好調「やっぱりステーキ」を生んだ義元社長の脱・固定概念の発想力

沖縄・那覇で「やっぱりステーキ」を創業し、全国に80店舗を展開する株式会社ディーズプランニング。さまざまな職種を経て独立した代表取締役の義元大蔵(だいぞう)氏に、これまでの歩みや業態開発について聞いた。

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更新日:2024.1.24

大事なのは、“発想”をどう“形”にしていくか。飲食業はその連続だから面白い

 全国に80店舗以上を展開する「やっぱりステーキ」を運営する株式会社ディーズプランニング。代表取締役の義元大蔵(だいぞう)氏は、飲食業一筋の人ではない。18歳から10年間アメリカに留学した後、飲食コンサルタントや物流、広告、食品卸、ITと多種多様な業種を渡り歩き、40歳で独立。その経歴とマルチな才能を生かし、飲食業の固定概念に捉われない合理的な業態開発で「やっぱりステーキ」を全国区のステーキ専門店に成長させた。そんな義元氏に、独立までの歩みと業態開発の考え方、コロナ禍での戦略、今後の目標を聞いた。

目次
10代で渡米。帰国後、コンサル、物流、広告などを経験
独立後、「やっぱりステーキ」がいきなりヒット!
コロナ禍にも好機を見出し、東京進出&30店舗を出店
次の一手は「焼肉店」「ポテト専門店」。そして海外へ
「リーダー×一問一答」&「COMPANY DATA」

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――さまざまな業界で活躍されてきましたが、飲食業で独立した理由は?

 最初から飲食業を志したわけではありません。海外にあこがれ、18歳でアメリカに留学。10年後に帰国し、地元・沖縄で飲食コンサルティングの会社に入り、店の立ち上げをいくつも手掛けました。そんな中、その会社が、当時沖縄で数多くの事業を展開していた会社に吸収されることになり、私も移籍することに。そこで飲食業や国際物流業、広告代理店などグループ傘下の会社を渡り歩きました。時には未経験の分野をいきなり任されることもありました。その後、別の食品卸企業やIT企業にも在籍。幅広い分野で経験を積みました。

 このときの経験のすべてが、今に生きています。広告代理店では自動車メーカーを担当したのですが、売るものが「車」か「食事」かの違いだけで、販促という意味では飲食業でも応用できるノウハウがたくさんあります。周囲から「飲食業らしくない発想をする」とよく言われるのも、こういう経歴のせいかもしれません。

 独立は20歳のときからの目標でした。飲食業にしたのは、仕事の経験として飲食店の立ち上げが一番多かったこと、食べることやお酒を飲むことが大好きだったことから。どの仕事でも言えることですが、大事なのは“発想”を“形”にすること。ここが事業の一番面白いところで、飲食業はその連続です。

1975年2月、沖縄・那覇市生まれ。18歳で語学留学のため渡米し、27歳で帰国。複数の企業で、飲食、広告、物流、IT、卸しなど、さまざまな事業に携わる。2015年3月に独立し、「やっぱりステーキ」を大ヒットさせ、全国に80店舗以上を展開。そば、唐揚げ業態も手掛け、焼き肉、ポテト業態も構想中。

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――独立後、すぐにブレイクした「やっぱりステーキ」は、どんな発想をどう形にしたのでしょうか。

 沖縄には以前からお酒を飲んだ後、シメにステーキを食べるというローカルな習慣がありました。ところが沖縄のステーキ店が提供するのは、脂が乗った薄い大判の肉。これでは胃がもたれてしまいます。そこで、赤身の塊肉を気軽に食べられたらと考えたわけです。アメリカ留学中に赤身ステーキに親しんだ記憶も背景にありました。

 まず、ステーキに使う肉を決めるべく、いろいろな部位を試した結果、ミスジの食感とうま味に一目惚れしました。ただし、ミスジは筋を取る処理に手間がかかり、1頭の牛から取れる量も少ないため、メインで提供するステーキ店はありませんでした。そこで「このミスジステーキをご飯・サラダ・スープ付きで1,000円で提供すれば必ず売れる」と考えたんです。こうして具体的になった“発想”を、どう“形”に落とし込むか、が次の仕事です。ミスジなどこだわりの部位をメインにすると、食材コストが売上比率で50%近くになるので、その分、できるだけ人件費率を抑えなくてはいけません。そこで、徹底的に引き算をしました。当時ステーキ専門店では珍しい券売機を導入し、ご飯とサラダ、スープはセルフサービスに。また、一般的なステーキによくある付け合わせの野菜を一切置かず、溶岩石プレートに肉だけを乗せてレアの状態で提供。これにより、調理オペレーションの負荷を軽くすると同時に、焼き時間が短いので提供スピードを上げることもできました。これなら2~3人のスタッフで回せますし、熟練の技も要りません。「ステーキに付け合わせの野菜は無くてもいいんじゃないか」と考えられたのは、私があまり飲食業の固定概念に浸かっていなかったからかもしれません。

「ミスジステーキ」(150g・1,400円、サラダ・スープ・ライス食べ放題付き)。オペレーションの簡略化などで人件費率を下げ、その分を食材コストに投入。やわらかくてうま味のある赤身肉がリーズナブルに食べられることが最大の強みに。付け合わせの野菜などはなく、シンプルに肉だけを提供するのも「やっぱりステーキ」の特徴

 ただし、この仕組みは、人件費を削ることだけが目的ではありません。あくまで「お客様ありき」。ご飯のセルフサービスは食べ放題ですし、溶岩石プレートによってお客様は自分自身で焼き加減を決められます。誰でもおいしく焼けるように、溶岩石もいろいろ試した結果、富士山の要岩石を採用しました。

 当然ですが、自分の“おいしい”が他人のそれと同じとは限りません。私がおいしいと思う焼き加減や味付けで提供するより、お客様自身がそれを決められるほうが喜びにつながると考えています。各テーブルに10種類以上のステーキ用のソースを置いているのも、好きな味で楽しんでもらいたいからです。

 2015年2月に出した「やっぱりステーキ」の1号店はわずか3坪でしたが、すぐに大繁盛。7カ月後に出した2号店は坪月商80万円をたたき出しました。以来、順調に出店し、直営21店舗、FC60店舗(2022年1月現在)にまでなりました。その中には、20坪余で年商1億円超の店もあります。

 物件は直営・FC問わず、全て私が現地に行って可否を判断します。エリア人口よりも人流・競合・雰囲気などから売上を予測し、家賃比率が売上の5%に収まることが目安の1つ。FC先を決めるときも必ず面談し、同じ船に乗るパートナーだと確信できなければ、組むことはありません。ある意味、相手の人生を預かることになるので、人間性も含めて見極める必要があると考えています。

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――コロナ禍の2年間も、出店ぺースは落ちていません。

 どの店も売上は落ちましたし、2020年3月に予定していた東京進出が3カ月遅れました。でも、悪いことばかりではなく、コロナによって戦略のチョイスが増えた側面もあります。

 例えば、テイクアウトやデリバリー、ゴーストレストランなどのマーケットが大きく広がりました。これは飲食店にとってはメリットです。当社も、以前から販売していた「ステーキ弁当」が好調です。店内で食べるほうがおいしいので、積極的にアピールをしていたわけではないのですが、コロナ禍のニーズで販売数が伸びており、売上の大事な構成要素になっています。

以前から販売していた「やっぱりステーキ弁当」(1,000円)などのテイクアウトが、コロナ禍で売上好調

 さらに大きいのが、物件です。コロナの前は、家賃交渉に応じる大家さんはまずいませんでしたが、今は違います。いい物件がいい条件で借りられ、チャンスが広がっています。

 実際、いい物件が空き始めたことで、2020年6月の東京進出から、2021年12月末までにFCを含めて30店舗を出店しました。特に東京1号店(吉祥寺店)のオープン日は、緊急事態宣言が解除される数日前。メディアの取材攻勢は計算通りで、広告効果は大きかったですね。面白いもので、東京に進出したことで知名度が上がり、全国的に売上が2割ほど増え、仙台や札幌などの一部の店は売上が倍になりました。

 今後は人材不足がいっそう深刻になり、牛肉高騰による価格改訂は必至。そのため、コスト圧縮や効率化を図るためにDX化をさらに進めていきます。東京・芝大門店(2021年8月オープン)では券売機に代わってタブレットオーダーとセルフレジを導入し、福岡のフードコートには配膳ロボットを走らせており、今後もいろいろな実験をして、オペレーションの効率化を追求していきます。

――一方で、人材育成や組織づくりにも力を入れていらっしゃいます。

 創業直後、個人で経営していたときは、ものすごい長時間労働でした。なにしろ、朝11時から翌朝の7時まで営業していましたから。法人化し、会社組織を整備するのに、2~3年はかかりました。今では社会保険はもちろん、年3回の賞与に加え、退職金制度も導入し、給与水準は東京と比べても遜色ありません。福利厚生や休暇ももっと充実させていきたいと考えています。独立支援制度もあり、すでに3人ほど独立しています。

 人材育成の方法は「任せて送り出す」こと。自分で考え、悩んで、あがく。成長するためには、こういったことを経験することも大切です。行き詰まって辞めたいという場合は引き止めずに、「1回、外に出てみなさい」と言います。結果的に、多くの人がパワーアップして戻ってきますね。

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――今後の展望と課題を教えてください。

 「やっぱりステーキ」は今年中に100店舗になる見込みです。ただ、出店数を追い求めるつもりはなく、多くても150店舗くらいまでと考えています。現在の年商は50~60億円ですが、これを増やすことにも、それほど興味はありません。

 それより、次の発想を形にしたいです。2年前から取り組んでいるのが、ステーキ店と唐揚げ店を併設してテイクアウトニーズに応える戦略です。さらに焼肉店も出店を準備中。薄くておいしい肉をニンニクと合わせて食べる、「やっぱりステーキ」とは異なる業態です。これはドミナント戦略の1つで、「やっぱりステーキ」の隣に焼肉店を作って相乗効果を生み出していく狙いもあります。

 もう1つ、実はポテトの専門店も構想中です。ファストフードのフライドポテトが一時中止になっただけで、これだけニュースになるのですから、ポテトには大きな潜在能力があるはず。面白い事業展開ができると踏んでいます。

 3年前に始めた海外進出は、コロナ禍が収まったら再開します。台湾、フィリピン、中国から始め、ヨーロッパでもチャレンジしたい。海外向けの業態の発想もたくさんありますし、いい物件もあります。足りないのは人だけ。これが大きな課題ですが、育成にも力を入れながら前進したいと考えています。

リーダー×一問一答

■経営者として一番大切にしていること
既存に縛られず自由な発想を創り続ける

■愛読の雑誌や書籍、Webサイト
料理サイト(少しでもアイデアが思い付いたら、それについて徹底的に調べます)

■日課、習慣
朝風呂で心身共にスッキリさせてから考える。夜には持ち越さない

■今一番興味があること
海外への出店。既存の事業以外での出店もあり

■座右の銘
意志あるところに道は開ける

■尊敬している人
イチロー

■最近、注目している店舗・業態
自分が今から創る新業態

■COMPANY DATA
株式会社ディーズプランニング
沖縄県那覇市牧志2丁目16番46号タカラマンション マキシー1・1501号
https://yapparigroup.jp/
設立:2015年
ブランド・店舗数:5業態・84店舗(直営24店舗・FC60店舗)
従業員数:約350人(社員約50人)

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