2020/08/07 繁盛の法則

独自性と柔軟性で顧客をつかむチキンバーガー専門店とは

東京・門前仲町にある「とりサンド アンマール」は、鶏肉をバンズに挟んだチキンバーガー専門店。「あげどり」か「むしどり」、バンズも選べ、カスタマイズできるのが魅力で、コロナの影響下でも健闘している。

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とりサンド アンマール

Key Point

  1. 素材にこだわったチキンバーガーを開発
  2. 好みでカスタマイズできる楽しさを強調
  3. テイクアウト販売を積極的に展開

仕事と私生活の両立を目指して飲食業で独立

 鶏肉をバンズに挟んだチキンバーガー専門店の「とりサンド アンマール」は、1つひとつ吟味した素材を、来店客が自由に組み合わせるスタイルで、オリジナリティを打ち出している。基本の「とりサンド」(イートイン710円、テイクアウト700円)は、鶏肉は「あげどり」か「むしどり」、バンズは「茶色いこうばしバンズ」か「白いもちもちバンズ」のどちらかを選び、ソースは定番4種と季節ソースの計5種から選ぶ。イートインの場合は、ドリンクセット(150円)、ポテトドリンクセット(Sポテト250円、Mポテト410円)などのお得なセットも用意している。また、大豆粉を使って糖質を約80%カットした大豆バンズで、鶏肉の「素あげ」か「むしどり」を挟んだ「低糖質メニュー」(イートイン1020円、テイクアウト1000円)も提供。注文を受けてから手作りするため、提供時間は10分ほどかかることもあるが、20~30代を中心に、近隣で働く会社員からファミリーまで、幅広い層に支持されている。客単価はイートイン、テイクアウトともに1000円。

 オープンは2017年9月で、東京・江東区福住の9坪弱7席の小ぢんまりした店舗でスタートし、2019年7月に現在の約10坪強の物件に移転した。オーナーの山口恵摩氏は、1977年江東区砂町生まれで、百貨店に5年、超多忙な広告代理店に8年勤務し、第一子の妊娠を機に退社した。仕事が大好きで、一生働き続けたいという思いが強かった山口氏は、出産後もいくつかの職場を経験したが、第二子の妊娠を機に独立開業を目指すことにした。もともと飲食業に興味があり、独立するなら食に関わる業種にしたいと考えた山口氏は、中でもパンが好きだったことから、当初は本格的なハンバーガーで勝負しようと、注目が高まってきていた高単価なグルメバーガーの有名店を食べ歩いた。その中で、今後は競争がさらに激しくなり、おいしさに加えて何か特色がないと生き残っていけないのではと感じた山口氏は、多くのグルメバーガー店にメニューとしてはあるものの、目立たない存在だったチキンバーガーに着目した。また自身の経験も踏まえ、仕事が忙しい中でも、じっくり選んだランチをしっかり食べて、体も心も充電できるような場所になれたらという想いで、いろいろな組み合わせを楽しめるチキンバーガー専門店という構想が固まった。

 レシピもすべて山口氏が考案。鶏肉は、「あげどり」と「素あげ」用は鹿児島県産の鶏モモ肉、「むしどり」用は鳥取県産の「匠(たくみ)の大山鶏」のムネ肉を使用している。茶色と白のバンズは、港区三田の「新橋ベーカリー」で、低糖質の大豆バンズは、墨田区菊川の「みんなのパン」で焼いてもらっている。レタスは、静岡県焼津市の「808(ハチマルハチ)ファクトリー」という大規模植物工場で水耕栽培されたもので、天候に左右されず、無農薬で生産されていることから選んだ。ランチ営業が主体だが、新型コロナウイルス感染症が拡大する前は21時まで通し営業する日もあり、夜はから揚げやサラダ、クラフトビールなどを気軽に楽しんだり、少人数のパーティなどにも対応していた。

おすすめの組み合わせであるあげどり、茶色いこうばしバンズ、甘辛しょうゆソースの「とりサンド」(イートイン710円)。Sポテトドリンクセット(250円)とし、ポテトをカーリーポテト(80円)に変更したもの。鶏肉の調理法、バンズ、ソースを選べるほか、トッピングや鶏肉の追加も可能。山口氏はほぼ毎日SNSでメニューや店舗の情報を発信。新規客の誘引、客層の拡大、ひいてはアルバイトスタッフの募集にも役立てている

緊急事態宣言下ではテイクアウトのみで営業

 3月から新型コロナウイルスの感染者数が急増し、全国的に緊急事態宣言が発令されそうな状況になったとき、同店では先駆けて、4月1日からランチタイムのテイクアウト販売のみに切り替えた。スタッフを感染させてはいけないという判断から、営業は山口氏と、店長であり夫である中村博氏の2人だけで行うことにした。

 テイクアウトや外部の宅配業者を利用してのデリバリーは以前から行っていたが、緊急事態宣言発令中は特にテイクアウトの需要が一気に高まり、1日に100食以上を販売する日が続いた。来店後に一人ひとりの好みの組み合せを聞いてから作り始めたのでは間に合わないため、あらかじめ電話で予約をしてもらい、来店時間は5分刻みで受け付けるようにした。また、「からあげ弁当」(並600円、大盛700円)、「チキンカレー」(並650円、大盛750円)の弁当販売も開始し、1日に約30食を販売していた。

 同店がコロナ禍でも好調さを維持してきた要因は、以下のようになるだろう。

  1. 1つひとつの素材にこだわったオリジナルのチキンバーガーを開発。
  2. お客が自分の好みでカスタマイズできる楽しさを強調している。
  3. 商品特性を生かしたテイクアウト販売を積極的に展開している。

 緊急事態宣言解除後は、6月3日から客席数を最大8席として、店内飲食も再開した。日によってはテイクアウトのみとしており、営業時間の短縮も続いている。「早く以前のように、店内でみんなで笑いながら、楽しく食べたり飲んだりできればいいなと思っていますが、まだまだ先は読めないですね」と山口氏。今後も慎重かつ臨機応変に対応していく予定だ。

とりサンド アンマール
住所
東京都江東区福住1-2-2
TEL 03-6458-8230
営業時間
火・水曜日11:30~15:00、木~土曜日11:30~14:00、17:00~21:00、日曜日・祝日11:30~14:00(変更やテイクアウト販売のみの場合あり)
定休日
月曜日