2021/06/25 繁盛の黄金律

売れ筋5品の注文個数と注文率を高めよう

新型コロナをきっかけに人々の外食機会が減る中、お客様に選ばれるためには、“地域で一番の店”を目指さなければなりません。また、自店の看板メニューを絶えず磨き上げる努力も重要です。

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Vol.118

地域で1店しか選ばれない時代になった

 「5本の指に入る店になろう」。これが今回のテーマです。どういうことかといいますと、ライバル店の中では圧倒的に強い店になろう、ということです。一つの業種の中では地元で一番の店になろう、ということです。

 多くの人が、「ラーメンならば、あの店」「とんかつならば、あの店」「うなぎならば、あの店」「すしならば、あの店」という特定の店を、自分の生活範囲の中に持っています。そうして、業種別にそれぞれの地域で、一番強い店が確定されます。その一番強い店になろう、ということです。

 なぜ今、そのことを申し上げるかというと、コロナ発生以降、一番強い店しか生き残れなくなったからなのです。以前ならば、「A店が一番だけれども、たまにはB店、C店も使う」という選択の幅がお客様にあったのですが、それが消えてしまいました。来店頻度が極端に落ちてしまったのですから、「A店以外は行かない」という行動につながります。これまでのように、「B店でもC店でもいいか」という選択肢はなくなったのです。

 もちろん、人それぞれ好みがありますから、A店だけにお客様が集中するというわけではありません。A店に匹敵する人気店が、同じ地域に共存することはあり得ます。しかし個々人たちにとっては、もはや選択の余地はないのです。ラーメンだったら、とんかつだったら、うなぎだったら、行く店は決まっているのです。1店なのです。その選択の対象にならない店は、もはや生きていけないということです。

 コロナも今年後半には先が見えてくるでしょうが、収束後の外食状況は全く違ったものになっているはずです。明暗くっきりなどという生やさしいものではありません。生存、存続の条件が、信じられないくらい厳しくなるということです。今までのように、「そこそこ」などという甘い生き方は、もはやできなくなるのです。

お客様は、一つの商品を目指して来店する

 1店に集中するだけではありません。1品に集中していきます。「あの店のあれ」を目指して、お客様は来店されるのです。つまり、1品です。

例えば「A店のとんかつを食べに行く」のではなく、「A店のロースカツ定食を食べに行く」という形に動機が先鋭化します。うなぎ店を目指すのではなく、「あの店のうな重の“梅”」が来店の動機になります。

 お客様は、店を意識しているのではなく、その店の1品を意識して、「どうしてもあれが食べたい」という強い衝動を持つようになります。店ではなく、一つの商品を目指して来店するのです。つまり、専門店でなければ、これからは生きていけないということです。いや、それではまだ言い足りません。単品店です。“強力単品店”でなければ生きていけないのです。

 それ以外は、余計なものです。他のメニューがあっても別に構いませんが、あることが何の強さにもならないということです。目指すべきは、絶対的に強い「この商品」です。それがあるかどうか。その1品づくりに精魂を傾けているかどうか。ここが勝負どころになります。

 いくら何でもそれは極論だと言われるかもしれません。でも、何でもあるファミリーレストランと、強い1品しかない単品店と、どちらが強いですか。あるいは、どちらが長生きできますか。後者のほうが強いに決まっているではありませんか。

 わが店が、強力単品店に向かっているか、つまり良い方向に進んでいるかを見分ける方法があります。人気メニューに注文が集中しているかどうか、を見ればよいのです。もう少し具体的に言いますと、売れ筋上位5品目の注文率が高まり、注文個数が伸びている店は、いい方向に進んでいる店です。注文の集中化が進んでいるのです。単品店に向かって進んでいるということです。

 逆に、どんどん分散化が進んでいるのであれば、その店に未来はありません。たまたま立地が良かったり、使い勝手が良かったりで、そこそこにお客がとれていても、強力なマグネット商品を持っていないのですから、お先真っ暗です。メニューはさらに増え、注文はさらに分散し、いったい何屋なのか分からない状況が深まっていくことになるでしょう。

 注文の集中化が進んでも、客数が下落しているのではお話になりません。客数が増え、人気商品の人気度がさらに高まっていかなければなりません。

 うちはどこにも負けない1品を持っていると、鼻高々の経営者がいるとしたら、これもまた危険です。人気商品といえども、日々の改良、磨き込みを怠ったら、いっぺんに人気は下落してしまいます。同じ商品を同じレベルで出し続けていると、お客様は必ず、「まずくなった」「味が落ちた」と言います。味は変えない。しかし、質は上げ続ける。これをやり続ける店だけが、「いつも変わらないおいしさだね」という評判が得られるのです。
 
 商圏内で「5本の指に入る店」。同業者ではライバルがいない店を目指してください。そして、強い1品をさらに強くし続けてください。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。