2020/02/28 繁盛の黄金律

店長がいない店、調理をしない店は、必ず滅びる

飲食業で失敗するケースとして「店長を置かない」「店内調理をしない」ことがあげられます。複数店舗を兼任する店長では、店の力が衰えていき、赤字になりがち。また、外食業は店内調理で価値が生まれているのです。

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更新日:2022.10.28

Vol.102

目次
1店舗、月商500万円を目安に
限定された調理技術を磨き上げる

1店舗、月商500万円を目安に

 飲食業で必ず失敗をする店は、次の2つを実行しています。

  1. 店長を置かない(店長がいない)
  2. 店舗調理(店内調理)をしない

 この2つです。

 そんな店はないでしょ、と思っているかもしれませんが、それがあるんですね。特にチェーングループは、この2つを実行しているところが増えています。店長と店舗調理が必要なくなれば、こんな楽な商売はありません。でも、飲食業はそれでお客様が来てくださるほど楽な商売ではありません。「店長はいならい」「店舗調理不要」、この2つを実行したら、必ず失敗します。これは、個人店もチェーン店も同じです。

 ①「店長を置かない店」は、1人の店長が複数の店舗の店長を兼任しているような店です。例えば、5店舗を1人の店長が管理していたり、なかには10店に店長が1人しかいない、というケースもあります。個人店でも、多店舗化をするときに、もともとの店の店主が2~3店舗の店長を兼任することがありますが、これをやると店の力は衰えていって、どこも赤字転落ということになっていきます。いくら店主1人が頑張っても、必ずそうなります。

 店長が育っていない段階で、2号店、3号店を出してはいけないのです。店は“城”であり、店長は“城主”ですから、その城を守り、さらに強くしていく義務があります。そして、日々の営業は、戦(いくさ)そのものです。1人の指揮官に、2つの戦場をまかせられますか。どんなに有能な指揮官であっても、2つ(かそれ以上)の戦場で戦って、どれも勝たなければいけないとしたら、どうでしょう。総崩れになることは目に見えています。1つの城(戦場)を死守するという責務だからこそ、その本領を発揮できるのです。

 また、店長がいない店には、店長が育っていないという理由のほかに、店の売上規模が小さすぎるという場合もあります。もちろん業種や業態、スタッフ数、坪数などにもよりますが、ひとつの目安として月商500万円の基準に達しないと、店長に満足のいく給料を払えないことも事実です。

 チェーングループでも、売上過少が理由で、複数店舗管理を導入しているケースが多いのですが、私の基本的な考えは、「月商500万円にも達していない店はチェーンにしない」です。1店に1人の店長をちゃんと置くことができる店をチェーンにすべきです。チェーンというものは、“強い店長”を育てることによって強くなるビジネスなのですから、それができない店を多店舗化してはいけないのです。それでもどうしても、というのであれば、有能なパートを店長にするか、社員独立制度で道を拓くか、どちらかを選ぶべきです。

 しかし、今はともかく将来も、月商500万円に到達する可能性のない店は、多店舗化してはいけません。これを原則とすべきでしょう。1店に必ず1人の店長を置く。そして、その店長の力を高めて、毎年確実に客数と客単価を伸ばしていく。これがあるべき姿です。

限定された調理技術を磨き上げる

 もう1つの、「店舗調理をしない(簡略化含む)」は、特にチェーングループで強力に推し進められています。チェーングループの中には、できれば店舗調理はナシにしたい、と考えている経営者が多数います。そして、その方向に向かって突き進んでいるところも少なくありません。しかし飲食店というものは、店舗調理によって最終価値が生まれる独特なビジネスです。スーパーやコンビニで、“外食のような”商品(中食商品)が多種売られていても、外食が勝てるのは、店舗調理という最終武器があるからです。これを棄てたとたん、“本物の外食メニュー”を生み出すことができなくなります。しかし、この店舗調理が、外食という商売を面倒で困難な仕事にしていることも事実です。

 だからこそ、チェーングループはこの店舗調理をなんとか取り除こうと、必死になっているのです。しかし、チェーンの中でも、「餃子の王将」などは、700店舗以上の店を持ちながら、1店1店に調理人を置いて、そのレベルを高め続けています。これをやっているから、圧倒的な競争力を持ち続けられているのです。「餃子の王将」が店舗調理をやめたら、スーパーやコンビニに並んでいる多種の中食のレトルト・冷凍食品に押しつぶされてしまうでしょう。

 チェーングループの多くは店舗調理の簡略化に突き進んでいるのは間違いありませんから、個店はむしろ逆の道を行くべきです。とことん店舗調理にこだわり続けるのです。そして、その店舗調理の技術を高め続けることによって、絶対にチェーンでは提供できないレベルのメニューを手にすることです。逆張りこそ、生き残る道です。

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 ただし、それが本物の武器になるためには、1つの条件があります。やる価値のある調理だけを店に残す、ということです。何から何まで店で調理するのでは、本当に強いメニューは作れません。ここが肝(きも)だというところに、調理のパワーを集中させることです。店でやってもやらなくても同じことだ、というような調理は、店からとことん排除する(外部化する)覚悟もときには必要です。そういう目で、もう一度あなたの店の調理場と調理の全内容を見直してみてください。やらなくていい調理がどっさり残されていて、調理作業を煩雑にし、そのために不必要な調理器機が大きなスペースを占有していることが多いのです。

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 絶対に店でやらなければいけない調理は何か。それをまず特定して、調理場改革を断行しなければなりません。そして、店でやるべき調理の技術をとことん磨き上げるのです。そうすれば、働く環境もよくなり、系統的に調理技術を身につけられるようになり、スタッフの定着率も高まります。

 やらなくてもいい仕事が、あまりにも多く店に残されていることが、飲食店を不人気業種にしているのです。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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