2020/04/14 特集

今、飲食店がやれることーー経験したことのない経営の危機を乗り越えるために

「新型コロナウイルス感染症」の拡大による影響は、飲食業界を直撃。売上ダウンに陥る店が多く、経営が危ぶまれる事態も。そんな中、今、飲食店はまず何をすべきか――。飲食専門のコンサルタントに話を聞いた。

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※本記事は、2020年3月末日時点の情報です。

飲食業界に吹き荒れる“逆風”。打撃を最小化し、乗り切る方策を!

株式会社船井総合研究所 フード支援部 部長 上席コンサルタント 二杉 明宏氏
1974年和歌山県生まれ。同志社大学大学院法学研究科修士課程修了後、2000年4月に株式会社船井総合研究所に入社。入社後は、外食産業におけるコンサルティング活動に従事。業態開発、新規出店、多店舗展開、既存ブランドのブラッシュアップなどにより、持続的な企業業績向上のプロデュースを得意とする。

毎日、状況が変化する中、今できることをやりきろう

 外食産業にとって、「新型コロナウイルス感染症」の拡大が大きな逆風となっている。これまでも、日本の飲食業界はリーマンショック(2008年)や東日本大震災(2011年)などの困難を経験し、その都度乗り越えてきたが、「今回の影響はリーマンショックなどの比ではない」と、株式会社船井総合研究所の二杉明宏氏は指摘する。しかも、「毎週、毎日状況が変わっており、それに伴ってマーケットも消費者の温度感も時々刻々と変化している」と二杉氏も現況を把握する難しさをにじませる。多くの飲食店が大幅な売上減に苦しむだけでなく、先行きへの不安を強く抱いている。

 だが、こんなときこそ、事態をできる限り正確に捉え、打てる手立てをしていくことが肝要だ。まずは、これまでの経過と飲食店の状況を大まかに振り返っておこう。

 日本で新型コロナウイルス感染症の感染者が最初に見つかったのは、1月中旬ごろ。中国・武漢市から訪日した中国人だったが、その後、2月上旬にクルーズ客船内での感染、2月半ばには北海道や東京、和歌山などで渡航歴のない日本人の感染が相次いで確認。さらに、大阪のライブハウス、愛知のスポーツジムでのクラスター(集団感染)が明らかになった。そして3月初めから全国の小・中・高校の一斉休校が開始し、同25日、東京都知事が「オーバーシュート(感染者の爆発的増加)の懸念」から外出自粛を要請。さらに同31日には、バーやナイトクラブ、酒場などへの来店自粛を呼びかけ、首都圏や大都市を中心に危機感がさらに大きくなった。

 こうした中で、飲食店は「まず、インバウンドへの依存度が高いエリアや業態から影響が出始め、2月には前年同月比で売上40%ダウンという店が出てきた」と二杉氏。ぐるなびが飲食店に向けて実施したアンケート(右ページ)でも、2月の売上が昨年同時期と比較して「減った」と答えた飲食店は55.7%(Q1)、「日本人客のディナータイムの減少」を感じている店は50.3%(Q4)に達した。一方で、「感染者が出ていないエリアでは2月の影響はほとんど感じられなかった」と二杉氏は振り返る。

 ところが、3月に入ると事態は急速に変わり始める。全国一斉休校の開始によって自粛ムードが高まり、特に大箱の店舗は、企業の歓送迎会などの宴会がキャンセルになったりと、「前年対比で20~30%売上がダウンしたところも多かった」(二杉氏)という。一方、少人数の集まりや、学生・若者らの来店はまだ一定数あり、3月中~下旬にかけては、いわゆる「コロナ疲れ」と春休みの長期化を背景に、客足の戻りさえ見られた店もあった。しかし、前述したように、3月25日に東京都知事が発した「外出自粛要請」で、一気に局面が転換。「4月にかけて今後はさらにきついモードに入っていくことは間違いない」と二杉氏は言う。

 まさに、日ごとで刻々と事態が変わっている。大人数のイベントや宴会だけでなく、夜の外出や飲食を伴う少人数の集まりの自粛の動きも高まっており、今後ますます外食の機会が減少していく可能性が高い。企業ではすでにリモートワークなどの在宅勤務が広がりつつあったが、この動きも加速し、ビジネス層の外食ニーズがさらに冷え込むことも避けられないだろう。そのため、こうした空気感の中だと、来店を促すことに疑問を持たれるシーンも出てくる。来店に向けたメッセージや販促の方法、タイミングを慎重に見極める姿勢も求められている。

 ただし、マイナスの現象ばかりでないことも、認識しておきたい。「インバウンドや宴会に影響を受けないファストフード業態は、イートインの減少をテイクアウトの増加で補っている」(二杉氏)。また、テイクアウトやデリバリー、通販など、いわゆる「巣ごもり需要」は急増している。食に関する限り、販売チャネルが変化していることを押さえておきたい。

 では、今後の見通しはどうだろうか。二杉氏は「先々が見え始めるのは、早くてもゴールデンウィークの後か、6月に入ってからではないでしょうか。今後の国内外の感染状況、世界経済の動向いかんでは、さらに混沌とする可能性も否定できない」と指摘する。だが、状況を見ているだけというわけにはいかない。飲食店が生き残るためには、今できることを見定めて、粛々と進めることが大切だ。

 二杉氏は「まず、打撃を最小化することが重要」と訴える。つまり、売上減少による赤字を少しでも削減することだ。具体的には、固定費や人件費を見直し、まずは経費を圧縮して損益分岐点を下げる方策を、いますぐ講じる必要がある。

 さらに、二杉氏は「おそらく経費の圧縮だけでは、現在の赤字の解消は難しい」と語り、次の行動として「キャッシュをできるだけ多く用意すること」を挙げる。赤字を補填できずにいると、資金ショートを起こしかねない。詳しくは次ページで紹介するが、国や自治体などでは融資や助成金など複数の資金支援策を実施しており、今はそれらを最大限に活用し、この事態を乗り切る状態を整えることが先決だ。そして、この期間を収束後に備えた体制づくりの時間として有効に活用したい。では、次ページから、具体的に赤字の最小化についてや資金繰り、今後の取り組みについて考えてみよう。

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