2019/10/08 特集

“従業員満足”向上は顧客満足&生産性アップにつながる! 飲食店のESを考える(3ページ目)

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ES向上に取り組む

理念の浸透が重要。ESマネジメントは採用段階から!

重視すべき視点を知り、組織的として実践する

 自社のESを診断し、いよいよES向上に取り組むとき、志田氏は「特に重視してほしい視点がある」と語る。

 まず、経営理念や方針を浸透させる重要性を認識し、その方法を工夫すること。企業のなかには経営理念や方針は定めていても、それを価値観や行動指針にまで落とし込んでいないことがある。下の図「経営理念体系」にあるように、価値観や行動指針が土台にあってこそ、理念・方針が機能する。この理念と方針を単なる謳い文句で終わらせないために、価値観を定め、行動指針を文書化し、従業員が常に意識できるようにすることが大切だ。

 「そのために効果的なのが、価値観と行動指針は従業員を巻き込んで一緒に作成すること」と志田氏。これによって価値観と行動方針の中身がグッと身近になるからだ。また、価値観や行動指針を人事評価と連動させる方法も有効。人事評価には、売上高や営業利益額など数値項目で評価する「定量評価」と、行動指針などの非数値項目で評価する「定性評価」があるが、定性評価を位置付けることで、理念・方針を意識するよう促すことができ、浸透性が高くなる。また、数値だけでなく行動にも注目していることが従業員に伝わるので、信頼残高の上積みにもなる。

 人事評価制度の在り方も重視したい。志田氏の分析によると、人事評価に関するES診断の結果は、「満足度が低く重要度は高い」か、「満足度が高く重要度は低い」のどちらかになることが多い。下の「ESポートフォリオ分析」に照らすと、「重点改善項目」と「維持項目」に該当する。つまり、自分の評価に満足している人は現状の評価制度を重要視せず、逆に評価に不満がある人は、評価制度を重要視する傾向が強いということだ。「ここからわかるのは、人事評価制度はESポートフォリオ分析の『強み維持項目』にはなりにくいということ。したがって、会社としては不満因子の改善に努めつつ、左上の満足度が高く、重要度が低い『維持項目』に持っていくことを目標にするべき」と志田氏。一貫性と整合性のある評価制度を冷静に構築することが、従業員のES向上に有効と言えそうだ。

 ただし、飲食店では人事評価制度そのものが存在しないことも少なくない。その場合でも、「まずは行動指針とリンクさせた評価項目を作ることから始めるとよいでしょう」と志田氏。人事評価制度は必要なものだが、緊急性はさほど高くないので、少しずつでも確実に整備することが求められる。

 さらに、ES向上にとって避けて通れない課題の1つが「上司マネジメント」へのアプローチだ。「上司のマネジメントに関する診断項目が、多くの会社で重要度の高いベスト3に入っている現実があります」と志田氏。上司の不用意な言動が、どれだけESを低下させているのか、気づいていない経営者は少なくない。飲食店の場合も、スタッフに対するマネジメントは店長に一任されていることが多く、店長の言動に問題があっても気がつかなかったり、放置されたりしてESが低下し、退職者が出るまで経営者が認識できないことがある。「上司のマネジメントが改善されると、従業員は職場の風景が違って見えるもの」(志田氏)。それほど重要なので、「上司マネジメント」の課題が浮き彫りになったら、該当する上司の行動特性を変革するプログラムなどに会社主導で取り組み、決して現場任せにしないことが肝心だ。

 そのほか、「仕事を通じた自己成長」や「仕事のやりがい」についても、個人の資質に頼らず、仕組み化が大切。飲食店では、清掃や食器洗いなどの仕事が店を支える価値あるもので、重要性が高いことを常に確認して動機づけをすること。また、研修などで調理や接客のスキルアップをサポートすることも必要だ。志田氏は「サービス業では毎日の目標を立て、上司とともに達成度を振り返るようにすると、仕事への前向きな気持ちを引き出しやすい」と話す。さらに、部署や店舗を超えた従業員同士の交流を図ることもES向上につながるので、検討してほしい。

 最後に、志田氏は「ESマネジメントの第一歩は採用段階にある」と断言する。例えば、面接で給与など待遇の話ばかりになってしまうと、労働条件だけで会社とつながる人材を採用してしまう可能性がある。会社の根幹である経営理念や方針に共感・納得したうえで採用すれば、ミスマッチを避けることができる。ESにとって、採用活動も重要なポイントなのである。

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