2019/08/20 特集

食材、人件費高騰、消費増税・・・今あらためて考えたい 万全ですか? コスト管理(6ページ目)

URLコピー

CASE①「大名やぶれかぶれ 西中洲店」

「仕入台帳」で原価を徹底管理。ムダを省いてコスト削減に成功

原価率はトータルで考え人件費は効率化で抑制

 福岡随一の歓楽街である中洲と、若者が集まる繁華街・天神の中間、奥まった一角にある「大名やぶれかぶれ西中洲店」は、鮮魚をはじめ、九州の名物料理をそろえた居酒屋。店内には100名ほどが収容可能な掘りごたつの座敷席のほか、多くの個室があり、仲間同士の飲み会、接待、大人数の宴会など、様々なシーンで利用されている。

 1、2階合わせて全140席の大箱のため、使用する食材や消耗品の量は膨大。そこで、すべての仕入れ値を「仕入台帳」で細かく管理。商品名、価格、仕入れ先業者などを記入し、見積書もすべてファイルしている。「同じ商品、同じ質なら安い方がいい。比較検討して一番安い業者から仕入れ、価格が上がれば仕入れ先を再検討します」と、オーナーの古賀友継氏。その際も、必ず複数の業者から見積りを取るという。

 また、2年前から賞味期限が長い調味料などは、業者がセールで売る際にまとめ買いしている。油、みりん、料理酒などを大量購入し、動線がよくないため使っていない店内の個室で保管。「そのときの支払いは大変ですが、通常の2~3割安いので、コスト全体としては大きいですね」と古賀氏は話す。

【仕入れ価格を徹底管理】食材だけでなく、消耗品などもすべて「仕入台帳」に記入。商品名や価格が一目瞭然で、値上げがあれば、仕入れ先を再検討している
【低価格のときに大量購入】油などは業者のセール時に大量購入。「個室に置いていますが、もともと動線のよくない個室だったので、保管できるメリットの方が大きいです」(古賀氏)

 さらに、生鮮食品もコスト管理を徹底。現在、魚は3社と取引があり、仲卸業者には毎朝電話をし、その日の目玉の魚を確認して仕入れ内容を決める。その後、昼過ぎには市場で売れ残った魚介を格安で購入し、日替わりのおすすめとして活用することも。「業者とコミュニケーションを取ることで、ほしい魚を安くしてもらうこともあれば、その日に市場で残った魚を買うこともあります」(古賀氏)。一方、数量限定の「呼子直送ヤリイカ活き造り」は仕入れ値に関係なく、1杯1080円と安価で提供。「原価率はほぼ100%ですが、看板料理なので利益は度外視しています。その分、メニュー全体でバランスを取っています」(古賀氏)。

【メニューブックで注文をコントロール】メニューブックの最初の見開きページでは、看板の「呼子直送ヤリイカ活き造り」のほか、オーダー数を増やしたい和牛を使ったメニューをアピールする
佐賀・呼子から仕入れるヤリイカは、グラム単位の定額で契約。仕入れ値が原価率100%を超える価格でも常に1080円の破格で提供する
ヤリイカのほか、仕入れた活魚は生け簀に。注文が入ってから魚を取り出し、カウンターに座った客の目の前で調理している

 そのほか肉は、2年前からコストを抑えるため、和牛のウデなどを塊で仕入れる。それを精肉店が「ミスジ」「トウガラシ」「クリ」などの部位別に切り分けて保管。必要に応じて配達してもらう。合わせて、肉メニューを増やし、メニューブックの最初の見開きページで、売りの「ヤリイカ」とともに掲載。オーダーを促進している。

 仕入れ値を抑える一方、ロスの削減にも注力する。例えば、肉を調理する際に出る切れ端などは「肉ジャガ」にして、おすすめメニューに。また、大根の皮も捨てずに干しておき、「切り干し大根」にして、お通しで提供する。

 昨年の忘年会シーズンでは、コースのメインの鍋「和牛しゃぶしゃぶ」に、「もつ鍋」「豚しゃぶ」なども加え、選べるようにした。「お客様の選択肢を増やしつつ、原価率が低い鍋も入れることでコストダウンにつながりました」と古賀氏。引き続き夏の宴会コースでも、「寿司」を「もつ鍋」などに変更できるようにして好評だ。

【コースには選べる鍋を!】「博多もつ鍋」(1人前1296円)は、プリプリの和牛もつと野菜がたっぷり入った人気メニュー。昨冬、コースの中に選べる鍋の1つとして加えたことで、コストダウンにつながった

 「人件費については、むやみに減らそうとは考えていません」と話す古賀氏。しかし、店内の効率化を図ることで、結果としてコスト削減に成功している。以前、厨房は6名体制だったが、冷蔵庫の位置やキッチン全体のレイアウトを、効率よく作業ができるよう変更。現在は古賀氏と料理長の藤野浩氏など、3名の料理人で回すことが可能になった。また、ホールのオペレーションもひと工夫。宴会などの際、2階のスタッフからは厨房に内線電話で指示や連絡が入っていたが、忙しくて電話を取ることが難しく、時間のロスにつながることもあった。そこで、スタッフが使うハンディに、「刺身待ち」「予約料理ゴー」など、よく使うコメントを打ち込めるように設定。これで、厨房は注文とともに送られてくるコメントを見て、すぐ対応できるように。ホールスタッフもその都度電話をしたり、1~2階を行き来する必要がなくなり、スムーズなサービスが実現できている。

 「効率化を図りながら、少しずつコストを削減してきました。その分をお客様と従業員に還元していきたいですね」と、古賀氏は笑顔で語ってくれた。

2階には掘りごたつ席の完全個室が9部屋あり、仕切りを外せば最大100名まで収容可能。大人数の宴会に利用されている
大名やぶれかぶれ 西中洲店
福岡県福岡市中央区西中洲2-5
https://r.gnavi.co.jp/f179700/
地下鉄天神南駅より徒歩3分の路地裏に立地。広々とした店内には、カウンター席や大小の個室を備える。カウンター内に食材だけでなく、消耗は生け簀があり、注文を受けてからさばく鮮魚が人気。
(右)オーナー 古賀 友継 氏 (左)料理長 藤野 浩氏
古賀氏は板長を経て、2016年に店を買い取りオーナーに。藤野氏はオープン当初から勤務し、古賀氏と2人3脚で店を運営。古賀氏が魚と酒、藤野氏がそのほかの仕入れを担当。

全7ページ