釜炊きご飯が上海の人々を魅了! 広い庭園でのパーティ利用も好調

日本料理店「SHARI MODERN JAPANESE CUISINE」は中国・上海に2010年オープン。土鍋で炊いた白米をメインに提供し、「おいしいお米が食べられる店」と知られている。また、広い庭園を活かしパーティも獲得している。

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釜炊きご飯が上海の人々を魅了!広い庭園でのパーティ利用も好調

【中国・上海】
SHARI MODERN JAPANESE CUISINE

中国上海市永嘉路630号
https://r.gnavi.co.jp/shanghai/jp/cs10081/
歴史的建造物をリノベーションした日本料理店。「炊きたての白米のおいしさ」にこだわり、地元住民を中心に人気。ガーデンウエディングなど大人数でのパーティも開催できる。

農薬未使用米を自社栽培。白米のおいしさで人気店に

 中国・上海中心部の旧フランス人居留地を走る永嘉路(ヨンジアルウ)沿いに、2010年オープンした日本料理店「SHARI MODERN JAPANESE CUISINE」。約100年前、実業家の邸宅として建てられた庭付きの洋館をリノベーションしており、テーブル席と個室など約200席のほか、500平米の広い庭園もあり、大人数でのパーティ利用が可能。客層は現地に住む30~60代の中国人が中心で、ランチはアッパー層の主婦グループやファミリー、ディナーは記念日やビジネス層の接待などの利用が多い。

 経営母体は、日本でブライダル事業や飲食事業を手がける株式会社ノバレーゼ。初の海外進出に上海を選んだ理由は、経済発展が著しく、今後、ウエディングのマーケット拡大が期待できることと、富裕層を中心に和食が注目を集めていたから。物件探しは、同社の創業者の知人で、上海で不動産コンサルタントも手がける人物に相談し、ガーデンウエディングができる現物件での出店を決めた。

 オープン後、徐々に認知度を高めるなかで、2013年、日本料理の名店で腕を磨いてきた鳥生豊氏が総料理長に就任。店名にもある「米(シャリ)」を、それまで以上に前面に打ち出すべく、メニューを刷新した。「もともと中国の食事において、主役はおかずで、米は脇役でした。しかし、和食に欠かせない白米の魅力を現地の方にも知ってもらいたいと考え、あえて『土鍋で炊いた白米』で勝負することにしました」と、鳥生氏は振り返る。

コースのメニュー表は中国語と日本語で表記。鳥生氏のプロフィールも合わせて紹介している

 まず、上海の崇明島(すうめいとう)で自社で農薬を使わずに「SHARI米」の栽培を始め、2015年から店での利用を開始。玄米のまま冷蔵保管しておき、週に3回、精米して使用するなど、よりよい状態での提供にこだわった。この米を使った看板メニューとして打ち出したのが、「自社栽培無農薬米使用! 炊きたて『銀シャリ釜炊きごはん』+黒トリュフ温泉たまご添え」(96元=約1518円)。土鍋で炊き上げた白米に、トリュフ入り温泉たまごをかけて食べる一品。ランチでは、この釜炊きご飯と「五味五法を味わう、ごはんのお供10種」をメインにした「釜炊きごはんを美味しく召し上がる10種類ごはんのお供コース」(148元=約2341円)が好評を得ている。「最初は、コースのメインがご飯だと知って、怒りだすお客様もいました。しかし、炊きたての白米のおいしさを伝え続けたことで、2年後にようやく『おいしいお米が食べられる店』という認知が浸透しました」と鳥生氏は語る。

 このほか、刺身や天ぷら、鍋といった和食メニューや、アヒージョ、ローストビーフなどもそろえ、幅広いニーズに応えている。さらに、かつお出汁を使った「とろとろにじっくり煮込んだ和風フカヒレの姿煮 自家製XO醤と共に」(588元=約9299円)など、中国人になじみのある料理に和食の要素を加えたメニューも用意して、ファン獲得につなげている。

  • 「五味五法を味わう、ごはんのお供10種」。「麻辣鶏南蛮」など、白米に合う10種類の小鉢。148元のランチコースのみで提供
  • かつお出汁ベースの「とろとろにじっくり煮込んだ和風フカヒレの姿煮 自家製XO醤と共に」。上にのせたゆずの皮がアクセントに

 さらに、歴史ある建物をバックに広い庭園で行う結婚式やBBQのプランも好評。開放的な雰囲気で楽しめると口コミが広がり、毎月6~10件の利用があるという。

 土鍋で炊くご飯や広い庭園を活かした結婚式プランなどで認知を高め、人気店へと成長した同店。その成功を受けて、現在、中国各地への店舗展開を計画中だ。「私が幼い頃、家で中国料理を食べたように、中国の食卓にも日本料理が並ぶようになってほしい」と鳥生氏。中国で日本料理をさらに広めていきたいと考えている。

日本酒は40銘柄をそろえ、メニュー表ではそれぞれの味わいや産地、生産者の情報などを紹介。そのほか、焼酎や梅酒などもラインナップ

「SHARI MODERN JAPANESE CUISINE」の成功のポイント

1 パートナー

上海の不動産に詳しい日本人コンサルタントに相談し、庭園がある歴史的邸宅で結婚式などが行える現物件を見つけた。

2 メニュー

「炊きたての白米のおいしさ」を伝え続けることで、上海の人の白米に対するイメージを変え、ファンを獲得。

こだわりの炊きたて白米と、それに合う名脇役が売りに!
「自社栽培無農薬米使用!炊きたて『銀シャリ釜炊きごはん』+黒トリュフ温泉たまご添え」。上海の崇明島で自社栽培した米を使用。甘み、香り、ツヤ、粘り、旨みが感じられるよう炊き方にこだわり、名物に成長

3 人材

誠実で人との会話が好きな人を採用。自主性とチームワークを重視し、“ともに結果を出し、ともに喜ぶこと”を目指す。

自主性とチームワークを重視し、ともに成果を喜べる関係を目指す
「上海の人は仕事の質を維持するのが苦手」と、鳥生氏。指摘されなくても質を落とさないよう、自分で考えて動くことを徹底。報告や相談をしやすい人間関係の構築や、店の成果を全員で喜べる雰囲気づくりに注力

4 販促・演出

広い庭園を使ったBBQプランやウエディングプランが好評。要望にも柔軟に応じ、利用率が上昇している。

広い庭園を使った結婚式プランが好評
広い庭園を使ったBBQプラン(1名330元=約5,214円~)や、結婚式プラン(1名888元=約14,030円~)が好評。歴史ある邸宅を背景に行う結婚式が口コミなどで話題となり、店を知ってもらうきっかけになっている。

「SHARI MODERN JAPANESE CUISINE」の主なメニュー

●アラカルト

  • 自社栽培無農薬米使用!炊きたて「銀シャリ釜炊きごはん」+黒トリュフ 温泉たまご添え(96元=約1,517円)
  • とろとろにじっくり煮込んだ和風フカヒレの姿煮 自家製XO醤と共に(588元=約9,290円)
  • マスカルポーネチーズ豆腐(48元=約758円)
  • 絶品フォアグラ茶碗蒸し芳醇で香り高い 黒トリュフ餡掛け(68元=約1,074円)
  • 特選高級刺身5種盛り(488元=約7,710円)
  • 極上すき焼き最高級A5ランク和牛を心ゆくまで300g(588元=約9,290円)

●コース

  • ディナーコース(688元=約10,870円)
  • 釜炊きごはんを美味しく召し上がる10種類 ごはんのお供ランチコース(148元=約2,338円)

●アフタヌーンティータイムメニュー

  • 日本産牡蠣食べ放題+ビール、ワイン飲み放題(399元=約6,304円)
店舗データ
業態 日本料理店
オープン 2010年
200席
客単価 昼/250元(約3,950円)
夜/1,000元(約15,800円)
客層 昼夜ともに6割以上が中国人。
ランチは女性が9割で、ディナーは男性が6割
※ 1人民元(文中では「元」で表記)=約15.8円(2019年7月)
料理長 鳥生(とりう)豊 氏
福岡県出身。田中博敏氏などに師事して日本料理を学び、2013年、同店の料理長に。海外の料理コンクールで優秀な成績を収め、2019年には日本料理アカデミー中国の理事に就任した。
香港の基本情報
面積 6,340.5km2
人口 2,418万人
言語 普通語(北京語)、上海語
通貨 人民元
飲食店数 約18万店舗(2018年)
日本料理店/約4,300店舗(2019年)
個人の年間平均所得 64,183元(約102万円)

店舗周辺エリアの特徴

上海中心部の旧フランス人居留地エリアを東西に走る道路・永嘉路(ヨンジアルウ)。1920~30年代に建てられた歴史的西洋建築が並んでおり、同店のように古い建物をリノベーションした飲食店なども点在。

出典:大衆点評、上海市統計局、2018年上海市食品安全状况報告