2021/08/05 繁盛の法則

エジプトのストリートフードの普及を目指すコシャリ専門店とは

パスタやご飯、豆類などを合わせ、スパイシーなトマトソースをかけて混ぜて食べるエジプト料理「コシャリ」。東京・錦糸町にある「コシャリ屋コーピー」はその専門店で、さまざまなバリエーションを提供している。

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コシャリ屋コーピー

Key Point

  1. エジプトの人気料理に着目
  2. 日本人がおいしく感じるよう工夫
  3. デリバリーやネット通販に対応

同窓生との会話をきっかけにコシャリ専門店を実現

 「コシャリ」とはエジプトの代表的なストリートフードで、マカロニなどのパスタ、ご飯、レンズ豆などの豆類を合わせ、スパイシーなトマトソースをかけ、カリカリに素揚げしたオニオンスライスをトッピングした料理である。クミンなどのスパイスを使い、エキゾチックな風味とフライドオニオンの香ばしさが特徴で、具材の選び方やバランス、味付けなどは各店が工夫して、それぞれ個性がある。「コシャリを日本の食文化の1つにしたい」という目標を掲げる東京・錦糸町の「コシャリ屋コーピー」は、まだ目新しい料理の地道な普及に取り組んでいる。

 経営元は2015年9月設立のアーバンズ合同会社で、2016年6月からキッチンカーでコシャリの販売を始め、同年10月にバーの居抜き物件を使って10坪15席の現店舗をオープンした。しばらくキッチンカーと実店舗で運営してきたが、2020年2月まででキッチンカーの稼働は終了し、現在は店舗での営業に絞っている。

 同社業務執行社員CMOの柳堀源太郎氏は、1987年3月千葉生まれで、2009年に大学を卒業するとIT関係の広告代理店で6年半勤務。その後独立して会社を立ち上げたが、創業当時はまだどのような事業をやっていくかという明確な計画はなく、それまでの経験を活かしたIT関連事業を細々と始めた。半年ほど経った頃、中学時代の同窓会があり、二次会のときに「将来は何をしたいか」という話題が出た。20代半ばとなり、それぞれ社会人としての経験も積み始め、同時に迷いや不安も抱きつつあった頃だった。その中の1人が調理師学校を修了し、飲食店で働いていた石高洸司氏。「いずれは自分の店を持ちたいけれど、まだ何をやったらいいか決まっていないし、1人では不安だ」と話すのを聞いた柳堀氏は、ビビッと電気が走るような衝撃とともに、大学の卒業旅行でバックパッカーとして2カ月ほど中東を旅した時に、エジプトで食べたコシャリを思い出した。「コシャリって日本にはまだないけれど、たまに食べたくなるんだ。いっしょにコシャリ屋をやらないか」と唐突に提案したところ、「え? 何、コシャリって?」というところから話が弾み、コシャリ専門店の出店につながっていった。石高氏をコシャリ専門店の店長として迎え、店名は石高氏の愛称であるコーピーに因んで名付けた。

基本の「コシャリ」(写真右/550円)と、5種の温野菜、チリパウダー、ハラペーニョを加えた人気メニュー「温野菜チリペーニョコシャリ」(同左/935円)。ともに別添えのトマトソースをかけ、全体を混ぜ合わせながら食べる。コシャリはエジプトの代表的なストリートフードの1つで、店ごとに味が違う自由度の高い料理。日本でもいろいろなアレンジで、将来、定着する可能性があるかもしれない

日本人に合わせたレシピで豊富なバリエーションを提供

 コシャリのレシピは柳堀氏と石高氏で独自に考案。日本人が食べやすいように、ご飯の比率を約7割と多めにし、パスタはマカロニ、スパゲティ、バーミセリ(1.2mm未満の太さのロングパスタ)の3種、豆類はレンズ豆とヒヨコ豆を使っている。コシャリとは「混ぜ合わせる」の意で、別添えのトマトソースを加えて全体を混ぜて食べてもらう。さらに卓上に用意している酸味のあるソース「ダッア」、辛みのあるソース「シャッタ」を途中で適宜追加し、 “味変”して食べるのもおすすめしている。メニューは基本の「コシャリ」(550円) のほか、卵子、チーズ、肉類、野菜類、魚介類などを加えてアレンジしたメニューも約30品目そろえている。そのほか、中東を意識したサイドメニューやデザートなども用意し、ハラル認証を受けている食品も積極的に使用。客単価は1,300円だ。

 2020年からのコロナ禍においては、営業時間の短縮やアルコール類の提供制限などの要請を遵守しながら、店舗での営業を続けている。また柳堀氏はITを駆使しての情報収集を得意とし、ウーバーイーツも早くから活用してきた。デリバリーの売上比は2020年以前は5%未満だったが、2020年は15%ほどに増加。さらに、調味料製造業の免許を取得し、家庭でも簡単にコシャリを作れるスパイスセットや、オリジナルのミックススパイスのネット通販を開始し、売れ行きも好調だ。

 同店が“日本初のコシャリ専門店”を謳い、徐々に認知度を上げてきている要因は、以下のようになるだろう。

  1. エジプトで人気の料理に着目している。
  2. 日本人に合うように味わいやバリエーションを工夫している。
  3. コロナ禍以降、デリバリーやネット通販に取り組んでいる。

 本場のエジプトでは、カップ麺のように熱湯を注いで5分ほど待てばコシャリを食べられる「ティック ティック コシャリ」が2020年に発売され、すでに各国への輸出も始まっている。いち早くこの商品を知った柳堀氏は製造元と交渉し、アーバンズが日本での正規代理店になることが決定。今後、販路の開拓に取り組んでいく予定だ。また2021年7月に「コシャリ屋のれん分けプロジェクト」を公表し、コシャリ専門店の開業指導を行うという。

 「いわゆるチェーン展開のように、同じ味で同じようなお店を増やしていくのではなく、日本のラーメン店のように、いろいろな人がそれぞれの考え方で、多様な味のコシャリを広めていってほしいです。日本にはさまざまな国の料理が入ってきていますから、コシャリもその1つになることを目指しています」と柳堀氏は夢を膨らませている。

(Text and Photo by Food Biz

コシャリ屋コーピー
住所
東京都墨田区江東橋4-20-13 山田ビル2F
TEL 03-6869-2343
営業時間
11:30~15:00、17:00~20:00(変更の場合あり)
定休日
月曜日(祝日の場合は営業、翌火曜日が休業)

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