2019/09/05 繁盛の法則

脱サラから現地修業を経て健闘する南インド料理店とは

東京・神田にある南インド料理店「スパイスボックス」。ランチはボリュームのあるカレーライス専門店とし、夜は南インドの定食のミールスやビリヤニを提供。南インドで修業した経験を活かし、多彩な料理を提供する。

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スパイスボックス

Key Point

  1. 南インドで修得した本場の料理を提供
  2. 自身の経験を基にビジネス街の需要に対応
  3. ドリンク類を充実させ、夜の集客力を強化

伸びしろのあるカレーに着目。幼い頃からの夢を実現

 東京・神田といえば、多彩なカレー店が年々増え続けているエリアとして知られる。そのなかでも独自性の高い南インド料理店として認知度を上げているのが、2016年1月にオープンした「スパイスボックス」である。オーナーシェフは東京出身の斗内暢明(とないのぶあき)氏で、南インド・ケララ州の港湾都市コチの五つ星ホテルで半年間修業し、100種近いカレーのレシピを修得した。その中から自身の感性で選んだカレーを主力メニューとして提供することで、カレー激戦区で差別化を図っている。

 JR神田駅のほか、地下鉄小川町駅や淡路町駅からも徒歩約5分の場所にあり、店舗規模は11坪17席。ビジネス街での独立開業を目指していた斗内氏が、立地、規模、家賃のバランスを考えつつ、地図を頼りに初めてこの物件を訪問したときに「たどり着いた!」と感じ、出店を決めた。

 斗内氏は1977年生まれで、小学生の頃から「将来は自分の店を持ちたい」という夢を持ち、大学在学中と卒業後の計3年間、フランス料理店のキッチンでアルバイトとして働いた。同店のオーナーシェフから、「外の社会も見てきなさい」と助言され、デザート類を製造・販売する会社に就職し、12年間のサラリーマン生活を送った。最初の7年間はスーパーやコンビニエンスストアなどに納入するデザートの開発企画、その後の5年間は営業を担当。その中で、将来的に独立するときはカレー店にしようと考えるようになった。

 「料理は以前から好きだったので、いろいろ試作するなかで、カレーが性に合ったことと、ビジネスとして考えた場合にも、これから伸びしろがあるのではないかと思いました。仕事で関わっていたのはデザートですが、デザートはいろいろな材料を組み合わせ、さらに工夫を加えることにより、独自の味になります。その点では、デザートもカレーもすごく似ています。あちこちのカレー店の食べ歩きもし、なかでも一番おいしいと思ったのが、千葉・花見川区にある『印度料理シタール』でした。インドでの修業先も、『シタール』の増田泰三社長から紹介された南インドの方に手配していただいたのです」と、斗内氏は経緯を語る。すでに妻子ある身だった斗内氏は、海外修業は半年間と期間を決め、単身でインドに渡った。現地の修業先でも事情を考慮してくれ、ランチとディナーの時間帯はホテル内のレストランで働き、その間の空き時間はプロを養成する料理学校に通うことになった。ホテルのクオリティの高い料理と、インド料理の基礎を同時に学ぶという、充実した修業を体験した。

ランチ限定商品の「ランチ ミールス」(1,850円~)。好みのサラダとメインのカレーを選ぶほか、野菜とダル(豆)のカレー、カダラ(ひよこ豆)カリー、季節のスパイス料理、ライタ(ヨーグルトのサラダ)、プレーンパパド(豆粉の煎餅)、ライスが付く。ランチタイムのライスは、宮城産ひとめぼれを羽釡で炊き上げた、ふっくらとした食感が好評。ヨーグルトやパニール(チーズ)も店内で作っている

昼はカレーライス専門店。夜はミールスとビリヤニ

 帰国後、開業に向けて準備を進める際に、斗内氏はサラリーマン時代の経験を基に、ランチとディナーのメニュー構成を別々に考えた。ランチは、午後の仕事の活力源となるように、カレーもライスもボリュームたっぷりに提供するカレーライス専門店とした。夜は、南インド独特の定食であるミールスと、具材やスパイスを加えて炊き上げるインド風釡飯のビリヤニを二枚看板に据え、ドリンク類も充実させている。

 ランチは、「1種のカレーセット」(950円~)、「お得な2種のカレーセット」(1450円~)、「ランチミールス」(1850円~)を提供しており、カレーの種類によって100~500円の追加料金が加算される。また、ランチ用のライスは、宮城産「ひとめぼれ」を毎朝羽釡で炊き上げる。3.7㎏炊きの羽釡で9時から3回炊き、男性には280~300g、女性には180~200gを提供する。テイクアウト最大10食分、イートイン平均70食分を用意し、ライスが終了した時点でオーダーストップとしている。昼の客単価は1100~1200円で、近隣のビジネスマンやOLが主な客層だ。

 夜は、当初はインド料理好きのマニアックなファンが多かったが、最近は周辺の企業に勤務している人の来店も増えてきた。多彩なカレー、スパイス料理に加え、タイ産のジャスミンライスを使った米料理、クロワッサン風のパン生地を鉄板で焼いた「ケララポロタ」も提供する。インドビール、インドワイン、ラッシー、チャイなどドリンク類も充実させ、夜の客単価は2700円。フードとドリンクの売上比はほぼ半々となっており、平均月商350~400万円を上げている。

 同店が日本人オーナーシェフならではの感性と、現地仕込みの南インド料理を融合させた独特のスタイルで、ビジネス街で人気を高めている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 南インド修業で修得した本格的かつ、多彩な料理を提供している。
  2. サラリーマン時代の経験を基にビジネス街でのニーズに応えている。
  3. ドリンク類を充実させ、夜の集客力強化につなげている。

 「同じ店名やスタイルで多店舗化してもおもしろくないので、次はスパイスを使った別業態に挑戦したい」と、斗内氏は新たな展開に意欲を見せる。

スパイスボックス
住所
東京都千代田区内神田1-15-12 第二斉木ビル 1F
TEL 03-5577-3909
営業時間
11:00~14:00(L.O. 00:00)、18:00~22:00(フードL.O. 21:00、ドリンクL.O. 21:30)
定休日
日曜日・祝日
https://r.gnavi.co.jp/gvncxcus0000/