「0秒レモンサワー®仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」を成功させたニッチ&リッチ戦略~GOSSO株式会社 代表取締役 藤田 建 氏~

好調の「0秒レモンサワー®仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」を筆頭に、さまざまな業態を打ち出しているGOSSO株式会社の代表取締役・藤田建氏。“コンテンツの魅力化”を武器にした業態開発や飲食人としての歩みを聞いた。

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更新日:2022.9.2

目次
モデルからITベンチャー、そして起業を志して飲食業へ
独立後、空間のエンタメ性や商品力を武器にした業態で店舗を展開
「0秒レモンサワー® 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」はなぜヒットしたか
従業員満足度を意識した会社運営が、結果的に成果にもつながる
年商100億円と、100億円分の「ありがとう」をもらえる会社を目指して
「リーダー×一問一答」&「COMPANY DATA」

 好調の「0秒レモンサワー®仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」を筆頭に、さまざまな業態を打ち出しているGOSSO株式会社の代表取締役・藤田建氏。大学卒業後にITベンチャー企業に就職した彼は、なぜ飲食業で起業し、どのように成功を収めたのか。“コンテンツの魅力化”を武器にした業態開発や飲食人としての歩み、これからの展望などを聞いた。

ニッチ&リッチ戦略で、100年後も人の幸せに貢献する会社にしたい

――大学を卒業した後、すぐに飲食業界に入ったわけではないですね。

 大学在学中からモデルの仕事を4~5年経験した後、専門学校を経てITベンチャー企業に入社。ここでは、Webコンテンツを魅力的に伝えるためのディレクションなどに従事し、会社からも評価を得ていました。ただ、「この仕事が根っこから好きなわけではない」とも感じるようになり、約2年で退職。もともと独立志向が強かったこともあり、起業を目指して飲食業を選びました。

 新しい挑戦の場に飲食業を選んだ理由は、昔から家族が笑顔になる「食空間」が好きだったから。小さい頃は、ファミリーレストランに家族で行くのが一つのイベントでしたし、大学生の時には、母や姉を車に乗せて、住んでいた千葉から東京・代官山にあるグローバルダイニングの店に足を運んだりもしていました。また、建築技師だった父の影響で、空間プロデュースやインテリアデザインに興味があり、一から店づくりがしてみたいと思ったことも飲食業を選んだ理由の一つです。

 ただ、飲食業は初めてなので、おしゃれな店を数多く手掛けていた株式会社ゼットンの銀座の店で修業。当時27歳でしたが、時給900円で必死に働いて店舗運営について学び、2005年、30歳の時に独立・出店しました。

1974年8月、米国・シカゴ生まれ、千葉県育ち。日本人の父とコスタリカ人の母の間に生まれ、3歳で来日。大学時代からモデルとして活躍し、卒業後デジタルコンテンツのディレクションとWeb制作に従事。27歳で飲食業を志し、2005年1号店を東京・渋谷にオープン。その後も、さまざまな業態で店舗展開を進め、2019年には「0秒レモンサワー? 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」を出店。

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――独立後は、特徴的な業態で店舗展開を進めました。

 独立1店舗目は、渋谷の雑居ビルの空中階に出店した、和食・韓国・沖縄の料理を組み合わせた創作料理店「ごっそ。」です。自分がやりたかった“大人が喜ぶかっこいい店”を追求したのですが、渋谷の若いお客様のニーズを全く捉えられず、数カ月で業態を変更することに。今思えば、“自分目線”の店づくりが失敗の原因でした。ちなみに、後に社名にもする「ごっそ。(GOSSO)」という店名は、元は「ごちそう」「うまそう」を組み合わせた造語です。

 その後、顧客目線を意識して業態開発をするようになる中で、一番優先したのが空間のエンターテインメント性でした。当時、資金が少ない中、激戦区・渋谷で集客するための“弱者の戦略”として、誰もがあっと驚く内装のポイントを作り、それをネット販促でアピールしました。シャンパンとロール寿司を売りに、カーテンに光を当ててオーロラのように見せる空間演出が特徴の「オーロラダイニング宙(そら)」などがその代表例。こうした業態を、同じビルの空中階に3~4店舗出店する超ドミナント戦略で、固定費を抑えながら徐々に業績を伸ばしていきました。

 2010年あたりからは、飲食業界のトレンドや消費者のニーズがエンタメ性から商品(メニュー)へ移っていると感じて戦略を変更。当時、ネットでの検索件数が上昇傾向にあったチーズフォンデュを売りにした「ガーデンファーム」を出店したところ、これが狙い通り繁盛店に。この頃は料理軸での業態開発がハマりました。自社のブランド数も10以上になり、東名阪(東京・名古屋・大阪)を中心にした多店舗展開も順調に進めることができました。

創業から5年ほどは、「オーロラダイニング宙(そら)」などの空間演出を軸に、2010年ころからはチーズフォンデュの「ガーデンファーム」(写真)などの料理を軸にした業態開発で人気店を輩出した

――そんな中、2019年12月に出店した「0秒レモンサワー® 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」が大ヒットしました。

 「ときわ亭」出店の背景には、その数年前から感じていた「財務体質を改善しないと、会社に将来はない」という危機感がありました。それまで当社の店舗は全て空中階にあり、お客様の8割以上がネット販促の効果で来店していました。当然、広告費が増大する中で、今後は広告費をかけなくても集客できるよう、日常使いができる路面の大衆酒場を出したいと考えていたんです。ただ、これまでとは全く違う業態をゼロから開発するのはリスクもあります。そんな折に出合ったのが仙台にあるホルモン焼き肉の店「ときわ亭」でした。

 「ときわ亭」は仙台市内で30店舗以上を展開する人気のローカルチェーン。主力商品が、東北産のホルモンを使った「仙台塩ホルモン」というニッチな料理だったことに面白さを感じ、何よりそのおいしさに惚れ込みました。そこで、オーナーの加藤栄一さんに「こんないい店を広めないわけにはいきません」と言って粘り強く交渉し、仙台以外のエリアでの店舗展開を当社で任せてもらえることになったんです。

 ただし、この業態をそのまま大都市圏に持ってきても競合の中に埋もれてしまうと考え、独自のアレンジを加えることに。それが「0秒レモンサワー」です。全卓にレモンサワー専用のサーバーを設置し、お客様がセルフで注ぐスタイルにしました。さらに「肉塊レモン牛たん」などSNS映えするメニューも加えて、レモンサワーとセットで楽しんでもらい、店を印象付けようと考えました。

 こうした戦略が成功した上に、出店直後に起きたコロナ禍で焼き肉店の換気の良さや、セルフサーバーの非接触にスポットがあたり、ヒットを後押ししてくれました。これについては、今までの会社としての積み重ねが形になったと感じます。また、「ときわ亭」が繁盛店になったことで、当社の勝ちパターンも見えてきました。それは、“有りそうで無いニッチなコンテンツを、リッチにイノベーションする”ことで、“ニッチ&リッチ戦略”と呼んでいます。仙台といえば牛タンですが、塩ホルモンという意外な食文化があるという面白さをベースに、「0秒レモンサワー」という特別感やエンタメ性のあるアイテムを組み合わせることがヒットにつながりました。これは、私がWebディレクター時代から「既存コンテンツを魅力的に伝える」ことに面白さを感じてきたということも、関係しているかもしれません。

「0秒レモンサワー® 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」は、直営・FCともに全店舗で月商1,000万円超えを記録。1号店の横浜西口店(写真)は、25坪で月商1,700万円の大繁盛店に
  • 全卓に置いたセルフのレモンサワーサーバーが「0秒レモンサワー」というキャッチ―なフレーズとともに店の代名詞的存在に
  • 全国展開に向けて新たに加えた「“肉塊”レモン牛たん」。おいしさ、ビジュアルのインパクトはもちろん、レモンサワーとの相性も良い

――会社も大きくなり、昨年から新卒採用も始めましたね。

 今でこそ、従業員満足の追求は当然だと思っていますが、起業当初は、「辞めたいやつは辞めればいい」と、店舗運営もマネジメントも気合い重視。1号店の開店前に行った2週間のトレーニングが厳しすぎて、開店当日にアルバイトが全員辞めたなんてこともありました。その後もしばらくはトップダウンで離職率も高かったですが、「飲食業とはそういうもの」と、あまり気にしていませんでした。

 ただ、会社が大きくなるにつれて、どこか満たされていないことに気づき、自分が望む会社を実現するには何が必要かを学ぼうと、さまざまな経営塾に参加。西山知義さん(株式会社ダイニングイノベーション)など、多くの先輩方からマネジメントを学ぶ中で、お客様に喜んでもらうためには、従業員が喜んで働ける環境が必要だと考えるようになりました。そこで、評価制度はもちろん、業態開発など会社の運営全般に従業員目線を取り入れるようにしました。2012年頃に改革に着手し、ここ数年でようやく目に見えるかたちで成果が出るようになったと感じます。

 その1つが会議です。スタッフ全員が同じように学び、同じ前提に立って議論を行い、どんな発言でも否定しないという文化が根付いてきました。安心して自分らしく議論ができるからこそ、イノベーションにつながるアイデアも生まれます。「0秒レモンサワー」というキャッチ―なフレーズも、社員の自由な意見の中で生まれた言葉です。

 今後、全席個室の店は作らないと決めたのも従業員満足のため。完全個室の店は従業員がお客様の笑顔を見たり言葉を交わす機会が極端に少なく、働いていて楽しくないからです。その意味でも「ときわ亭」は、お客様も従業員も笑顔になれる絶妙の業態。財務体質の改善や顧客満足と従業員満足の両立といった一つひとつの取り組みが点から線、面へと広がり、「ときわ店」の成功によって立体として立ち上がってきたという手応えを感じています。

――この1年は「ときわ亭」に集中してきました。今後の展開は?

 2021年11月までに「ときわ亭」を50店舗にします。大都市圏はほぼ目処が立ったので、今後は中核都市へと広げていく予定。「ときわ亭」には“100万人都市・仙台”というバックボーンがあるのが強み。他の地方都市にも同じようにニッチで魅力的なコンテンツはあるはずですから、商品だけを売るのではなく、その背景にある文化ごと売るような業態を開発していきたいです。さらに、「0秒レモンサワー」は、焼き肉以外に寿司などと組み合わせた業態開発など、水平展開も考えています。コロナ禍が収束したら、非アルコール業態での海外進出も目指しています。

 昨年から大変な状況が続いていますが、飲食店の価値が何なのかを深く考える機会にもなりました。その価値の一つが、私が飲食業を目指した理由でもある“家族や友人が笑顔になれる空間の提供”です。この価値を100年後も生み続けられるような企業の土台を作り、年商100億円を達成したい。そして、100億円分の「ありがとう」をいただける会社を目指していきます。

リーダー×一問一答

■経営者として一番大切にしていること
win-winを作ること

■愛読の雑誌や書籍、Webサイト
『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー 著)、SNS全般

■日課、習慣
業界研究と読書

■今一番興味があること
「0秒レモンサワー®仙台ホルモン焼肉酒場ときわ亭」の出店

■座右の銘
日々是最善

■尊敬している人
両親

■最近、注目している店舗・業態
台湾・香港・韓国のネオン系夜市業態。新しい食体験ができるから

■COMPANY DATA
GOSSO株式会社
東京都渋谷区宇田川町14-13 宇田川ビルディング6F
http://gosso.co.jp/company.html
設立:2005年
ブランド・店舗数:12業態・50店舗
従業員数:700人(社員100人)

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