2019/08/20 特集

食材、人件費高騰、消費増税・・・今あらためて考えたい 万全ですか? コスト管理

食材原価や人件費が高騰するなかで、コストをどう管理して、経営を安定させていけばいいのか。“お金の悩み”を解決するプロに話を聞くとともに、コスト意識を高めつつ、満足度を下げない運営をしている店を取材した。

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COST MANAGEMENT① 正しい数字を把握する

Credo 税理士法人(右)代表/税理士 水野 剛志 氏 (左)部長/税理士 吉野 一也 氏
水野氏は慶應大学卒業後、いくつかの税理士法人を経て、2015年にCredo税理士法人/Credoコンサルティング事務所を設立。著書に「飲食店専門税理士が教える飲食店経営で成功するための『お金』のことがわかる本」(日本実業出版社)がある。吉野氏は千葉県最大規模の税理士法人で、20代でマネージャーに就任。その後、Credo税理士法人に参画し、飲食チェーンで働いた経験を活かしながら、開業・成長支援を行う。

FLRコストは70%以内に。現状を知ることが重要

 飲食店経営において、コスト管理は避けて通れない大命題。それゆえ、常にコスト意識を持つことが、持続的な店舗運営に欠かせないのは、言うまでもないだろう。だが、Credo税理士法人・代表の水野剛志は、「自店舗のコストを考えるための大前提である、正しい数字を把握できてないケースが非常に多い」と指摘する。

 「とりわけ3店舗以上を展開している場合、コストに関して各店舗で正しい数字が見えていなければ、経営は成り立ちません。それにも関わらず、売上の数字だけを意識している、“どんぶり勘定”の経営者も多いのが現実です。そうなると、経営が危うくなる可能性は極めて高いと言えるでしょう」。財務を中心に数多くの飲食店をサポートしてきた水野氏の経験上、個店、特に歴史の長い店などで、コスト意識が低いケースが見られるという。

 飲食店の場合、きちんと利益を上げられるかどうかは、三大コストである「FLRコスト」をいかにコントロールできるかに大きく左右される。FLRコストとは、変動費の「Food」(食材原価)と「Labor」(人件費)、そして、固定費の「Rent」(家賃)のことを指す(下囲み参照)。

FLR構成比率が70%であれば、おおよそ売上の10%ほどの利益を残すことが可能。FLR構成比率が80%を超えてしまうと、利益はほぼ残らない経営状況になる。

 水野氏は、「FLRコストの売上に対する構成比率の適正水準は70%以内」だと語る。「FLRコストが売上の約70%であれば、利益はおおむね10%程度残ります。75%であれば、利益は5%程度となり、FLRがそれ以上になってしまうと、ほとんど利益は残りません。これはどんな業態にも共通した数値です」(水野氏)。

 FLRコストを売上の70%以内に保つには、変動費であるFLコストの管理が重要。一般的にFLともに30%が目安と言われるが、それぞれを正確に把握するにはどうすればよいのか。

 人件費は給与や賞与のほか、社会保険料や通勤費などを足して算出する。一方、食材原価については、毎月の棚卸しが大事になってくる。棚卸しをして食材やドリンクなどの在庫数を出し、仕入れた数と売り上げた数を照らし合わせることで、正確な原価率が算出できる。「そもそも棚卸しをしておらず、毎月の材料費がどれだけかかっているのか、把握できていない店も多い」と水野氏。ただ、経営者が日々の営業に追われる個店では、毎月棚卸しをする余裕がないということも少なくない。「その場合は、2カ月平均の原価率を算定することから始めてください。単月の仕入れ金額だけを見ていると、月をまたぐ在庫などの兼ね合いから、正確な原価率を見誤ることもあります。2カ月平均で見ると、おおむね正確な原価率を把握することができるはずです」(水野氏)とアドバイスする。

 また、FLコスト(特に棚卸し)は、店長など責任者を決めてやるようにすれば、計算の誤差も生じにくい。「とにかく、正しい数字を出すことがコスト管理のスタートラインです」(水野氏)。

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