2020/01/31 繁盛の黄金律

デザートをテコにテーブルタッチの中身を濃くしよう

「テーブルタッチ」とは、来店客のテーブルに行ってサービスの補充をすること。その重要さと、顧客満足度だけでなく客単価も上げるためのコツを紹介します。

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Vol.101

タッチパネルの普及でコミュニケーション力は落ちるばかり

 外食業は、フードサービス業と言うくらいですから、つくりたての質の高い商品と、フレンドリーで心のこもったサービスが命です。近年、デリバリーで売上を伸ばしている店が増えていますが、デリバリー市場は今後さらに大きくなるでしょうし、それを導入することに異を唱えるつもりはありません。しかし、デリバリーはつくりたても、面と向かってのサービスも提供できないのですから、外食業の本質から外れたビジネスであることを認識しておかなければなりません。別の言い方をすると、店の評判を下げるおそれが十分にある、ということです。

 さて、今回のテーマは「テーブルサービス」です。いいサービスであるためには、お客さまと円滑なコミュニケーションが取れていなければなりません。注文を受けるときに、それぞれのメニューについてしっかりとした知識を持ち、お客さまの好みを感知しながらおすすめメニューを紹介できなければなりません。強引に注文を取って皿数を増やし、客単価を無理に上げるようなことはしてはいけません。また、特別に高いボトルワインをおすすめして、お客さまを狼狽させるようなことがあってもいけません。

 注文を受けて、でき上がった料理をテーブルに運べば、それで終わりかと言ったら、そんなことはありません。豊かな時間を楽しんでもらうためには、何度もテーブルに足を運んだり、目配りして食事の進行具合を確かめ、食事の終わった食器を下げ、水やお酒など飲み物の不足を補う必要があります。テーブルに行っていろいろなサービスをすることを、テーブルタッチと呼びます。

目的が明確になると、自然にテーブルタッチの回数が増える

 注文を行うタッチパネルなどの普及によって、このテーブルタッチがほとんど行われなくなっています。これは、テーブルサービス業の本領から外れていることですから、非常に危ういことです。タッチパネルはあくまでもサービスの補助具であって、従業員が行うテーブルタッチは必要です。もう少し正確に言うと、中身のある心のこもったテーブルタッチが必要、ということになります。「何度もテーブルに足を運んで、お客さまの要望を聞こう!」と、経営者は部下にハッパをかけますが、「足を運ぶ理由」が見つからないので、なかなかテーブルタッチの回数は増えません。ミッション(行く目的)が不明ということですね。

 成功しやすい具体的な例をひとつご紹介しましょう。それは、デザートをおすすめすることです。豊かな食事の時間において、デザートはシメの役割を果たします。すばらしいデザートメニューがあって、それをウエイターやウエイトレスが心を込めておすすめし、お客さまも快く注文して、最終的に満足度が高まり、客単価が上がります。

 デザートは重要な戦略的武器です。デザートが充実していて、いつも季節の新メニューが導入されている店は、ほとんどがいい店ですね。サービスのレベルも高いです。デザートに力を入れている店は、必然的にテーブルタッチの回数が増え、従業員にとってもミッションが明確になるのです。ですから、テーブルサービスの質を高める手段のひとつとして、デザートの強化を図ってみてください。きっといい結果が出るでしょう。お客さまの満足度が高まり、客単価も無理なく上がります。もちろんその前提として、絶対的に自信のあるデザートメニューを持つことが大事です。

 「デザートもタッチパネルで注文してもらえばいいじゃないか」。こう考える人は、テーブルサービスの本質を知らないか、忘れてしまった人です。従業員が自信を持って直(じか)にお客さまにおすすめし、コミュニケーションを密にすることで、お客さまは本物のファンになってくれるものです。

 繰り返しますが、タッチパネルは補助具です。お店の真のファンは、ダイレクトなコミュニケーションによってしか生まれません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。