれば、チーズとの相性がいいと実感し、導入を決めた。現在、「トマトカプレーゼ」(280円)、「ゴーダチーズ生ハム巻き」(360円)など、チーズの天ぷら各種も商品化している。

お客の9割がオーダーする看板商品「TENSAIラクレットチーズ鬼おろし天つゆ」(1880円)。分子調理により低カロリーでカラッとした揚げ上がりのオレンジエッグや季節の野菜の天ぷらに、北海道・十勝産のラクレットチーズを、お客の目の前でたっぷりとかけて提供する。ダイコンを粗くすり下ろした鬼おろしと天つゆを合わせ、さっぱりした味わいにしている

吟味して仕入れる素材を活かして独自の商品を開発

 チーズは3カ所から仕入れている。ラクレットチーズは北海道・十勝産、モッツァレラ生地で作った袋に細かくしたモッツァレラと生クリームを詰めたブッラータチーズは東京・渋谷産で、ほかチーズを扱う卸し業者からフランス産カマンベール、アメリカ産チェダーチーズ、オランダ産ゴーダチーズなどを仕入れている。

 1日10食限定の「東京ブッラータチーズと彩りトマト」(1680円)は、クリーミーなチーズとカラフルなプチトマトを合わせたもので、人気第2位の商品である。また、卵の黄身が鮮やかなオレンジ色の大分産「オレンジエッグ」もこだわって選んでいる食材で、このオレンジエッグ3個を使い、中にとろけるチーズを入れて焼いた「とろーりチーズのだし巻き卵」(580円)が、人気第3位アイテムとして続く。

 ドリンクでは、レモンシャーベットをサワーにのせた「特製シャーベットレモンサワー」(500円)や、天ぷらやチーズとの相性からセレクトしたオリジナルラベルのワインがよく出ている。またファーストドリンクとして、ベリー類を加えて青色にしたドイツ産スパークリングワイン「ブルーオブマリア」(500円)を選ぶ女性が多い。夜はチーズ料理を目当てに来店する女性が約9割を占め、1~1.5回転している。客単価は3500円で、フードとドリンクの売上比はほぼ半々となっている。

 ランチは月~金曜日の平日のみの営業。サクッと揚げた鶏肉の天ぷらに自家製オニオンステーキソースをかけた「さくさくとり天 自家製ソース」(980円)や、国産鶏肉をすき焼きの割下で煮て、チーズを加え、オレンジエッグでとじた「和チーズ親子丼」(900円)を食べて、リピーターになるお客が多い。また、時間に余裕のあるグループ客は、日替わりの料理7種、炊き込みご飯、スープ、ミニデザートが付く1日10食限定の「TENSAIバラエティプレート」(980円)でゆっくり過ごしていくこともある。ランチの客単価は950円で、1日平均2回転する。昼は男性だけのグループも珍しくなく、男性が約4割を占めている。

 同店が和食をベースにしながら、チーズを合わせたユニークなメニューで顧客を増やしている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 和食とチーズという意外性で特徴を打ち出している。
  2. 吟味した素材とあっさりした天ぷらという強みを活かしている。
  3. 店長の高級和食店での修業経験を基にメニュー開発している。

 「オープン当初は、客数の波が大きかったですね」と合原氏は振り返る。徐々に固定客が増えてきている手応えを実感ており、2号店の出店にも意欲を見せている。

和cheese TENSAI
住所
東京都渋谷区恵比寿1-9-5 EBISUマルトビル2F
TEL 03-6456-4505
営業時間
月~金曜日11:30~15:00(LO.14:30)、18:00~23:30(LO.23:00)、土曜日・祝日17:00~23:00(LO.22:30)
定休日
日曜日