2022/01/21 特別企画

飲食店の無断キャンセル被害を減らしたい…! 防止テクと発生後に対応できること

飲食店にとって、予約の無断キャンセルは死活問題です。ここ数年では、被害にあったお店がSNSで情報発信し拡散され、その日のうちに全国ニュースになることも珍しくなくなりました。無断キャンセルの現状と発生させない防止策、万が一発生してしまった時の被害を最小限にする対応策について考えてみます。

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更新日:2023.11.30

飲食店にとって死活問題の「無断キャンセル」。しっかりとした対策で回避&被害を最小限に!

予約していたにもかかわらず、店に連絡せずにそのまま来店しない「無断キャンセル」。無駄になった食材費や人件費などが飲食店にとって多大な負担となり、被害額は年間約2,000億円にものぼる。その原因としては、単純な勘違いのほかに、スマートフォンや予約サイトが普及したことが関係しており、「とりあえず予約」が増えたり、ネット予約のポイント狙いの悪質なものも増加。また、飲食業界にキャンセル料を徴収する習慣が根付いていないことで消費者が「飲食店の予約は無断キャンセルしても大丈夫」と思わせてしまっていることも一因といえる。近年では悪質な無断キャンセルがニュースで報じられるようになり、刑事事件に発展するケースも出てきた。飲食店の防止策としては、キャンセルポリシーの明示や電話・メールでの念入りな確認、事前決済の導入、予約補償サービスの活用などがある。被害を食い止めるためにも、対策は万全にしておきたい。

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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目次

年間約2,000億円! 飲食業界が被る無断キャンセルの被害
 ・テイクアウトの無断キャンセルも増加
 ・飲食店の3つの損害

ユーザー側の原因と、飲食店側の原因を考える

 ・スマートフォンの普及や予約ツールの進化と多様化
 ・ネット予約の「勘違い」による無断キャンセル
 ・お客側が請求を恐れて無断キャンセルするケース
 ・ネット予約のポイント狙い
 ・店がキャンセル料請求による悪評を恐れてしまう
 ・無断キャンセルの対応に時間を割けない
 ・無断キャンセルをした相手の特定が難しい

大学生サークルの無断キャンセル事件などが、飲食店の被害に光を当てるきっかけに
 ・100人の宴会予約の無断キャンセルによる甚大な被害
 ・2016年春の大学サークルによる無断キャンセル事件
 ・2019年の事件では業務妨害による逮捕者も

罪状で言うと、民法では債務不履行で賠償請求が可能
 ・民法では「債務不履行」
 ・場合によっては刑法で罰せられる可能性も
 ・損害賠償として「予約していたコース料金全額」などを請求可能
 ・損害賠償を請求するには、内容証明郵便の送付が必要

【対策】事前&事後での対応で無断キャンセルの被害を最小限に
 ・繰り返しの電話確認
 ・SNSによる自動連絡
 ・キャンセルポリシーの明記
 ・キャンセルの連絡がしやすい仕組みの整備
 ・事前決済サービスの活用
 ・弁護士が代行でキャンセル料を回収するサービス
 ・予約サイトがキャンセル料を補償するサービス

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年間約2,000億円! 飲食業界が被る無断キャンセルの被害

近年、飲食業界の「無断キャンセル」が社会問題になっている。経済産業省が2018年11月に公表した「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」によると、 無断キャンセルが飲食業界全体に与えている損害は年間約2,000億円に達し、飲食店の予約全体の約1%を占めている 。予約の2日前までに生じるキャンセルも加えると発生率は6%以上となり、被害額は約1.6兆円にのぼると推計され、非常に深刻な問題になっている。

テイクアウトの無断キャンセルも増加

コロナ禍以降は、テイクアウトに力を入れる飲食店が増加した。それに伴い、テイクアウトで注文を受けたのに、時間通りに取りに来ないという無断キャンセルも増加。注文を受けて作った料理や容器代、人件費が無駄になってしまい、大きな損失になっている。

飲食店の3つの損害

無断キャンセルによって生じる飲食店の損害は主に、

①食材などの材料費
②待機していたスタッフの人件費
③予約で席を埋めていたことによる機会損失

の3つだ。

無断キャンセルをされた場合、特にコース予約においては用意していた食材を他の注文で埋め合わせることが非常に難しくなり、日持ちしない生ものは廃棄しなければならない。仕込みや待機時間に必要な人件費もかかるほか、時間を過ぎても予約客が来店した時のために席を空け続けることが多く、数時間にわたり他の客を入れられないデメリットは大きい。事前にキャンセル連絡があれば別の客の入店を促せたかもしれず、無断キャンセルによる機会損失は計り知れない。

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ユーザー側の原因と、飲食店側の原因を考える

では、なぜ無断キャンセルが起こってしまうのだろうか。その背景には、飲食業界ならではの課題や、現代特有の消費者心理が関係している。具体的に無断キャンセルが起こる主な理由を見ていこう。

スマートフォンの普及や予約ツールの進化と多様化

無断キャンセルが増えた理由の1つが、スマートフォンの普及だ。時間を問わず手軽に予約できるようになり、予約へのハードルが低くなったことは飲食店にとってよい面もあるが、デメリットもある。当日の天候や気分を理由に行くのを止めたり、「同じ日時に複数予約しておいて、当日相手の好みや気分に合わせて店を選ぶ」といった、店の都合を考えない予約をする人も増えている。

さらに、店のホームページや飲食店検索サイトなど、予約ツールが増えたことも関係している。「とりあえず、いくつかの店で人数分の席を確保しておこう」と複数のツール経由で予約した結果、自分がどのツールから予約したのか分からなくなり、結果的に無断キャンセルにつながってしまうこともある。

ネット予約の「勘違い」による無断キャンセル

また、ネット予約では、消費者の勘違いによる無断キャンセルも多い。「キャンセルの手続きをしたはずが、実際はできていなかった」「入力した日時が間違えていた」「リクエスト予約(店がユーザーに連絡・確認をした後に成立する予約)で、予約が成立したにもかかわらず、予約成立のメールを見逃して予約されていないと勘違いした」といったケースがある。

お客側が請求を恐れて無断キャンセルするケース

加えて、「当日、急な仕事が入ってしまった」「人数が足りなくなった」などの理由で店に行けなくなった人が、キャンセル料を支払いたくないという思いから、店に連絡をせず、無断キャンセルするという身勝手なケースもある。特に初めて予約した店の場合、罪悪感もなく、安易な気持ちで無断キャンセルするケースが問題視されている。

ネット予約のポイント狙い

このほか、行く気がないのに、ネット予約のポイント獲得を狙って無断キャンセルをする悪質なケースも確認されている。予約をするとポイントが付く飲食店検索サイトでは、キャンセルがあった場合に、システム上でキャンセル処理を行えばポイント付与は無効になるが、店がうっかり処理を忘れてしまうと、来店していないのにポイントだけが付与されることがある。これを狙って、最初から行くつもりのない予約を入れる悪質な消費者がいる。現状、多くの店がキャンセル料を設定していないこともあり、消費者にとって無断キャンセルにリスクがないことから、ポイント稼ぎのために悪用されてしまっているのだ。

店がキャンセル料請求による悪評を恐れてしまう

また、飲食店のスタンスも無断キャンセルを助長しているという捉え方もできる。欧米では飲食店がキャンセル料を徴収する習慣が根付いているが、日本では未だに定着していない。ホテルや航空会社のようにキャンセルポリシーと料金をあらかじめ明示しておいて徴収できればいいが、飲食店では明示していないケースが多い。キャンセル料を請求することは飲食店の正当な権利だが、「融通のきかない店」「客を大事にしない店」などというイメージが付くことを恐れて、キャンセル料を請求しない店も多い。しかし、この姿勢を続けてきた結果、「飲食店は無断キャンセルしても問題ない」と消費者に思われるようになってしまったともいえる。特に近隣の企業や大学など、つながりが深い人に無断キャンセルされてしまった場合、これまでの関係性を壊したくないという思いもあり厳しい対応ができないのが現状だ。

無断キャンセルの対応に時間を割けない

飲食店がキャンセル料を請求しない理由として、シンプルに「忙しい」という理由もあげられる。多岐にわたる日々の業務の中で、飲食店は無断キャンセルの対応になかなか腰を据えて取り組むことができない。営業時間中にスタッフが予約客に連絡を取り、キャンセル料を請求するという一連の流れには多大な時間と労力がかかる。結果的にキャンセル料を徴収するまでに至らず、泣き寝入りせざるをえないケースが多いのはこのためだ。

無断キャンセルをした相手の特定が難しい

ただ、仮に飲食店がキャンセルポリシーを明示して、キャンセル料を徴収しようと本腰を入れても、電話予約の場合、「当日に連絡がつかなくなった」「電源が切られていてつながらない」「着信拒否をされている」などの理由で相手とコンタクトを取れないケースも多い。さらに、予約時に氏名や連絡先の入力が必須なホームページや予約サイト経由の予約であっても、そもそも嘘の情報を入力されている場合は、キャンセルした人物を特定するのが難しい。

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大学生サークルの無断キャンセル事件などが、飲食店の被害に光を当てるきっかけに

これまで上げたように、悪質な無断キャンセルも増えており、飲食店の被害は深刻なものとなっている。最近ではその悪質性と注目度の高さから、ニュースで取り上げられることも多い。実際にどんな事件や被害があるのか、一部を紹介しよう。

100人の宴会予約の無断キャンセルによる甚大な被害

経済産業省の「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」では、無断キャンセルの具体的な被害例が紹介されている。中でも甚大な被害は、100人の宴会予約が無断でキャンセルされ、食材費や廃棄費用で多額の赤字が発生してしまったケースだ。無断キャンセルによって得られるはずだった利益がなくなるばかりか、食材費や人件費と光熱費、さらには廃棄費用もかかるとなれば、通常営業では取り戻すことが難しい多大なダメージを受けることになることが明るみになった。

2016年春の大学サークルによる無断キャンセル事件

2016年4月、大学生のサークルによる50人規模の無断キャンセルがインターネット上で話題を集めた。当日、大学近くの居酒屋の従業員がTwitterで「50人で予約していたのに、ばっくれ。用意していた食材が無駄になりました。当日から連絡が取れず、キャンセル料もいただいていません」とツイートした(既に削除済み)。

実際には、前年末に80人の予約が入っていたが、前日にサークル側から「30人に変更したい」と連絡があったという。店側は突然の申し出に「50人までなら」と譲歩していたが、当日本人たちは現れず、無断キャンセルとなり10万円以上の損失となった。最終的には話し合いで示談となったが、この騒動はテレビや新聞でも報じられ、飲食店の無断キャンセルの実態について多くの人が知るきっかけとなった。

2019年の事件では業務妨害による逮捕者も

2019年11月、複数の居酒屋に団体予約をして無断キャンセルをした50代の男性が、偽計業務妨害容疑で逮捕された。男性は偽名で、ある店舗に飲み放題付きのコースを17人分(計22万1,000円分)を予約したが、これを無断でキャンセル。しかも、ほかの系列店4店舗にも同じ日に無断キャンセルを行ったという悪質さから逮捕に至った。無断キャンセルは、場合によっては刑事事件に発展する可能性もあるということを広く知らしめることになった。]

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罪状で言うと、民法では債務不履行で賠償請求が可能

故意やうっかりも含めて日々起こる無断キャンセル。では、無断キャンセルはどのような罪に問われるのだろうか。

民法では「債務不履行」

民法第415条では「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる」と、債務不履行による損害賠償について定めている。債務不履行は無断キャンセルにも当てはまる。双方で取り決めた契約を破られて損害を与えられたとして、店は客に対して損害賠償を請求することができる。

場合によっては刑法で罰せられる可能性も

先ほど紹介した2019年11月の無断キャンセル事件(複数の店舗に故意の団体予約をして無断キャンセルした男性が逮捕された事件)のように、著しく業務を妨害したと認められた場合は「偽計業務妨害罪」として刑事事件に発展する可能性がある。偽計業務妨害罪は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。あまりに悪質だと考えられる場合は、警察への通報を検討したい。

損害賠償として「予約していたコース料金全額」などを請求可能

無断キャンセルした人を債務不履行で訴えた場合、損害賠償を請求できる。コースを予約していた場合は、コース料金の全額を請求できるが、用意していた食材をほかの来店客への料理に使用した場合は、その分は差し引かれる可能性が高い。一方で、席の予約だけだった場合の請求は、平均客単価の5~7割程度を請求額の目安と考えるとよいだろう。

損害賠償を請求するには、内容証明郵便の送付が必要

損害賠償請求を行うには、相手の住所に内容証明郵便を送る必要がある。この段階で支払いがあればいいが、相手から何のリアクションもなければ、支払督促または少額訴訟を行うことになる。それでも反応がなければ差し押さえを実施することになるが、これらの一連の手続きには多大な労力がかかるため、弁護士に依頼したほうがスムーズに進めることができる。

【対策】事前&事後での対応で無断キャンセルの被害を最小限に

無断キャンセルによって生じた損害賠償の請求には多大な手間や費用が掛かるため、損害の金額次第では回収してもトータルするとマイナスにしかならない場合もある。まずは無断キャンセルを防ぐ強固な仕組みを作り、できるだけ予防に努めることが大切だ。では、具体的にどんな対策・対応が効果的か見ていこう。

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繰り返しの電話確認

まず、基本的な無断キャンセル対策としてやっておきたいのが、事前の電話確認だ。予約を忘れて、あるいは勘違いでうっかり無断キャンセルとなるケースを防ぐためにも、前もって店から電話で日時や内容の確認を行うことが大切。予約の際に「予約日までに確認のご連絡をします」と伝えておくとよいだろう。直接、電話で会話をすることで、無断キャンセルへの心理的なハードルを上げることもできる。

事前の電話確認をする余裕がない店舗のために、事前電話確認の代行サービスも登場している。数日前から予約客に電話連絡を行い、日時やメニュー、人数変更の有無を確認してくれるので導入を検討してもよいだろう。

SNSによる自動連絡

電話での事前連絡以外に、LINEなどのSNSを活用して、予約客に日時や予約内容、店の場所をリマインドする方法もある。電話のように時間を取られることもなく、うっかりが原因の無断キャンセルも防げるので活用したい。

キャンセルポリシーの明記

こうした事前連絡に加えて、予約を受ける段階で、キャンセル料が発生する旨をしっかり説明しておくのも重要。ホームページや飲食店検索サイトなどに「キャンセルの場合は前日までに連絡してください。当日キャンセルの場合はキャンセル料金が発生します」などと、明記しておこう。また、電話予約の場合は口頭でも伝えたい。

さらに「予約時間から○分が経過した場合は自動的にキャンセルとなります」と明記しておくことで、万が一、無断キャンセルになっても何時間も待ち続けることなく、機会損失を極力防ぐことができる。

キャンセルの連絡がしやすい仕組みの整備

次に、キャンセルの連絡がしやすい体制を整備することもポイント。事前にメールを配信してキャンセル時の連絡先を明記しておくなど、キャンセル連絡のハードルをできるだけ低くしておくことが重要だ。こうしておけば、「キャンセル時にどこに連絡すればいいかわからず当日になってしまった」というケースを防ぐこともできるはずだ。

事前決済サービスの活用

また、無断キャンセルを防ぐために、他業種にならって事前決済サービスを活用する方法もある。予約獲得のハードルは少し高くなるが、「とりあえず予約しておこう」と考える人が減り、無断でキャンセルされても、食材費などの損失はカバーできる。予約時にクレジットカードを登録するサービスを導入するのも有効だ。

これに関連して、ネット予約時に、コース料理の料金や入場料という形で、一定額の支払いを求める店もある。キャンセルした場合、この金額は返金されない旨を明記しておくと、無断キャンセルの抑制にもなり、損失も抑えることができる。また、貸切や大人数での予約の場合は、あらかじめデポジット(仮払金)を受け取る仕組みを設けて損失を防ぐ方法もある。

弁護士が代行でキャンセル料を回収するサービス

それでも無断キャンセルが発生してしまった場合、多忙な店舗運営の合間に相手への連絡や徴収活動を行うことは簡単ではない。そこで、対応に手が回らない飲食店に代わって、弁護士がキャンセル料を回収するサービスも登場している。無断キャンセルが発生すると、弁護士が客の携帯電話番号にショートメールで督促を送り続け、キャンセル料を回収するというものだ。

予約サイトがキャンセル料を補償するサービス

このほか、予約サイトによる「予約補償サービス」も登場している。無断キャンセルが生じた場合に、予約サイト側が補償金を店舗側に支払うことで、損害を極力抑えることができるというものだ。補償の条件は予約サイトごとに異なるので、よく確認した上で活用したい。

ぐるなびでは飲食店の無断キャンセルを補償するサービスを用意してございます

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