2019/09/25 挑戦者たち

株式会社 タガタメ 代表取締役 鈴木 雅史 氏

27歳で地元の千葉・船橋に1号店を構えた株式会社タガタメの鈴木雅史氏。7年目の今、「粉者」ブランドを5店舗まで拡大し、都内にも進出する。“タガタメ”という社名に込めた意味や人を育てることへの想い、夢とは。

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長所や得意なことを引き出し、誰もが輝ける環境を作りたい

――ご実家が飲食業ですが、最初に選んだのは別の仕事だったとか。

 食べることはずっと好きでしたが、仕事にしようとは考えていなかったですね。大学の途中までサッカー漬けの生活を送った後、渋谷の洋服店で働き始めたのは、アパレル業界への興味というより、とにかく東京で仕事をしたいという考えからでした。最初は楽しかったものの、次第に、何万円もする洋服を売って儲けるような仕事は、自分が本当にやりたいことではないと感じるようになりました。そんなときに父が病気で倒れたこともあり、千葉の実家に戻って経営するお好み焼き店を継ぐことに。コツコツと地道な飲食業のような仕事の方が、自分には合っているという気持ちもありました。

 継いだ店は、980円で食べ放題など、まさに薄利多売。食べ切れない量を注文する人も多い状況に疑問を感じ、創作鉄板メニューをアラカルトに加えて、客単価や満足度アップに取り組み始めました。そのなかで「3年後には鉄板焼き店を船橋駅前に開きたい」という目標が生まれました。

 時間を見つけては都内のホテルの鉄板焼き店などで食事をしつつ、本なども読んで独学で料理の知識や技術の幅を広げていきました。並行して、オリジナルの名物料理を確立するため、「日本でいちばん軽いお好み焼きを作ろう」と決め、数年がかりで開発に没頭。夢に出てくるほど根を詰めて追究した末に完成したのが、「ふわ焼き」です。その後、店の常連だった地元銀行の方々の助力もあって無担保で融資を受けることができ、2013年、船橋駅近くに「粉者」1号店を出店しました。

――“粉物”を連想する店名ですが、その由来やコンセプトは?

 「コナモノなのにお好み焼き屋じゃないの?」と、当時からよく言われました。この店名には、粉にまみれて働きながら育ててくれた母親への感謝を込めています。ですので、店舗数が増えた現在も名前は変えていませんし、鉄板焼きの「粉者」ブランドとして、これからも勝負したいと思っています。

 創業時のコンセプトとしては、今までにない鉄板焼き店をやりたい、という考えがありました。一般的な鉄板焼き業態では、4~5品のコースで1万~1万5000円程度の価格が中心。これを10品くらいに増やして、なおかつ5000円前後で提供できないだろうかと考え、今の「食べて飲んで1人1万円でお釣りがくる鉄板焼き店」へとつながりました。オープン以降、お客様の要望に応えて肉の質を上げ、現在は5000~8000円のコースが中心です。A5ランクの和牛を使いながらこの価格帯を実現するため、肉は部位ごとに塊で仕入れ、ステーキに使う部分以外は煮込みやそぼろに使用するなど、ロスを出さない工夫をしています。

 当初から店舗展開を視野に入れていて、2016年に「粉者」2号店を同じく船橋にオープン。翌年以降も年1店のペースで出店してきました。当社で働いて力をつけたスタッフに新たな挑戦の場や、やりがいのあるポジションを用意したいというのが大きな動機です。3店目以降の出店場所として都内を選んだのは、やはり注目度や知名度を高めるうえでメリットがあるから。実際にメディアで取り上げられる機会も増え、手応えを感じています。

Masashi Suzuki 1985年、千葉県生まれ。東京・渋谷のアパレルショップ勤務を経て、地元の千葉・船橋に戻り、家業のお好み焼き店の経営に携わる。2013年に独立し、鉄板焼き「粉者」1号店をオープン。2016年以降は出店を重ね、東京の錦糸町、人形町、田町でも「粉者」ブランドを展開する。

――スタッフの育成やスキルの向上にはどのように取り組んでいますか。

 大前提として、スタッフが幸せでいることが、お客様の幸せやその先の利益にもつながると考えています。そののため、一人ひとりが喜びや働きがいを感じられる環境づくりを常に考え、スタッフがやりたいことには基本的に反対はしませんし、マニュアルなどもありません。ただし、お客様の高い期待に応えるためにも、最終的な微調整やチェックは厳しく行っています。

 鉄板焼き業態は営業中の作業量が多く、お客様の目の前で複数の調理を手際よくこなす技術や段取りが不可欠。そこで、「焼人(しょうにん)」という社内資格制度を設け、技術を磨いてテストを通過した人だけがお客様の前に立てる仕組みにしています。肉の状態やサシの量を見極め、最適な焼き方を瞬時に判断するには数多くの経験が必要なので、焼人を目指すスタッフには、練習も兼ねてまかないを任せるほか、代金の半額でいくらでも肉を焼く練習をしていいと伝えています。

 今後に備えて社内体制の強化や制度の整備にも注力していて、その一環で新たに人事評価制度の構築を進めています。ただし、制度の導入後も、これまでと同じように基本的には全員が必ず昇給できるようにフォローしたい。そのためにも個々人の長所や得意なこと、目指す将来像を知り、それぞれが能力や個性を発揮できる環境をさらに整えたいと考えています。当社で働きたいと言ってくれる人に対して、断ることはまずありません。どんな人でも元から持っているよいものが必ずあり、それを見つけて伸ばし、活躍できる場を提供することが、経営者としての役割でもあると思うからです。

――創業からこれまでを振り返ってピンチや試練はありましたか?

 すべてが順調に来たわけではありませんが、ピンチらしいピンチはなかった気がします。その一方で不安は常にあって、それは今も変わりません。だからこそ大切にしているのは、「自分以外の誰かのために力を尽くす」ということ。振り返ると、独立直後は自分の目標を追うことばかり考えて、かえって不安が膨れ上がり、心が折れそうになることもありました。それがあるときから、どうすればスタッフが成長できるのか、みんなが楽しく働けるのかに意識が向くようになり、不安が和らぐのを感じたんです。

 自分以外の「この人のために頑張りたい」という想いは、つらいときに自らを支える底力になり、同時に、自分自身を幸せにもしてくれるはず。その想いを、社名の「タガタメ(誰のため)」に込め、「誰のため、何のために働くのか」を明確にする大切さを、ミーティングや個人面談で日頃からスタッフに伝えています。

研修でスタッフと畜産農家を訪れる。こういった体験が生産者を盛り上げたいという想いへつながっている

――今後の出店戦略やビジョン、その先に実現したいことは?

 内部体制の充実を進めた後は、ホテルや商業施設への出店を目指しています。ホテル内に出す場合も、「粉者」らしい料理の創作性や、手頃な価格帯は維持したいですね。また、今年新たに開店した焼肉業態でもノウハウやオペレーションを確立し、FC展開していくことを計画しています。

 もう1つ考えているのは、お客様の目の前で調理をする鉄板焼きの特性を活かし、スタッフのメディア露出やタレント化を図り、その影響力を使い、生産者にスポットが当たるイベントを実現すること。食全体を盛り上げる“軍団”を作りたいという夢があります。

 この先も課題や壁は出てくるでしょうが、挑戦のチャンスがあるのは幸せなこと。スタッフの成長や楽しそうに働く姿を何よりのモチベーションに、「日本で鉄板焼きといえば粉者グループ」と言われる日を目指して、今はとにかく突っ走りたいですね。

Company Data

会社名
株式会社 タガタメ

所在地
千葉県船橋市本町1-12-22 タカナミビル3 1階

Company History

2013年 独立1号店の「創作鉄板・ステーキ 粉者本店」を船橋駅前にオープン
2015年 株式会社タガタメ設立
2016年 船橋に粉者2号店オープン(後に業態変更)
2017年 東京初出店となる「創作鉄板・ステーキ 粉者 東京」を錦糸町にオープン
2018年 「粉者牛師」を人形町にオープン
2019年 創作鉄板・ステーキ 粉者焼天」を田町にオープン。粉者2号店の業態を変更し、初の焼肉業態となる「焼肉 牛者」オープン

創作鉄板・ステーキ 粉者 東京(東京・錦糸町)
https://r.gnavi.co.jp/3s2zbks80000/
東京進出1号店として2017年オープン。和牛ステーキや名物「ふわ焼き」などが盛り込まれた全11品6,458円のコースが一番人気。
創作鉄板・ステーキ 粉者焼天(東京・田町)
https://r.gnavi.co.jp/m7yexfx80000/
今年3月に開業したグルメタワー「GEMS田町」にオープン。接待や会食、記念日などの利用に最適な完全個室も備える。