2021/05/25 特集

好調!焼肉業態に見る これからの飲食業界 成功のキーワード(3ページ目)

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【SPECIAL INTERVIEW】株式会社1&Dホールディングス 代表取締役社長 髙橋 淳 氏/【CASE1】お肉屋さんのひとり焼肉 若江岩田駅前店

髙橋 淳
1961年東京都生まれ。1984年成蹊大学経済学部卒業後、三井物産株式会社へ入社。繊維部門に11年半在籍する。1995年に株式会社ダイリキ入社。2008年、株式会社ワン・ダイニングに代表取締役社長に就き、2016年2月からダイリキの社長も兼任。同年11月にホールディングス体制へ移行し、両社を傘下に持つ株式会社1&Dホールディングスの代表取締役社長に就任。
COMPANY DATA
1965年に髙橋淳氏の父・健次氏が鯨肉を扱う「髙橋商店」として創業。2016年にホールディングス化。傘下には、焼肉店「ワンカルビ」、しゃぶしゃぶ店「きんのぶた」など外食店127店舗を展開する株式会社ワン・ダイニングと、主に食品スーパーや商業施設の中に食肉小売店を55店舗展開する株式会社ダイリキがある。2020年には1人焼肉業態「お肉屋さんのひとり焼肉」を出店。他社にはない強みを生かした新業態で話題に。

食肉販売と飲食事業を手掛けるグループ全体のノウハウを、1人焼肉の新業態に凝縮しました

 株式会社1&Dホールディングス傘下で、西日本を中心に焼肉店「ワンカルビ」などを展開する株式会社ワン・ダイニングと、食肉販売店を展開するダイリキ株式会社。そのダイリキが昨年9月、大阪・東大阪の若江岩田駅前にオープンした「お肉屋さんのひとり焼肉」が好調だ。自社の強みを生かした新業態の開発経緯や特徴などを、代表取締役社長の髙橋淳氏に聞いた。

――まず、「お肉屋さんのひとり焼肉」の、出店経緯を教えてください。

 若江岩田のスーパーマーケットにダイリキの精肉店が出店していたのですが、2019 年にそのスーパーが閉店したのがきっかけです。常連のお客様も多かったことから、若江岩田駅近くの高架下に精肉店を出すことにしたのですが、精肉店単体でスーパーほどの集客力は望めません。そこで、自社の肉を使った焼肉店を併設することにしたのです。〝1人焼肉〞の業態にしたのは、ここ数年でお1人様のマーケットが拡大し続けていたから。扱う肉を精肉店と焼肉店で共有することで、相乗効果による集客アップはもちろん、ロスの削減にもつながります。ダイリキにとって飲食事業は初めてなので、グループ会社のワン・ダイニングが持つ飲食業のノウハウを活用しました。

――メニュー構成や店づくりでは、どんなことにこだわったのでしょうか。

 1人客がターゲットなので、「上ハラミ&ダイリキカルビ&牛タン定食」など11種類の定食を主力メニューとしました。ほか、追加オーダーを取るために、ホルモンなどの単品メニューも12種類用意。併設する精肉店と共有する厨房でカットした肉を使用することで、最もおいしく鮮度の高い状態で提供できるのが強みです。また、QRコードを活用したモバイルオーダーやセルフレジを導入することで、省人化や非接触サービスも実現しています。モバイルオーダーの導入で、提供遅れの原因になる人為的なオーダーミスや、ピーク時に「店員を呼んでも来ない」というような状況も発生せず、オーダーから3分以内での提供を実現できています。このほか、コロナ禍でのニーズを踏まえ、非接触型の検温装置や可動式のパーティションなども導入しました。

――出店後は行列ができるなど、好調が続いています。要因はどこにあるとお考えですか。

 「食肉販売のダイリキが出した焼肉店」というストーリーがお客様の期待につながったのではないかと思います。出店前は、ビジネスマンや学生の1人客がメインになると予想していましたが、精肉店をご活用いただいているシニア層やファミリーも多く、客層は幅広いです。特に、現在、コロナの影響で、スーパーなどに試食コーナーが設置できないため、焼肉店が代わりに〝肉の味を確かめる場所〞という立ち位置になっており、他の店にはない武器になっています。まさに1&Dグループとしてトータルのノウハウを凝縮した新しい業態だと感じています。1号店の成功を受けて、昨年12月には、もともと改装を予定していた「ダイリキ」の「イトーヨーカドー八尾店」(大阪)と併設する形で2号店を出店。1、2号店ともに、精肉店と焼肉店が相乗的に売上を伸ばしています。

――飲食店の経営や業態開発をする上で心掛けていること、決めていることはありますか。

 食肉を扱うプロという自社の強みをどうやったら最大限に生かせるか、ということは常に考えています。また、FC展開はせず、全店舗直営にしているのもこだわり。その理由は、店舗運営におけるスピリッツやノウハウ、方向性をスタッフにしっかりと浸透させるため。そして、セントラルキッチンを設置せず、各店舗に技術を持った職人を配置するためです。FC展開やセントラルキッチンによる効率化よりも、食材や料理、サービスのクオリティーにこだわっているので、この方針は今後も変わりません。

――店舗展開を含めて、今後の展望を教えてください。

 現在、スーパーの食料品売り場は以前と違い、単純に売るだけではなく、〝体験できる〞〝学べる〞〝楽しめる〞場所にしようという流れがあります。「お肉屋さんのひとり焼肉」の併設は、こうした動きにマッチするので、今後も既存の精肉店とセットで展開していきたい。また、ワン・ダイニングの店舗も、モバイルオーダーの導入を進めていきます。一方で、人が行う接客も大切にしていきたい。人がやらなくてもいい部分は徹底的に効率化しつつ、人がやるから価値が出るサービスや店内での加工・調理などは今後も磨き続けます。この先も、コロナ禍のように社会全体の価値基準が変わるような出来事は起こりうると思います。その中でも、自社の強みをしっかり認識し、決してぶれず、愚直に事業を展開していきたいと考えています。

【CASE1】お肉屋さんのひとり焼肉 若江岩田駅前店

精肉店を併設して、1人焼肉業態を出店。相乗効果で集客に成功!

省人化で提供の早さが向上。非接触で安全・安心も実現

 大阪・若江岩田駅近くに、2020年9月オープンした「お肉屋さんのひとり焼肉 若江岩田駅前店」。経営は食肉販売を手掛ける株式会社ダイリキで、同社が運営する精肉店「ダイリキ焼肉市場」も併設。〝精肉店が出した焼肉店〞として、行列店となっている。

全て一人用に仕切られた客席。メニュー表はテーブルに貼られている
  • 電気式の無煙ロースター。脂の多いホルモンなどを焼いても煙は出ず、換気効果も高い
  • 各卓に掲示されているQRコードからオーダー画面にアクセス。簡単に注文ができる
  • セルフウォーターサーバーを設置。スタッフのオペレーションの負荷を軽減
  • 手前に引き出せる可動式のパーティションを設置。感染予防や隣席と遮断する目隠しとして好評

 特徴は、省人化と非接触に重点を置いていること。来店客は、自動検温機能付きの受付機で番号札を取り、スタッフの案内で客席へ。客席は可動式パーティションで仕切られ、1台ずつ無煙ロースターが設置されている。注文は、モバイルオーダー(口頭でのオーダーも可能)で、会計もセルフレジで行う。全24席が埋まるピーク時でもフロア3人、キッチン2人で回しており、「スタッフは、メニューの丁寧な説明や迅速な商品提供といった業務に集中できています」と、店長の金川隆祐氏はメリットを語る。

お得感のある定食をそろえ、中でも「上ハラミ&ダイリキカルビ&牛タン定食」(写真)が一番人気

 肉は隣の精肉店でカットしたチルド肉を使うことで鮮度の高い状態で提供。部位ごとに焼肉に最適な厚みや切り込みを入れるなど、精肉のプロならではの技が光る。メニューは、一番人気の「上ハラミ&ダイリキカルビ&牛タン定食」(120g /968円〜)など、11種類の定食がメイン。幅広い客層を想定して、肉の量は3サイズ(120g 、150g 、200g )を用意している。このほか、追加オーダー用に12種のホルモンを含む単品20種、サラダや冷麺などのサイドメニュー10種をラインナップ。さらに、月ごとに期間限定メニューも打ち出して常連を飽きさせない。売上構成比は、定食が約80%、ドリンクが約6%、残りが追加オーダー分で、「お酒を飲みながらというより、食事ニーズが高く、お1人あたりの滞在時間はおよそ30分です」と、金川氏は語る。

会計は2 台のセルフレジで対応。伝票のバーコードを読み取らせて精算する

 客層は20〜30代が中心で、男女比は半々。「お1人様は5割程度で、予想以上にファミリーやカップル、友人同士など少人数での来店も多いです。家族で来ても、それぞれ自分のペースで焼けるスタイルが受けているのかもしれません」と、金川氏は分析する。

併設している精肉店「ダイリキ焼肉市場」の店内。「お肉屋さんのひとり焼肉」との相乗効果もあり、幅広い層が来店している

 加えて、精肉店と併設しているメリットも実感。「焼肉店は、いい肉を安く提供でき、精肉店では焼肉を食べた帰りの〝ついで買い〞が増えています」と金川氏。高まるお1人様ニーズを捉え、精肉店併設のメリットと省人化で、良質な肉をリーズナブルに提供し、地域の人気店に成長している。

お肉屋さんのひとり焼肉 若江岩田駅前店【大阪・東大阪】
大阪府東大阪市岩田町4-18-33
http://www.dairiki.co.jp/hitoriyakiniku/
近鉄・若江岩田駅から徒歩1 分の高架下に立地。全席がパーティションで区切られており、近隣住民を中心に獲得。精肉店「ダイリキ焼肉市場」も併設されており、帰りに購入していく人も少なくない。
店長 金川 隆祐 氏
精肉のエキスパートとして長年経験を積み、2021 年2 月から「ダイリキ焼肉市場」「お肉屋さんのひとり焼肉」の両店を統括。初の飲食業にも前向きに取り組む。

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