2021/05/28 繁盛の黄金律

Q(商品力)よりも、C(小ぎれい)とS(サービス)が大事

飲食店にとって重要な「Q(商品力)」「S(サービス)」「C(クレンリネス)」。コロナをきっかけにその重要度が変化しており、清潔感があり、丁寧なサービスをする店が選ばれる時代になっています。

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Vol.117

一条の光は見えている。もうひと踏ん張りだ

 アメリカの外食専門誌を読んでいますと、「オフ・プレミス」という言葉がしばしば出てきます。「店の外」という意味で、テイクアウトや宅配、それにドライブスルーで料理を売ることを指します。これに対して「オン・プレミス」は、イートイン、店内喫食ですね。コロナ禍にあっては、「オフ・プレミス」でどうやって売上を稼ぐか、これが外食業全体の緊急の課題になっています。

 やはりそうなると、マクドナルドやKFCは、圧倒的に強いですね。コロナをものともせず、いや、コロナを追い風にして、売上を伸ばしています。牛丼チェーンや、かつや、からやまといったチェーンも、もともとテイクアウト比率が高く、テイクアウト客の取り込みに力を入れて善戦しています。ほっともっとやオリジン弁当はテイクアウト専門店ですから、これも強いです。

 一方、ファミリーレストランや居酒屋は、もともとイートイン主体の店ですから、これは厳しい。何とかテイクアウトや宅配で売上を得ようとしていますが、特に居酒屋は、エリアによっては本業の夜にアルコールを売ることを禁じられてしまっていますから、厳しいどころの話ではありません。

 読者の中にも、居酒屋を経営されている方が少なくないと思います。コロナは第4波が襲来していて大変厳しい状況ですが、先は見えていますし、もうひと踏ん張りです。

 とにかく、店を継続させることです。生き延びれば、大復活が待っています。それまでの我慢です。

外食業は追加投資をやり続けなければならない

 イートイン主体の中でも、強い店と弱い店に分かれます。まず、繁華街型はより状況が過酷です。これはコロナ後も続きます。一方、生活圏型、つまり駅近や駅中、また郊外ロードサイドに店があるところは、落ち込みが比較的少ない。これも、コロナ後も続きます。生活圏型に外食市場が移行していることに、注目しておかなければなりません。

 もう一つ、同業態で同立地でも、集客力に差が出ています。極端に言いますと、店が小ぎれいで、客席の間隔が広い店、そして、サービス力が高い店、こういう店は、客数があまり落ちていません。これは、お客様が店を注意深く選別するようになってきたことの現れです。

 外食業の価値は、Q(商品の質)、S(サービス)、C(クレンリネス=スカッとした清潔感)の3つで決まると言われています。それは今も変わりはありませんが、順番が変わってきています。C・S・Qの順番になって、C・SがQの上位になっているのです。商品力があっても、CとSのレベルが低い店は見向きもされません。そういう時代に入ったのです。価値意識の大転換が進んでいるのです。

 これまでは、「汚くて不愛想だけど、ラーメンはうまい!」といった店が繁盛するケースもありましたが、もうそんな時代ではありません。衛生的で清潔で、心のこもったサービスをしてくれる。これが外食の出発点です。商品力がなくてもいいなどと言っているのではありませんよ。でもそれよりも、CとSが上位に位置する時代が到来したのです。この時代の変化をしっかりと受け止めないと、もはや外食の世界では生きてはいけません。

 そして、店の改装も、これまで以上に力を入れていかなければなりません。持続的な改装、リフレッシュなしに繁盛を手にすることはできません。開店した翌日から、店は古びていきます。そして確実に劣化は進むのです。毎日毎日、少しずつ競争力が落ちているのだということを、自覚しておかなければなりません。絶えざる追加投資が求められるのが、外食業というものなのです。つまり、そのための費用を、利益の中から貯金しておかなければなりません。

 それからもう一つ。撤退物件が増えている今、よりいい立地、よりいい物件への、引っ越しのチャンスです。この時に、ろくな投資もしないで、居抜きをそのまま利用するようなことをしてはいけません。「過去は完全に消す」ことです。前の店の残り香、雰囲気が残っているような店に、お客様は絶対に足を向けないものなのです。“一文惜しみの銭失い”のようなことは、やってはいけません。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。