2021/09/02 繁盛の法則

カジュアルな雰囲気で本格的な料理を提供する「ネオ町中華」とは

東京・代々木上原にある「REI」は、モダンな明るい雰囲気を演出し、質の高い中国料理をリーズナブルに提供。カジュアル過ぎず高級過ぎない「ネオ町中華」を打ち出し、リピーターを増やしている。

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REI(レイ)

Key Point

  1. 高級店で培った技術を生かした中国料理を提供
  2. 明るく開放的な雰囲気で気軽な来店を誘引
  3. 精鋭メンバーで運営し、質の高い料理と接客を実現

調理師専門学校で中国料理の面白さ、おいしさを実感

 中国料理店というと、パーティーや宴会などにも対応する高級店と、街場のカジュアルな大衆店に二分される傾向にある。大衆店は近年「町中華」とも呼ばれ、地元の常連客に愛され、堅調な営業を続けている店も多い。東京・代々木上原に2020年8月にオープンした「REI(レイ)」は、高級店で修業を積んだ高島泰弘氏がオーナーシェフとしてクオリティーの高い料理をリーズナブルな価格で提供。「ネオ町中華」ともいうべき路線を打ち出し、着々とリピーターを増やしている。

 小田急線の代々木八幡駅と代々木上原駅のほぼ中間、人通りの多い商店街に位置し、ガラス張りの入り口で店内はモノトーンを基調とした明るくモダンな内外装が目を引く。店舗規模は17坪弱23席。

 高島氏は1984年山梨生まれで、高校卒業後に東京・新宿の調理師専門学校に進んだ。当初は高校時代にテレビドラマなどで見た西洋料理のシェフへのあこがれが強かったが、専門学校で中国料理を学ぶと、そのおもしろさ、おいしさに引かれ、修了後は中国料理に進んだ。まず新宿の京王プラザホテル内の「南園」で4年、次に世田谷の「火龍園(ファンロンユェン)」に移り、世田谷店と六本木店に計7年弱勤務した。その後、六本木のグランドハイアット東京内の「チャイナルーム」に3年勤めながら、独立への意志を固めていった。しかし、人手不足だった「火龍園」から「料理長をやってくれないか」と依頼され、開業するまでの間であればと引き受けることに。世田谷店の料理長を2年務めながら、物件探しも本格的に開始した。

 上京後、代々木上原周辺に住むことが多かった高島氏は、街の雰囲気や住民に好感を抱いており、開業するならこの近辺でという思いが強かった。現物件は、2019年9月にすし店が撤退して空いている状態で見つけたが、造作は和風のままで、家賃なども高く、いったんは見送ることに。しかし、2020年2月にもう一度見に行ったところ、まだ空いており、家主が新たな借り手が入りやすいようにと、スケルトンに戻していたため、全国に初の緊急事態宣言が発令されていた4月に契約に踏み切った。当時は引き止める人もいたが、緊急事態宣言で感染を抑え込み、高温多湿の夏になればウイルスの活動も弱まるのではないかという見方もされていたため、高島氏は何とかなるのではないかと判断。順調に行けば6月には開店できる予定だったが、資材や機材の調達に遅れが生じ、8月にオープン。昨年秋はGo Toキャンペーンの影響などもあり、比較的順調なスタートを切ることができた。

人気商品の「よだれ鶏“REIスタイル”」のランチセット(1,500円)。ご飯、ザーサイ、スープ、杏仁豆腐が付く。鶏肉は高島氏の出身地である山梨産「信玄どり」を使用し、やや低めの60~70℃で加熱し、しっとりと仕上げている。シーズニングソース、黒酢、トウガラシ、自家製ラー油で味付けし、中国産ピーナツスナック「ピリパリ唐辛子」を細かく砕いてふりかけ、食感にアクセントを付けている。右は追加で注文できる「特選点心2個」(+400円)で、大葉と鶏の湯葉巻きとコーン入りエビ蒸しギョーザ

モダンな印象の店名に込めた「新たな時代の始まり」の意

 高島氏が主に携わってきたのは広東料理だが、「チャイナルーム」では点心や四川料理も学ぶことができた。独立後は中華の代表的なメニューをそろえ、そこに独自のアレンジを加えたり、盛り付けを工夫することでオリジナリティーを表現している。また開業に向けては、「チャイナルーム」で共に働き、青山の「エッセンス」に移っていた河野廉士氏と、「火龍園」六本木店での同僚で、神奈川・鎌倉の「イチリンハナレ」に勤務していた石井瑞紀氏に声をかけ、2人とも快諾。もう1人のスタッフを加えた計4人の精鋭メンバーで稼働しており、料理も接客も高いクオリティーを維持している。

 ランチは「よだれ鶏“REIスタイル”」「四川麻婆豆腐」(各1,500円)などのご飯、ザーサイ、スープ、杏仁豆腐が付く定食類、「タンタンメン」(1,600円)などを提供しており、客単価は1,800円で、1日40~50人が来店している。夜は、「エビマヨネーズソース」(1,400円)、「香港式 鯛の強火蒸し」(1,800円)の一品料理のほか、「ショウロンポウ」(500円)、「焼きギョーザ」「水ギョーザ」(各900円)などの点心、「ネギラーメン」(1,400円)、「牛肉と水菜のチャーハン」(1,800円)などの麺・飯類もそろえており、客単価は5,000円。アルコール類の提供が再開できれば、客単価は7,000円ほどになり、客数も回復すると予想している。

 同店のカジュアル過ぎず、高級過ぎずといった独自のスタンスが、界隈で受け入れられている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 高級店での経験を生かし、本格的な料理を提供している。
  2. 店内は明るく開放的な雰囲気にし、気軽に来店できるようにしている。
  3. 4人の精鋭メンバーで稼働し、メニューおよび接客のレベルが高水準である。

 店名の「REI」は、高島氏が「南園」時代にあこがれていた香港出身のシェフと、早朝に生まれた自身の息子の名前が共に「黎明(れいめい)」で、夜明け、新しい時代の始まりという意味を込めながら、モダンな印象にするためにローマ字書きにしたものだ。

 「オープンして1年が過ぎ、増えてきたリピーターの方たちを大切にしつつ、新規のお客様も開拓していきたいですね。同時に、スタッフのみんなと楽しく働けることも重視しています。笑顔と初心を忘れずに、常に真面目にやっていけば、それがお客様にも伝わるのではないかと思っています」と高島氏は述べている。

(Text and Photo by Food Biz

REI
住所
東京都渋谷区元代々木町10-8 関ビル 1F
TEL 03-6416-8803
営業時間
11:30~14:30(LO.14:00)、17:00~20:00(LO.19:30、変更の場合あり)
定休日
日曜日

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