2020/01/28 特集

飲食店×たばこの新ルール。正しい分煙対策をプロが解説します!

2020年4月1日に全面施行された「改正健康増進法」。飲食店は原則屋内禁煙が義務化され、分煙などの対応が求められる。識者に、その法律の内容や禁煙・分煙について飲食店が知らなくてはいけないポイントをうかがった。

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更新日:2023.02.13

目次
1.2020年4月1日から、飲食店は原則屋内禁煙。ただし、店舗規模などによっては対象外に。
2.「喫煙専用室」は飲食不可。「加熱式たばこ専用喫煙室」は飲食可。
3.喫煙エリアは、3つの技術的基準を満たしていないといけない。
4.20歳未満は、来店客でも従業員でも喫煙エリアへの入室禁止。
5.店舗入口などに喫煙ルールを示す標識を掲示しなくてはいけない。
6.禁止場所での喫煙や、それを助長する行為は、50万円以下の罰則の対象になる。

 2020年4月1日から、受動喫煙による健康への悪影響を防ぐための法律「改正健康増進法」が施行。飲食店は原則屋内禁煙が義務化され、分煙などの対応が求められる。

 ぐるなびによる消費者アンケートによると、喫煙者の7割以上が「飲食店でたばこを吸いたくなる」と回答。また、望ましい分煙の条件については、非喫煙者と喫煙者ともに「完全個室のみ喫煙可」と「喫煙専用スペースのみ喫煙可」を望む声が多かった。自分の店が義務化の対象であるかどうかは別にして、非喫煙者にとって快適な空間を作りつつ、喫煙者のニーズにも応えるためには、しっかりとした分煙対策が必要といえる。

【アンケートの詳細はこちらから】
分煙&禁煙にどう対応する? いま考えたい飲食店のタバコ対策

 では、具体的に必要な対応策について識者に話を聞いていこう。

お話をうかがったのは… 日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 AP推進部 主任 玉置智世氏
企業を対象に、法律に沿った分煙方法やたばこに関する相談に無償でアドバイスする分煙コンサルタントとして活動。大手チェーンや個人店など、飲食店も数多く担当する。

新ルール1 2020年4月1日から、飲食店は原則屋内禁煙。ただし、店舗規模などによっては対象外に。

 「健康増進法の改正前は努力義務だった“屋内の禁煙・分煙化”が、今回の改正で明確に義務化されました。飲食店をはじめとする様々な施設が対象で、場合によっては罰則も課せられます。また、喫煙ルールを示す標識の掲示も義務化されるなど、今までにない新たな規則が設けられています」と語るのは、日本たばこ産業株式会社・たばこ事業本部AP推進部主任で、分煙コンサルタントとしても活躍する玉置智世氏。

 ただし、禁煙・分煙化の義務対象にならない飲食店もある。それは、①2020年3月31日時点ですでに営業を開始しており、②資本金が5000万円以下で、③客席面積が100平米(約30坪)以下の店。①~③を満たす店舗は、「全面喫煙可」であることと「20歳未満立入禁止」の旨が明記された標識さえ掲示すれば禁煙・分煙化の必要はない(自店が対象かどうかは下記チャートを参照)

※注1 既存店が2020年4月1日以降に、何らかの状況(店名や業態など)の変更があった場合、引き続き「既存」の店舗に該当するか否かは、①事業の継続性、②経営主体の同一性、③店舗の同一性などを踏まえて総合的に判断される。 ※注2 資本金が5,000万円以下であっても、資本金5,000万円を超える大規模会社から一定数の出資などを受けている場合は対象になる可能性がある。 ※注3 「客席」とは、飲食をさせるために客に利用させる場所を指し、店舗全体のうち厨房、トイレ、廊下、会計レジ、従業員スペースなどを除いた場所・部分を指す。

 「逆に言えば、2020年4月1日以降にオープンする飲食店は、規模に関係なく、対象になります」と、玉置氏は指摘する。

 では、対象となった飲食店が禁煙・分煙化をする場合は、どんな点に気をつけなくてはいけないのか。以下で紹介する。

新ルール2 「喫煙専用室」は飲食不可。「加熱式たばこ専用喫煙室」は飲食可。

 改正健康増進法が適用される対象店舗は禁煙・分煙化をする必要があり、その際の選択肢は、大きく分けて下図A~Dの4パターンのどれかになる。

 Aは、屋内の全面禁煙化。Bは、紙巻きたばこと加熱式たばこのどちらも喫煙できる専用室を設ける分煙。Cは、加熱式たばこ専用の喫煙室を設ける分煙。Dは、喫煙専用室と加熱式たばこ専用喫煙室を併設する分煙だ。「いずれにしても、禁煙エリアは必ず確保しなくてはいけません。また、飲食店において禁煙・分煙化する必要があるのは屋内のみ。周囲に配慮した上で、店の敷地内の屋外であれば喫煙は法律上、問題ありません」(玉置氏)。

 ここで覚えておきたいルールが、「喫煙専用室は飲食不可だが、加熱式たばこ専用喫煙室は飲食可」ということ。もし、喫煙も飲食もできるスペースをできるだけ確保しようとするなら、店の大部分を加熱式たばこ専用喫煙室とすることも可能ではある。「ただ、まだまだ紙巻きたばこを使用している方も多いので、加熱式たばこ専用喫煙室を広く取ればいいというわけではありません。現状のお客様の喫煙率や、加熱式たばこの利用状況を把握したうえで、自分のお店に合う分煙パターンを見極める必要があります」と、玉置氏はアドバイスする。

新ルール3 喫煙エリアは、3つの技術的基準を満たしていないといけない。

 また、上図のB~Dのような喫煙用の専用室は、たばこの煙が外に流出しないような3つの技術的基準をクリアしている必要がある。それは、①「室外から室内に向かって風速0.2m/秒以上で空気が入り続けている」、②「壁・天井などによって区画され、完全にほかの空間と仕切られている」③「屋外または外部の場所に煙を排気する機能を持っている」の3つだ。「すでに喫煙室があるお店は、これらの基準を満たしているか確認が必要です。①の基準を満たすためには、③の排気機能や入口の面積などが大きく関係します。もし風速が足りない場合は、のれんやカーテンを利用して空気の流れをコントロールする方法もあります」と玉置氏。とはいえ、こうした技術的基準の確認は、専門的な知識が必要。玉置氏のような分煙の専門家に相談するのも1つの方法だ。

新ルール4 20歳未満は、来店客でも従業員でも喫煙エリアへの入室禁止。

 最後に押さえておきたい規則が、「20歳未満の人の喫煙室(加熱式たばこ専用喫煙室を含む)への入室禁止」。これは、来店客はもちろん、従業員による掃除や接客も該当するので、20歳未満の従業員がいる店では特にルールをしっかり共有する必要がある。

ワンポイントアドバイス① 「加熱式たばこ」の定義をご存知ですか?
加熱式たばことは「たばこ葉やたばこ葉を用いた加工品を燃焼させず、専用機器を用いて電気で加熱することで煙を発生させるもの」と定義づけられています。例えばPloom TECHやIQOS、gloといったもので、それぞれ加熱の方法や温度などは製品によって異なります。「電子たばこ」(日本で販売しているもの)は、たばこの葉を使っていないので、たばこには含まれません(玉置氏)。

新ルール5 店舗入口などに喫煙ルールを示す標識を掲示しなくてはいけない。

 今回の法改正によって、店内に喫煙可能な場所がある場合は、必ずその旨を示す標識を掲示する義務が課せられることになった。掲示が必要な場所は、「店の入口」と「喫煙室の入口」の2カ所。店の入口の標識には、「店舗内に喫煙できる場所がある旨」を記載する必要があり、喫煙室の入口には「喫煙可能な場所である旨」「20歳未満は立ち入りが禁止されている旨」を明記する必要がある。「2020年はオリンピック・パラリンピックが行われるため、外国人観光客が例年以上に増加することも予想されます。外国人の来店が多いお店は、標識に英語表記なども追加して、トラブルを防止することも大切です」と玉置氏は指摘する。

 標識は、内容が正確に伝われば自作でも構わないが、厚生労働省の特設ページから印刷用データが入手可能(下記)。また、市区町村ごとに独自の標識を制作・配布している場合もあるので、確認いただきたい。

標識データは厚生労働省の特設ページからダウンロード可能!
厚生労働省の特設ページ(下記URL)には、飲食店などで使える標識のデータ(全16種類)がアップされており、無料でダウンロードできる。「自分のお店の禁煙・分煙を示す標識をプリントアウトして、それぞれ適切な場所に掲示してください」(玉置氏)。
https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/sign/

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新ルール6 禁止場所での喫煙や、それを助長する行為は、50万円以下の罰則の対象になる。

 法律施行後、違反者には罰則が生じる(主な罰則は下記参照)。例えば、禁止されている場所で喫煙した人には30万円以下の過料が、店舗入口への標識掲示(喫煙場所がある場合)を怠ったり、喫煙禁止場所に灰皿などを置くと、施設管理者に50万円以下の過料が課せられる。「基本的には『指導→勧告→命令→罰則』の流れで適用となります」(玉置氏)。

■主な義務・罰則リスト
対象 義務内容 罰則
禁止行為をした本人 喫煙禁止場所における喫煙禁止 30万円以下
紛らわしい標識の掲示禁止、
標識の汚損などの禁止
50万円以下
施設管理者
(管理権原者)
喫煙禁止場所への喫煙器具・設備
(灰皿など)の設置の禁止
50万円以下
喫煙可能な場所がある場合、
施設の出入口に標識を掲示
50万円以下
技術的基準に適合するよう維持 50万円以下
喫煙可能な場所を禁煙とした場合、
直ちに標識を除去すること
30万円以下
喫煙可能な場所の出入口に
必要事項を満たした標識を掲示
罰則無し
喫煙可能な場所に20歳未満の者を
立ち入れさせてはならない
罰則無し

ワンポイントアドバイス② 国法よりも厳しい条例を定めている自治体もあるので注意!
東京都など、受動喫煙を防止する条例を定めている自治体は多く、「改正健康増進法」より対象の条件が厳しいものもあります(下記参照)。ご自身のお店が対象になる条例がないか確認してみてください(玉置氏)。

■国法より厳しい条例を定めている自治体
自治体 主な条例の内容 全面施行年月
東京都 「店舗規模に関係なく従業員を雇用している場合は
喫煙不可」など
2020年4月~
大阪府 「店舗規模に関係なく従業員を雇用している場合は
喫煙不可」(努力義務)など
2025年4月~
(2022年4月~一部施行)
愛知県
豊橋市
「加熱式たばこ専用室も飲食不可」(努力義務) 2022年4月~
山形県 「加熱式たばこ専用室も飲食不可」(努力義務)など 2022年4月~
千葉県
千葉市
「店舗規模に関係なく従業員を雇用している場合は
喫煙不可」
2020年4月~
静岡県 「禁煙の店舗でも標識の掲示義務あり」 2019年4月~
兵庫県 「加熱式たばこ専用室の設置不可」など 2020年4月~
秋田県 「加熱式たばこ専用室も飲食不可」(努力義務)など 2019年7月~
神奈川県 「禁煙の店舗でも標識の掲示義務あり」など 2019年10月~
(2019年12月現在)

ワンポイントアドバイス③ 分煙化をする際には、助成金の活用も検討を!
厚生労働省や東京都には、受動喫煙防止対策の助成金制度があります(下記参照)。それぞれ、一定の条件を満たせば、厚生労働省からは上限100万円、東京都からは上限400万円の支援を受けることが可能。申請の手続きや詳細については各HPに掲載されているので、ご検討ください(玉置氏)。

■厚生労働省と東京都の助成金制度の概要
厚生労働省
対象 下記①~③のずべての条件を満たす事業者
① 労働者災害補償保険の適用事業主
② 常時使用する従業員の数が50人以下もしくは資本金5,000万円以下
③ 事業場内において、措置を講じた区域以外を禁煙とする事業主
補助限度額 1施設につき上限100万円
東京都
対象 下記①か②のどちらかの条件を満たす事業者
① 資本金5,000万円以下
② 常時使用する従業員の数が50人以下
補助限度額 1施設につき上限400万円

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