自社養鶏場直送の卵を最大限に生かすカフェとは

eggg cafe（えぐぅ～カフェ）小平本店

Key Point

1. 自社養鶏場でうま味の強い卵を生産
2. 卵の味わいを生かした商品を開発
3. 地元および遠来のお客の利便性に配慮

卵黄のみを使うプリンやふわふわのパンケーキを開発

　「たまご屋さんのカフェ」として、地元での支持を高めているのが、東京・小平の「eggg cafe小平本店」である。茨城・かすみがうらにある自社養鶏場から届く、濃厚で甘みの強い「幸せたまご」を使ったオムライスやパンケーキが主力メニューで、物販コーナーでは生卵のほか、プリン、エッグタルト、ロールケーキ、サンドイッチ類などを販売している。
　
　経営元は２０１１年設立の株式会社egggで、経営者の手塚一之氏は、小平市で別の事業を営みながら、養鶏場、カフェの運営を手掛けるようになった。当初は卵の販売から始めたが、ほとんど売れず、近所の住民に無料で配って味をみてもらったほどだった。その後、手軽に食べられて、卵のおいしさを訴求できるプリンを発売。卵黄のみを使ったコクのあるプリンで、徐々に評判を高めていった。だが、プリンが売れるようになればなるほど、大量に余ってしまうのが卵白で、これを何とかしようと試行錯誤しながら開発したのが、卵白を泡立てたメレンゲをたっぷりと使う、ふわふわのパンケーキだった。フルーツやホイップクリームがのったパンケーキブームの後押しや、テレビで紹介された影響もあり、次第に客数も増えていった。
　
　そこで、小平本店を２０１８年８月にリニューアル。細長い黒壁の２棟計80坪の建物を作り、道路側を販売コーナー、奥側を48席のカフェとし、その間に中庭を設け、10年後には「森の中のカフェ」となるように設計されている。この中庭は、天気のいい日はテラス席としても利用。またリニューアルを機に、フランスのミシュラン星付きのレストランで修業を積んだ中上義則氏を総料理長に迎え、既存の商品だけでなく、新商品や季節商品の開発に力を入れるようになった。すると、次第に遠方から来る人も増えてきたため、２０１９年から自社のワゴン車で周辺の６つの駅から店舗まで無料送迎するサービスを開始した。このワゴン車を「eggg go」と名付け、２０２０年３月から小平市内限定でデリバリーを始めたところ、４～５月の緊急事態宣言中は需要が一気に増加し、フル稼働状態となった。小平本店での客単価は、イートインが１７００円、物販が２０００円で、平日は１日に３００～４００人、土・日曜日は５００人以上が来店する。
　
　さらに２０１８年３月に「えぐぅ～カフェ国分寺店」、２０１９年７月に「えぐぅ～ベーカリー」を、ともに国分寺駅近くに出店し、現在は計３店舗となっている。

コロナ禍でもテイクアウトやデリバリーでフル稼働

　自社養鶏場では、約３６００羽の「後藤もみじ」という品種のニワトリを平飼いにしており、１日に約２８００個の赤玉を生産している。十分に運動ができる開放鶏舎で、独自配合の飼料をたっぷり与えている。濃厚なうま味を持つ黄身と、弾力のある白身が特徴で、「幸せたまご」というブランドで販売。卵は小平本店で販売するほか、オンラインショップで受注し、養鶏場からその日の朝に採れた卵を直送する通販も行っている。
　
　同店が独自の卵を使ってさまざまな商品開発や販路の拡大に努め、人気店に成長してきた要因は以下のようになるだろう。

1. 自社養鶏場でうま味の強い特徴ある卵を生産している。
2. カフェやショップで自社生産の卵の味わいを生かした商品を販売し、差別化している。
3. 地元および遠来のお客の利便性を考慮し、無料送迎、オンライン販売、デリバリーなどを行っている。

　緊急事態宣言が発令されていた２０２０年４～５月は、カフェの営業を休止。販売コーナーでは入店人数の制限などを行った。カフェメニューのテイクアウトやデリバリーの利用が急増し、以前をしのぐほどの忙しさだったという。デリバリーで「eggg go」を使用する場合は、配送料を１品当たり数十円に抑えていることもあり、リピートして注文する人が多い。また、「Uber Eats」も利用し、その場合は小平市のほか周辺地域への配送も可能。「Uber Eats」のサイトで同店を知り、初めて注文する人が増えている。デリバリー利用をきっかけに、店を訪れる人も少なくなく、新規客の獲得につながっている。

　従来から集客力が弱かった夜の時間帯を強化するため、２０２０年10月から「ディナー限定スペシャルセットコース」（２６４０円）の提供を開始した。オムライスやパンケーキに、スープ、メイン料理、ドリンクが付く。前日までの予約制で、１日20人限定だが、同時期に始まった「Go To Eat」キャンペーンに参加した効果もあり、週末はほぼ完売するほど好評を得ている。コロナ禍にあっても、郊外立地という特性を生かし、特徴のある卵と関連商品を核に、さらなる商品開発やサービスの向上に努めている。