2020/05/28 特集

【飲食店の数字の見方】効果的なクーポン設計完全ガイド

現在、多くの飲食店が直面するお金の問題。そこで、計数管理コンサルタントの東海林健太郎氏に、店舗の数字の見方・操り方を3回にわたり解説してもらう。第2回では、客数増と原価低減について数字の面から見ていく。

URLコピー

更新日:2023.11.27

目次
客数増/つながりを生むリピート施策
客数増/お得チケットと利益のバランス
原価低減/1%の無駄を補うために
原価低減/メニュー数を絞る効果

 経営や店舗運営が不安定になりやすい今、計数管理コンサルタントの東海林健太郎氏に3回にわたって経営に役立つ店舗の数字管理について教えていただく。店舗の数字管理の基本について学んだ第1回に続き、第2回からはより実践的に数字の操り方を学ぶ。問題を解きながら、客層増につながる施策にするにはどのように計算すればよいのか、お得チケットを発行するときに利益はどのように考えたらよいのかを考えていく。また、コストがオーバーしたときにそれをどのくらい客数アップを狙えばよいのか、メニューを絞るためにどのようにコストを計算すればよいのかも教えてもらう。

【こちらもチェック】
お店の数字の見方・操り方を知る【1】~損益計算書の作成と生かし方~
お店の数字の見方・操り方を知る【3】~販促を分析する~

株式会社アップターン 代表取締役 東海林 健太郎氏
1968年、大阪生まれ。IT企業で業務改善活動に従事し、コンサルタント会社を立ち上げた後、飲食業界にも進出。現在、大阪、神戸で和カフェ「Mamezo&Cafe」を3店舗のほか、食パン専門店(FC)を運営する。その一方、計数管理コンサルタントとして外食企業の収益改善セミナーを10年以上実施。自店を中心に検証を繰り返し、そのノウハウを全国の飲食店に届けている。近著に「脱・どんぶり勘定!これからの飲食店 数字の教科書」(同文館出版)がある。

客数増/つながりを生むリピート施策

 外食をする人自体が少なくなっているコロナ禍では、原点に戻り、来店してくれたお客様に対して再来店を促していくことがより重要です。特に飲食店の場合、数人のグループで来店するケースが多いので、「あのお店良かったね、おいしかったね!」と覚えてもらえると、再来店や客数アップの可能性が高まります。

 それでは、ここで問題です。

 A店は客単価3,000円、原価率34%、人件費率22%、その他店舗諸経費合計が14%、固定費は90万円です。A店のある月の来店客数が600人だった場合、損益はいくらでしょうか?(下の表A店-①参照)

月の客集が600人だった時の損益は?

①客単価3,000円×変動費率70%=2,100円
②客単価3,000円×変動利益率30%=900円
③変動利益単価900円×客数600人=540,000円
④営業利益540,000円-固定費900,000円=-360,000円

 つまり、A店はこの月、36万円の赤字でした。では、A店が赤字にならないためには、あと何人のお客様が必要だったのでしょうか?(下の表A店-2参照)

赤字にならないためには、あと何人の来店が必要だったか?

 赤字にならないためには、固定費分を稼がないといけないので、
①固定費900,000円÷変動利益単価900円=1,000人

 A店は月に1,000人の来店が必要でした。しかし、実際の客数は600人だったので、目標1,000人-600人=400人。答えは、400人の客数アップが必要だったということです。

 A店のように客数が落ち込んでいる店舗は、新規集客はもちろんですが、再来店や利用頻度を上げるための取り組みが大事です。利用頻度が高まれば、おのずと複数人で来てくれる可能性も高まりますので、さらに取り組みの効果拡大が期待できます。

 また、これを好機と捉え、お客様の情報を集めていくことをおすすめします。例えば、「応援ありがとうございますキャンペーン」と銘打って、来店いただいた人に「感謝イベントのご案内をさせていただきます」とお声がけを行い、住所やメールアドレスなどの情報を集めるのもよいでしょう。なお、男性は記入を面倒に思う方も多いので、名刺をいただくようにすれば、あまり抵抗感を感じさせることなく集めることができると思います。

 飲食店にとってお客様とつながりを持てる情報は、確実に今後の武器になりますし、どのエリアからの来店が多いのか把握しやすくなります。

 通常は3年くらいの時間をかけて3,000人ほどのお客様情報を集めるのが一般的かと思いますが、想いをしっかり伝えて、数カ月で500人ほどを目指して集めてみましょう。この500人の顧客は、“お連れ様効果”も合わせると必ず倍以上の客数になって返ってきます! ぜひ、これを機にチャレンジしてみてください。

無料で始められる集客は「ぐるなび」におまかせ!
▼詳細はこちら
0円から始める集客アップ。ぐるなび掲載・ネット予約【ぐるなび掲載のご案内】

客数増/お得チケットと利益のバランス

 また、来店いただいたお客様にボトルキープをおすすめしたり、後日来店いただいた時に使えるお得チケットの購入をお願いしてみましょう。また、キャンペーンに合わせて、酒屋さんや、食材卸さんに仕入れ値の協力をいただき、その分をお客様還元に使うのも良いと思います。

 ただ、こういった施策を行う際には注意しなくてはいけないことがあります。以下の問題を通して考えていきましょう。

 B店は客単価4,000円、原価率35%、人件費率20%、その他店舗諸経費合計が15%でした。この時、お客様1人からいただける利益(変動利益単価)はいくらでしょう?(下の表B店-①)

通常時の変動利益単価は?

①客単価4,000円×変動利益率30%=1,200円
B店は通常、お客様1人当たり1,200円が利益として残ります。

 また、B店は「ドリンク1杯目+お通し」(通常平均800円)がその月に何度利用しても無料になる券を500円で販売し、購入していただいたお客様の情報を集めることに。すると、無料券を購入したお客様は普段月1回の来店でしたが、その月は3回来店してくれました。

 1回目の来店時の変動利益単価、および2回目以降の変動利益単価はいくらでしょうか?(下の表B店-②、B店-③参照)。

「ドリンク1杯+お通し無料券」利用1回目

 「ドリンク1杯+お通し無料券」購入後1回目の利用時は、もともと800円取れていたものが500円になります(300円値引き)。この時、客単価は単純に値引きしているだけなので、客単価4,000円-値引き300円=3,700円。
また、お客様1人に掛けるコスト=変動費単価は変わらないので、
①客単価3,700円-変動費単価2,800円=900円
1回目利用時のお客様1人から得られる利益は900円です。

 「ドリンク1杯目+お通し無料券」2回目以降の利用時は、もともと800円取れていたものが無料になるので0円(800円値引き)。この時、客単価は単純に値引きしているだけなので、客単価4,000円-値引き800円=3,200円。
お客様1人に掛けるコスト=変動費単価は変わらないので、
①客単価3,200円-変動費単価2,800円=400円
2回目以降利用時のお客様1人から得られる利益は400円になります。

 B店は通常、1人のお客様から1,200円の利益をいただいていました(表B店-①)。一方、「ドリンク1杯+お通し無料券」を販売したとき、来店1回目は900円、2回目は400円、3回目も400円で、合計1,700円となります。本来、3回の来店で3,600円(1,200円×3)の利益が残るところ、1,700円になるということは、マイナスの面もあるのです。つまり、これはお客様情報を得るための“身を切る施策”ですので、長い期間行うのは得策ではないと思います。

 これからもさまざまな施策を行う必要があるでしょうが、利益についてしっかり数字で考えながら、いつまでその施策を続けるのか考える必要があります。常態化させてしまうと大幅に客単価を落とすことにもなりかねないので、注意が必要です。

 そのほか、ボトルキープは値引き戦略ではないので、「お二人でそれぞれ2杯以上飲まれるようでしたら、ボトルキープされた方がお得ですよ」とおすすめしながら、合わせてお客様の情報を集めるとよいでしょう。

 さらに、“先売りチケット”は前もってお金を集められる点はメリットですが、単純に値引き戦略に陥ってしまうケースも多いので、利益とお客様情報獲得のバランスを考えながら実施してください。

【こちらもチェック】
売上と客数をチェック!「毎日つける、2つの数字」で店が変わる!

原価低減/1%の無駄を補うために

 C店の目標客数は1,500人、客単価3,000円、原価率34%、人件費率22%、その他店舗諸経費合計が14%、固定費は1,200,000円でした。目標客数達成時の経常利益はいくらでしょうか?(下の表C店-①参照)

目標客数達成時の利益は?

①客単価3,000円×変動費率70%=2,100円
②客単価3,000円×変動利益率30%=900円
③変動利益単価900円×客数1,500人=1,350,000円
④営業利益1,350,000円-固定費1,200,000円=150,000円

 目標客数1,500人を達成した時、C店の利益は15万円。しかし、実際に営業してみると、人員が余分に配置されていたためPA人件費が2%オーバー。加えて、食材のロスも多く発生したため、食材原価が同じく2%オーバーしてしまいました。この時の利益はいくらになるでしょうか? また、目標どおりの利益に戻すためには、何人の客数アップが必要でしょうか? 下の表C店-②を見ながら考えていきましょう。

コストが計4%オーバーした時の利益は?

①ロスが計4%出ているので、変動費は余分に4%発生し、
 客単価3,000円×変動費率74%=2,220円
②ロスが計4%出ているので、変動利益は4%少なくなり、
 客単価3,000円×変動利益率26%=780円
③変動利益単価780円×1,500人=1,170,000円
④営業利益1,170,000円-固定費1,200,000円=-30,000円

 飲食店経営では、少しの気の緩みからすぐ余分にコストがかかってしまいます。人件費は、「お客様がいっぱい来るかも」という根拠のない期待からシフトを組むことで、無駄が発生することがあります。また、食材原価も同じく、仕込みをし過ぎたり、一度に大量に仕入れすぎたりすることが余計なコストがかかる原因になります。食材に余裕があると勘違いして料理のポーションが大きくなったり、消費期限がきて仕方なく捨ててしまったりと、こちらも無駄が数字となって表れます。

 C店はコストが計4%オーバーしたことで、変動利益単価が900円から780円になり、営業利益は1,350,000円-1,170,000円=180,000円減ってしまいました。コストの無駄は利益に直結します。店長はこのことを必ず頭に入れておいてください。

 この状況で元の利益に戻すためには、失われた180,000円÷変動利益単価780円≒231人の客数増、売上にすると、客単価3,000円×231人=693,000円増を図らないといけないということです。

 現状のように来店客数が予想しにくい中では、多少お客様に迷惑をかけてしまうかもしれませんが、できるだけ少ない人数で運営し、コストを最少化する努力をしましょう。

 さらに、こういう時ですので、店の仕事やポジションを1人のスタッフが複数こなしながら、少人数で店を運営するトレーニングを行うとよいでしょう。

【こちらもチェック】
飲食店の集客・売上を落とさず、メニューの値上げをするには?~食材高騰を乗り越える!~

原価低減/メニュー数を絞る効果

 D店の目標客数は1,500人、客単価3,000円、原価率34%、人件費率22%、その他店舗諸経費合計が14%、固定費は1,200,000円でした。目標客数達成時の経常利益はいくらでしょう?(下の表D店-①)

これまでの利益は?

①客単価3,000円×変動費率70%=2,100円
②客単価3,000円×変動利益率30%=900円
③変動利益単価900円×客数1,500人=1,350,000円
④営業利益1,350,000円-固定費1,200,000円=150,000円

 ただ、メニュー数が多く、あまりオーダーされないメニューの食材にロスが発生していたので、思い切ってメニュー数を絞ることに。そこで、仕入れる食材を減らしつつ、1つの食材で作る料理のバリエーションを増やすことでメニュー数を絞り込み、食材原価を2%下げることに成功しました。

 D店の経常利益アップは、客数にするとどれくらいの増加になったでしょうか?(下の表D店-②参照)

食材原価を2%改善したときの利益は?

①食材原価が2%改善したことにより、変動費は2%下がり、
 客単価3,000円×変動費率68%=2,040円
②食材原価が2%改善したことにより、変動利益単価は2%増え、
 客単価3,000円×変動利益率32%=960円
③変動利益単価960円×1,500人=1,440,000円
④営業利益1,440,000円-固定費1,200,000円=240,000円

 これまでの経常利益150,000円が240,000円にアップしたので、90,000円の利益改善効果があったことになります。これを客数にすると、90,000円÷もとの変動利益単価900円=100人の客数アップと同じであり、さらに、売上にすると客単価3,000円×100人=300,000円上がったのと同じ効果になります。

 長年、店を運営しているとメニュー数が増えてしまい、それによりロスを引き起こしていることもよくあります。本来、メニュー数はある程度の数を決めておき、1つ増やしたら、1つなくすようにしていかないと、原価でロスが出やすい状況を生み出してしまいます。
 
 自店の運営を見直さざるを得ないこのタイミングに、原価低減に取り組んでみてはいかがでしょうか。また、食材数が減ると管理も簡単になり、そのための人件費も下がりますので一石二鳥です!

 第3回では、販促活動における店舗の数字について具体的に学びます。

集客やリピート促進は「ぐるなび」におまかせください!

「ぐるなび通信」の記事を読んでいただき、ありがとうございます。

「ぐるなび」では集客はもちろん、顧客管理、オペレーション改善、コンサルティングなど、飲食店のあらゆる課題解決をサポートしています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

▼詳細はこちらから
0円から始める集客アップ。ぐるなび掲載・ネット予約【ぐるなび掲載のご案内】