2021/02/03 繁盛の法則

女性のリピーターをつかむ豆腐入りハンバーグ専門店とは

神奈川・鎌倉にある、豆腐を加えたハンバーグ「鎌倉バーグ」が看板の「鎌倉六弥太」。地元の豆腐店から仕入れる絹ごし豆腐を手ごねし、ふわふわした食感とあっさりした味わいが特徴。女性から支持を得ている。

URLコピー

鎌倉六弥太

Key Point

  1. 和食修業を基に豆腐入りハンバーグを開発
  2. 観光客と地元客の両方を誘引
  3. お客の反応や状況に合わせて進化

京都での修業を経て独立開業。地元で仕入れる食材を活用

 店名の「鎌倉六弥太」の「六弥太」とは、豆腐の異名の一つ。京都などでは豆腐を白壁になぞらえて「おかべ」とも呼ばれ、源義経の家臣として活躍した岡部六弥太にちなみ、そう呼ばれるようになった。
 
 JR鎌倉駅西口から徒歩1分の場所にある、豆腐を加えたハンバーグ「鎌倉バーグ」専門店。鶏と豚の合挽き肉と、地元・鎌倉の老舗豆腐店から毎朝仕入れる絹ごし豆腐を手ごねした鎌倉バーグは、ふわふわした食感と、あっさりした独特の味わいを持つ。看板商品の「鎌倉バーグ御膳」(1380円)は、鎌倉バーグ、サラダ、しらす奴、豆乳入り味噌汁などが付いた定食。さらに、「チェダーチーズ」(1450円)、「たっぷり香味野菜」(1480円) 、「和風タルタル」(1500円)など、さまざまなバリエーションを提供しており、その日に仕込んだ鎌倉バーグが売り切れ次第、閉店する。

 オープンは2012年9月。店主の田所裕基氏は、京都で和食を学んだ経験を生かし、独立・開業を果たした。1980年、神奈川・茅ケ崎生まれの田所氏は、祖母が鎌倉に住んでいたため、子どもの頃からよく鎌倉を訪れていた。高校時代に料理の道を志し、「大学は出ておきたいが、料理修業は早く始めたい」と考え、京都の大学に進学して経営学を学びながら、すぐに旅館の厨房でアルバイトを開始した。朝4時から9時頃まで、朝食準備から夜の仕込みなどを手伝い、日中は大学に行き、夕方からまた夕食の盛り付けなどを担当した。そして、在学中に調理師免許を取得し、卒業後はそのままその旅館に就職して10年ほど勤務した。

 独立するなら関東でという思いがあった田所氏は、2009年に鎌倉の豆腐料理店に転職し、店長となった。豆腐製造業者が経営する飲食店だったが、2011年の東日本大震災の影響で資金繰りが悪化し、2012年に倒産。田所氏は再就職か、独立かを模索していた中で、現物件と出合い、独立に踏み切った。以前は焼き鳥店だった12坪22席の物件で、JR鎌倉駅西口すぐの場所にあり、停車中の車両等がなければ駅のホームからも見えるほどだ。

「鎌倉バーグ御膳 鬼おろし醤油」(1450円)。粗めの大根おろしをたっぷりのせた鎌倉バーグ、サラダ、しらす奴、豆乳入り白味噌仕立ての味噌汁が付く。鎌倉バーグは、甘露しょうゆをだしで割ったものに付けて食べることをおすすめ。米は、山形産の「はえぬき」を固めに炊いたもの。プラス300円で、ミニ釡揚げしらす丼、ミニちりめん山椒丼に変更することもできる

お客の利用動機に合わせ、徐々に専門店にシフト

 開業に向け、田所氏は豆腐料理店勤務中に自ら考案した豆腐入りハンバーグをメインに据えた。また、豆腐をはじめ、肉や野菜などほとんどの食材を地元の業者から調達。オープン当初は、昼はハンバーグ御膳、夜は小料理店として単品のハンバーグや京風のおばんざい、酒類をそろえて営業していた。豆腐入りハンバーグのヘルシーさとやさしい食感が特に女性から好評を得ていき、夜もハンバーグを目当てに来店するお客が増えていった。居酒屋としての利用よりも、ハンバーグとご飯という食事利用が多くなり、おばんざいやその材料が残ってしまうのを懸念した田所氏は、ハンバーグの専門店にすることを決断。また、お客からの勧めがあり、店名の「六弥太」と、主力の豆腐入りハンバーグを「鎌倉バーグ」として商標登録した。

 鎌倉バーグは、現在は合挽き肉と豆腐が約半々の割合で、1人前は約200g。それ以外の素材は入れずに、塩、しょうゆ、サンショウなどの和風の味付けにしている。「洋食店で出されているハンバーグの作り方は知らないので、固定観念がないから作れたのかもしれません。つくねの延長線上みたいな感覚ですが、創業当初と今では作り方はかなり変わっています。いかに余分な材料を削っておいしいものを提供できるかを引き算で考えています。以前は卵も入れていたのですが、修学旅行生のグループの中に、1人だけ卵アレルギーの人がおり、鎌倉バーグを食べられないことがあったため、卵は使わないようにしました」と田所氏は説明する。現在の客単価は1500円で、平日は約50食、週末は70~80食を販売している。接客は妻のあやさんと、パート1人が担当し、調理は田所氏が1人で行うため、無理して量産はせずに、品質を維持するように努めている。

 同店が独自の鎌倉バーグの専門店として定評を得ている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 10年の和食修業を基に、独自の豆腐入りハンバーグを開発している。
  2. 観光客と地元のお客の両方を誘引できる立地を選んでいる。
  3. 商品内容や営業スタイルをお客の反応や状況に合わせて進化させている。

 昨年の緊急事態宣言発令時は、店内飲食は休止し、弁当販売のみで営業。解除後は店内での使用席数を減らして営業しつつ、弁当販売も継続している。また、同年10月からは、週末と祝日の夜のみ、完全予約制の出汁巻き玉子専門店として営業を始めたが、2021年1月に発令された再度の緊急事態宣言を受けて、当面は夜の営業を自粛。将来的には鎌倉バーグに次ぐ柱を模索しながら、リピーターに愛され続ける、堅実な経営を目指していく。

鎌倉六弥太
住所
神奈川県鎌倉市御成町13‐38 萩原ビル1F
TEL 0467-61-0680
営業時間
11:00~17:00(L.O.16:00、鎌倉バーグが売り切れ次第閉店)、出汁巻き玉子専門店17:00~19:00(土・日曜日・祝日のみ、変更の場合あり)
定休日
月曜日夜、火曜日