2020/02/25 特集

【後編】注目シェフ クローズアップ 料理界の若き旗手にいま聞きたい、10のこと。(2ページ目)

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【Bisteria Satollo】オーナーシェフ 佐藤 猛

佐藤 猛(さとう たけし) 1982年、京都府生まれ。京都のイタリア料理店で7年修業後、京都・伏見の熟成肉専門店「中勢以」(現在は「京中」)で肉全般の取り扱いを学ぶ。東京・世田谷のフレンチ「La Butte Boisee」、フランスの三つ星レストラン「Flocons de Sel」などを経て、「中勢似 内店」(東京・茗荷谷)では、シェフとして「ミシュランガイド東京」一つ星を獲得。2018年、東京・自由が丘に「Bisteria Satollo」オープン。
Bisteria Satollo(ビステリア サトッロ)
東京都目黒区自由が丘2-14-19 夢のパラダイスⅡ 2F
https://r.gnavi.co.jp/8gsbm2cr0000/
東京・自由が丘駅から徒歩約4分の立地に2018年7月オープン。オープンキッチンで活気があり、カウンター席もある。ワインはフランス産を中心に100種ほどラインナップし、ペアリングは3,000円からとリーズナブル。

料理人を目指したきっかけ

 小学生の頃、休日になると料理を作ってくれた父の姿が特に印象的だったのを覚えています。炒飯などの簡単な料理でしたが、キッチンにいる父は格好よく、兄もアルバイト先の飲食店の制服を着て自宅で料理をすることもありました。家族で食卓を囲むひと時は、とても幸せな時間で、自然に「人を幸せにする料理人になりたい」という想いが芽生え、「高校へ行かずに料理人になる!」と考えたほどです。

 高校入学後は飲食店でアルバイトを始め、2年生の後半から調理師専門学校を卒業するまでの2年半は、オステリアを謳うイタリアンで働きました。専門学校卒業後の進路をイタリアンに絞り、2店舗目のリストランテでは、スーシェフを任されたものの、食べ歩きをしているうちに、イタリアンの店では何を出されても食材や調理法がわかるのに、フレンチでは疑問ばかり。そこでフレンチも学びたいという気持ちが湧き、フレンチの名店「La ButteBoisee」(東京・世田谷)で学んだのち、その店のオーナーの紹介で、フランスの三つ星レストランで修業する機会も得ました。

独立の経緯と独立で重要だと思うこと

 料理人は、誰しも独立を夢見ると思います。私も20代後半での独立を考えていましたが、27歳でイタリアンからフレンチへ舵を切り、30歳目前でフランスに渡ったため、独立よりもまずはフレンチの勉強に専念しました。帰国後は、熟成肉専門店の新業態、〝食べられる中勢以.(飲食事業)の立ち上げに携わったり、様々なフレンチの店で働く中で、チャンスがあれば独立したいという想いを温め続けていたところ、2018年、37歳の時に突然チャンスがやってきました。当時勤務していた店舗が閉店することになったため、以前働いていた店がある東京・自由が丘で勤務先を探しているとき時、「人気店が移転するので物件が空くから、そこで店を開いたらどうか」と独立をすすめられたのです。物件はビルの2階ですが、前の店の実績があり、この場所なら、と判断しました。また、「家賃が高すぎないこと」「造作譲渡と残余物譲渡が受けられること」「気心知れたスタッフが働いてくれること」の、1つでも欠けたら独立はしないと決めていたことがすべてクリアになり、後に引けなくなってしまいました。物件を見てから独立を決意するまでは、2週間ほど。オーナーシェフとして独立したので、経営者でもあり、独立後は決まった給与が入るわけではなく借金を背負うこともあるので、リスクも大きい。常に経営者の視点を持つことと、自分の信念をぶらさないことが大事だと思います。

 独立前に勤務してきた店の家賃や経費、売上は把握していたので、自分の店でも、各種経費を払ったうえで利益を出すには、いくら売上が必要かをきちんとはじきだし、客席数と稼働率を計算したうえで、コースとアラカルトの価格を設定しています。

フレンチとイタリアンを融合し、“ビステリア”の魅力を形に(佐藤氏)

自身の料理スタイル

 店名に冠した造語、「Bisteria(ビステリア)」のとおり、フレンチの「ビストロ」とイタリアンの「オステリア」の“いいとこどり”です。基本的にはフレンチをベースにしつつ、コースの温菜のポジションでパスタを提供している点が特徴で、イタリアンとフレンチの垣根はありません。お客様から、コース料理もワインペアリングも「コストパフォーマンスがよい」という言葉をいただくことも多いのですが、パスタを組み込んだのは、原価を調節しやすいという面もあるほか、私自身、食事は365日パスタでもいいというほど好きというのもあります。長くイタリアンで修業した後、フレンチの勉強もした経験を活かして、今後はこの「Bisteria」の可能性を追求していきたいですね。

自分の成長につながった成功や失敗

 自分を活かせる環境を求めて、数多くの店で経験を積んできました。プラス面は学び、マイナス面は反面教師としてきたので、ムダな経験は1つもありません。失敗したと思ったこともありません。すべてが成長につながっています。なかでもフランスに行った経験は非常に大きく、本場の雰囲気と空気に触れ、様々な発見と気づきがありました。海外に行きたいなら、若いうちにぜひチャレンジしてほしいですね。成功という点では、私はまだ成功したとは思っていません。あえていうなら、常連さんが1人でも増えることが成功だと思います。

日々、習慣にしていること

 仕事上でのルーティンを崩さないことです。例えば、ランチのオープンの12時から逆算して、毎日必ず10時にパン生地をこね始めます。やるべきことの時間が1つでもずれると、どこかにひずみが生まれ、それが営業に影響してきます。そして、お客様にご満足いただけないことにつながり、結果、リピートが望めなくなると考えています。

スペシャリテ、自慢の一品

「Bisteria Satolloを丸ごと楽しめるコース!」は5,000円。前菜、パスタ、魚料理、肉料理、デザート、ドリンクの全6品。佐藤氏のこだわりが凝縮されている

 どの料理も自信を持ってお出ししているので、すべての料理がスペシャリテです。しいて挙げるならば、店を知っていただける5000円のおまかせコースでしょうか。料理の起承転結を考えて組み立てており、魚料理がクリーム系であれば、パスタはトマト系かオイル系にするなど、味もかぶらないよう配慮しています。また、ソムリエの資格も持っているので、それぞれの料理とワインのペアリングにも力を入れています。

座右の銘、好きな言葉

 「笑顔」です。「笑」という字が好きで、自分が笑顔になれる環境があれば、お客様にも笑顔になっていただけると思います。

趣味や休日の過ごし方

 今は店を軌道に乗せることが最優先ですが、時間を見つけてはジャンルを問わず、妻と食べ歩きをしています。

目指す料理人像

 経営者としても料理人としても、「人を育てられる」存在でありたいです。人を育てることは得意ではないのですが、今後、収益を高めるには、多店舗展開も選択肢の1つ。そういう意味で、他店の経営者には常に注目しています。

2020年の目標や予定

 オープンから1年半が経過し、常連のお客様も増えました。私の考える常連とは、頻繁に来店されるお客様というよりは、フランス語で言う「ソワニエ」。当店を気に入り、記念日などに利用してくださるだけでいいのです。今、提供している料理のクオリティを守り続けていくことと、最初の一皿をスピーディにお出しすることなど、食べているときも、食べ終わった後も、お客様の満足感や幸福度を高めていくことができれば、自然と「ソワニエ」になっていただける。

 今年1年は地に足を付けて、そんな「ソワニエ」を増やしていきたいと思っています。

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