2022/03/08 繁盛の法則

多様な食のニーズに終日対応する香港式大衆カフェ兼食堂とは

東京・飯田橋にある「香港 贊記茶餐廳(チャンキーチャチャンテン)飯田橋店」は、香港スタイルの大衆的なカフェ兼食堂。実力のある本場の料理人による全時間帯に対応したメニューで人気を集めている。

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香港 贊記茶餐廳(チャンキーチャチャンテン)飯田橋店

Key Point

  1. 香港生まれのオーナーが現地のスタイルで営業
  2. 香港や広東省の実力ある料理人を招へい
  3. 少人数での来店を想定し、大皿ではなく1品1人前の分量で提供

香港関係者のネットワークで情報が広がり、オープン時から注目を集める

 香港ではコンビニエンスストアよりも店舗数が多いと言われる「茶餐廳(チャチャンテン)」は、香港人のモーニング、ランチ、ティータイム、ディナーまで、食の需要を終日支える大衆的なカフェ兼食堂である。2015年3月に東京・飯田橋にオープンした「香港 贊記茶餐廳(チャンキーチャチャンテン) 飯田橋店」は、都内で初めて茶餐廳の本場のスタイルを踏襲した店舗と言われている。オーナーの張旻偉(チャン・マンワイ)氏は、北京で「香港 贊記茶餐廳」を10年間経営していた人物だ。

 張氏は1944年に香港で生まれ、1980年代に2年ほど日本の文房具メーカーでインターンとして働き、いったん香港に戻った後、香港に隣接する中国広東省深圳(シンセン)市、続いて北京で事業を経営。その後、70歳を迎えたのを機に北京の店舗を閉業し、香港に戻ろうか、どうしようかと考えていたところ、ふと以前過ごした日本に行ってみようと思い立ち、2014年に再来日した。当時住んでいた飯田橋駅の周辺で、まずは住まいとする一軒家を探したが、すっかりビル街に変貌していた飯田橋駅付近には一軒家はなく、代わりに紹介されたのが駅から徒歩3分ほどの場所の路地にある4階建てのビルだった。張氏はそのビルの購入を決め、当初は住居にも使いながら、1階で「茶餐廳」を開業することにした。株式会社プラクティカルサプライを設立し、ビルの内外装工事を行って21坪の空間に32席を用意し、香港や広東省から実力のある料理人を招へいしてオープンにこぎつけた。

 都内での「茶餐廳」のオープンは、日本在住の香港人や香港と関わりのある人たちのSNSなどであっという間に広がった。そのため、数年間は香港、中国、台湾といった、中国系の来店客がほとんどだった。コロナ禍により外国人客が激減する一方で、日本人も増え始め、現在は来店客の約4割を日本人が占めるようになった。

「皮付き豚バラとチャーシュー」(写真手前1,480円)は、皮の部分をカリカリにローストして厚切りにした豚バラ肉と、広東式のチャーシューを盛り合わせた前菜。「牛肉焼きフォー」(同右1,250円)は、汁なし麺の中では一番人気の商品。メロンパン風に表面に甘みのある生地を使う「ポーローパオ」に、バターを挟んだ「ポーローヤオ(バター付)」(同左400円)。「エッグタルト」(同奥260円)はプルプルしたプリンのような食感が特徴。なお、テーブル上のガラス板にメニュー表を挟み込むのも、香港の「茶餐廳」ならではスタイルを踏襲したもの

洋風、中華、インスタント麺まで、多彩なメニューを提供

 円卓を囲んで会食を楽しむ中国料理店と異なり、茶餐廳は1人でも利用しやすいのが特徴で、ランチは一人客でも注文しやすいワンプレートの麺・飯類(800~900円)を主力としている。午後のティータイムは、紅茶の茶葉を煮出してエバミルクを加えた濃厚な「香港式ミルクティー」(ホット480円、アイス510円)、コーヒー豆を煮出してエバミルクを入れた「香港式コーヒー」(ホット400円、アイス430円)、紅茶とコーヒーの両方の風味を味わえる「香港式コーヒーミルクティー」(ホット400円、アイス430円)と、サンドイッチ、トーストなどの洋風の定番メニューがそろう。近くに設けた工房で焼き上げるメロンパンのような「ポーローパオ」(320円)、そこにバターを挟んだ「ポーローヤオ(バター付)」(400円)、プルプルしたプリンのような食感が印象的な「エッグタルト」(260円)は、テイクアウトでも好評で、それぞれ1日3回焼成し、各70個ほどを販売している。このほか、平日14~17時は、麺類のアフタヌーンメニューとして、汁なし麺8品目(各1,000円)、スープ麺8品目(1,000~1,110円)と、ミルクティー、レモンティーなどのセットドリンク(ホット200円、アイス220円)が楽しめる。また、香港でも絶大な人気を誇るインスタントラーメン「出前一丁」を使った麺メニューをラインナップに加えている。点心類や、1品1人前を基本とする一品料理、アルコール類も徐々に増え、フードメニューは約150品目、ドリンクメニューは約50品目と豊富にそろえている。しかも、一部のセットメニュー以外は終日オーダーできるのも特徴である。

 周辺で勤務しているビジネス層を中心に集客しているが、週末は遠方から家族連れや友達とともに訪れる香港人、中国人が多く、開店からずっとウエイティングが続く日もあり、1日当たり80組ほどが来店する。客単価は時間帯によって大きく異なり、ランチタイムは1,000円前後、ティータイムであれば800円ほど、夜のグループ利用であれば1人当たり3,000~4,000円となることもある。オープン以来、売上は着実に伸びており、2021年は年間平均で月商800万円を記録した。

 同店が香港の茶餐廳というスタイルを紹介し、徐々に根付かせてきている要因は、以下のようになるだろう。

  1. 香港生まれのオーナーが、香港のスタイルの茶餐廳として営業している。
  2. 香港あるいは広東省の実力ある料理人を招へいし、点心やパン、スイーツも手作りしている。
  3. 少人数で気軽に1日何度でも来店できるように、大皿ではなく、料理1品を1人前の分量で提供する茶餐廳の提供法を忠実に再現している。

 「贊記茶餐廳」としては、2018年3月に吉祥寺店(10坪25席)、2021年12月に赤坂店(16坪28席)を出店し、計3店舗体制となった。張氏は、自ら店内業務に加わることはないが、毎日どこかの店舗に出向き、商品チェックを兼ねて食事し、スタッフとコミュニケーションを取っている。この茶餐廳をさらに多店舗展開していきたいという思いとともに、現在はシェアハウスとしている飯田橋店の2階に別業態のレストランを作りたいと、さらなる意欲を見せている。
(Text and photo by Food Biz

香港 贊記茶餐廳 飯田橋店
住所
東京都千代田区飯田橋3-4-1 マンワイビル1F
TEL 03-6261-3365
営業時間
11:30~21:00(LO.20:30、変更の場合あり)
定休日
無休
https://r.gnavi.co.jp/n75h6vdh0000/

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