2021/08/27 繁盛の黄金律

低単価の店は、低原価でないと成立しない

一般的に、外食はF(食材費)、L(人件費)、R(家賃)が売上の70%以内に収まれば利益が出ると言われます。ただ大事なことは、最後に残る「額」。利益率だけでなく、利益高をきちんと残さなければなりません。

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Vol.120

大事なのは、粗利益率ではなく、粗利益高

 客単価の低い店では、原価率を低くしなければなりません。例えば、喫茶店、そば店、うどん店などは、例外もありますが、客単価は1,000円以下です。喫茶店などは、500円以下の店が多いですね。仮に、客単価500円で原価率が30%としましょう。粗利益率は70%です。しかし、粗利益高ではわずか350円です。100人来店しても、粗利益高は3万5,000円です。

 一方、客単価の高い店はどうでしょう。ここに客単価5,000円のステーキ店があったとします。同じく原価率30%ですと、1人あたりの粗利益高は3,500円になります。10人来店すれば、粗利益高は3万5,000円になります。このステーキ店が、原価率50%でやったとします。超お値打ち店ですね。しかし、1人あたりの粗利益高は2,500円になります。15人来店すれば、粗利益高は3万7,500円になります。

 先の喫茶店は、100人の来店でようやく3万5,000円の粗利益高を上げることができたのに対して、このステーキ店は50%の原価をかけながら、15人の来店で3万7,500円の粗利益高を稼ぐことができるのです。

 別の見方をしますと、客単価の低い業態は、低原価でないと成立しない、ということになります。残った粗利益高の中から、人件費、家賃、水光熱費などの費用を支払わなければならないのですから、低客単価で高原価率というビジネスは、最終利益が取りづらく、成立させることが難しいのです。

 それから、外食業は水道・光熱費が高いという特徴があります。他の業種では考えられないようなコストがかかります。一般的には8%と言われますが、スープを店で作り続けているラーメン店などは、ガス代だけで売上の10%を軽く超えてしまいます。

チェーングループの上の価格帯で勝負すること

 低単価でも低くない原価率で成立する方法(ビジネス)が1つあります。それが、ファストフードですね。テイクアウトと客席の高回転で、客数→売上→利益を確保するビジネスです。ハンバーガー店にしても、フライドチキン店にしても、ドーナツ店にしても、その本質は物販業です。物販業ですから、売れる時はチャンスロスなしで、とことん売れる、という特徴があります。

 イートインの部分だけを見ると、一見、外食業のように見えますが、売上の大きな部分は、テイクアウトかドライブスルーや宅配によって構成されています。喫茶店でも、ドトールコーヒーショップやスターバックスなどのカフェチェーンは、ファストフードだということですね。つまり、本質は物販業だということになります。

 立ち食いそばも、ファストフードですね。うどんの丸亀製麺もファストフードです。となると、個人経営の喫茶店、そば店、うどん店、いずれもこういうファストフードグループとまともに戦ってはいけないということです。彼らよりも価格ゾーンを上に引き上げ、粗利益高をしっかり稼ぐ利益構造を初めから持っていなければなりません。同じ土俵で戦ってはいけないのです。

 そうなると、値段は高いのですから、価格競争力は当然下がります。それを、何によって埋めるか。ここが勝負どころとなります。一般的には、差別化という言葉が使われますが、ファストフードのような物販型の業態とは違った、己の店の武器を磨き込まなければなりません。素材、調理技術、サービスの質、店内空間と、差別化の要素は複数ありますが、その組み合わせで、わが店の特徴を前面に出す必要があります。

 物販型よりは低原価率で戦わなければいけないのですから、独自のお客様を獲得するためには、よほどの努力(武器の磨き込み)が必要です。でも、一番力コブを入れなければならないのは、やはり商品ですよね。物販型と同じレベルの商品を出していたのでは、とても商売としては成立しません。コーヒーにしても、そばにしても、うどんにしても、低原価で提供するグループが存在する領域で「やや高」の商売をするのが、一番難しいのです。しかし、「やや高」を好むお客様は必ずいます。そのお客様が強く求めるものは、「高品質」「本物」です。

株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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