2021/07/06 繁盛の法則

地域に根差した存在を目指すフィッシュバーガー専門店とは

東京・渋谷にあるフィッシュバーガー専門店の「ペスカリコ」。刺身でも食べられる新鮮な魚を仕入れ、「絶品サメバーガー」などを提供。ドリンクにも力を入れるほか、テイクアウトやデリバリーにも注力している。

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ペスカリコ

Key Point

  1. すし職人が手作りする高品質のフィッシュバーガーを開発
  2. スペシャルティコーヒーなどドリンク類にも注力
  3. テイクアウトやデリバリーにも対応

すし職人の経験を活かして独自の商品を提供

 コロナ禍での健康志向の高まりと、テイクアウト利用を見据えた「ペスカリコ」は、フィッシュバーガー専門店という目新しさも加わり、着実にリピーターを増やしている。2020年12月プレオープンし、2021年1月正式にオープン。緊急事態宣言下では、8~22時の営業時間を20時までに短縮し、感染防止対策に取り組みながら営業を続けている。

 シェフの小宮山祟之(たかゆき)氏は、5年ほどすし職人として働いていたため、魚の仕入れ、さばき方、下味の付け方などに精通。刺身でも食べられるような魚を仕入れ、店内で丁寧に下処理し、フライにしてバンズに挟むという、こだわりのある商品を提供している。また、ポテトフライやコロッケ、マヨネーズ、ソース、サラダ用のドレッシングなども全て店内で手作りしている。

 主力商品のフィッシュバーガーは、チョウザメを使った「絶品サメバーガー」(単品1,045円、セット1,595円。イートイン時の価格。以下同)、本マグロを使用した「超贅沢マグロバーガー」(単品1,210円、セット1,760円)、「濃厚カニクリームコロッケバーガー」(単品935円、セット1,485円)など6品目で、セットにはポテトフライ、サラダなど好みのサイドメニューとドリンクが付く。また、4月からは「ふわふわ煮穴子丼プレート」「クラムチャウダーの明太スープパスタ」「大豆ミートのヴィーガンドライカレー」(各単品1,320円、セット1,650円)など、プレートメニューやパスタなども追加した。これにより、ベジタリアンの中でも魚、卵、乳製品はOKという「ペスカタリアン」や動物性の食材は一切摂らないヴィーガンにも対応できるようになった。

 ドリンクは、東京・蔵前の「リーブスコーヒーロースターズ」から仕入れるスペシャルティコーヒー豆を、アメリカ・シアトルのシネッソ社製エスプレッソマシンを使い、豆の量、挽き方、抽出時間など細心の注意を払って抽出。また、さまざまな素材にハーブやスパイス類を調合して作る「自家製ジンジャーエール」「自家製コーラ」(各550円)などもそろえている。スムージー3種(各715円)も好評で、毎朝これを目当てに立ち寄る常連客も増えている。コロナ禍の影響を受けながらの営業だが、イートインが5割、デリバリーが3割、テイクアウトが2割という売上比で、客単価はイートインとテイクアウトが1,800円、デリバリーが2,000円となっている。また、平日も週末も8~11時は、サンドイッチをメインとするモーニングメニューを提供している。

人気商品の「絶品サメバーガー」のセット(1,595円)。サイドディッシュはグリーンサラダとニンジンドレッシング、ドリンクはホンジュラス産コーヒー豆使用のオーツミルクラテ。サメは宮崎産チョウザメをゆう庵地(しょうゆ、酒、みりん、ゆずを使った調味液)で下味を付け、衣を付けて揚げたもの。四角いバンズにサメのフライ、レタス、紫キャベツ、大葉、甘ダレとタルタルソースを挟んでいる

厳しい状況にある飲食業界での雇用機会の創出にも寄与

 経営元は株式会社Orchid(オーキッド)で、同店の正式オープンに合わせて2021年1月に設立された。親会社はスマートフォン用アプリの開発や広告メディア運営、Web制作などを行う株式会社iBe Media(本社/東京都渋谷区大山町)で、社長の甲田久史氏と小宮山氏が長野・上田市の中学の同窓生だったことから、飲食業への参入が実現した。

 小宮山氏は1982年生まれで、小学生の頃から料理人を志し、22歳で早くも独立開業を果たし、現在も上田で居酒屋を2店舗経営している。両店とも店長が育ってきたことから、「自分の調理技術を上げたい。すしを勉強したい」と2015年に東京のすし職人養成学校の2カ月コースを受講し、そのまま銀座の老舗すし店に入り、一時上田に戻ったものの、再び都内に出て中目黒、築地のすし店で働いていた。しかし、コロナ禍の影響が大きかったため、小宮山氏はそれまでも親交のあった甲田氏に相談。飲食業の中でもテイクアウトやデリバリーに対応できる業態は堅調であり、良い人材も集まりやすい状況にあると考え、2人で協力して飲食店の出店を企画した。当初はカレー店という案もあったが、小宮山氏が得意とする魚を生かしたフィッシュバーガーを主力商品とする方向に絞り込んでいった。渋谷駅からも地下鉄代々木公園駅からも徒歩10分ほどかかるが、近年注目度が高まっているいわゆる「奥渋エリア」に、新築ビルの1階でまだスケルトンの状態だった物件を甲田氏が見つけ、約16坪14席で出店。また、オープニングスタッフの募集時には、24人の募集に対し約200人の応募があったほどだった。

 同店が独自性の高いフィッシュバーガー専門店として、地元での存在感を高めている要因は以下のようになるだろう。

  1. すし職人でもあるシェフが手作し、こだわりのフィッシュバーガーを開発している。
  2. スペシャルティコーヒーやスムージーなど、ドリンク類も1つの柱として確立させている。
  3. 店内飲食の制限があるため、テイクアウトやデリバリーにも対応しやすい商品を選んでいる。

 「手を抜かずにおいしい商品を提供し続け、地域に根付かせていきたいですね」と語る小宮山氏。Orchidとしては昨年から居抜き物件をもう1件押さえており、10月ごろにステーキをメインとする業態の出店を予定している。

(Text and Photo by Food Biz

ペスカリコ
住所
東京都渋谷区神山町9-5
TEL 050-3177-2800
営業時間
8:00~20:00 (変更の場合あり)
定休日
なし

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