Vol.127
冷凍食品は外食のおそるべきライバル
競争相手は自分の店以外の飲食店だけだと思っている人が多いのですが、大間違いです。スーパーマーケットもコンビニも手ごわい競争相手です。彼らもまた1つの胃袋を巡って激しい争奪戦を繰り広げているのです。惣菜の強い食品スーパーに行ってみてほしい。その品ぞろえの豊富さ、一つ一つの商品のレベルの高さ。そして経時劣化への配慮、値ごろ感をしっかり押さえるスキル。何もかもが第一級です。
コンビニで最近驚かされることは、冷凍品売り場の拡充ぶりです。小さな店の中心にかなりの大きさの冷凍食品ケースがデンッと据えられています。そしてその中身の充実ぶり。外食で売られている商品のほとんどが、この冷凍食品ケースの中に収められているのです。
コロナで備蓄食が求められているというのも、この冷凍食品(冷食)強化の1つの理由ではありますが、それだけではありません。コロナ以前からこの傾向が顕著でした。スーパーもコンビニも戦略的に冷食の売上比率を高めてきました。食のニーズが冷食に向かっていることを、外食以外の食ビジネスグループはとっくに察知していたのです。
冷食のいいところは、フレッシュ&ヘルシーであることです。出来上がりのおいしさを瞬間的に封じ込めることができ、余計な添加物や防腐剤を入れる必要がありません。そして技術革新が繰り返され、簡単に、瞬時に、忠実に、料理が再現できるようになりました。外食業の中でもこの技術を利用して、レベルの高い冷食商品を生み出して、外販部門を強化しているところが少なくありません。膨らむ冷食市場を外食グループ自身が取るのか、スーパーやコンビニなどの食品小売業グループが取るのか、その戦端の幕が切って落とされたのです。今、確実に言えることは、従来の外食市場の一定(かなりの)部分が、冷食市場に流出してしまうということです。
「町の中華」がなぜしぶとく生き残っているか
さて、ここで話がガラッと変わりますが、いっとき町中華という言葉が流行りました。流行ったというよりは、すっかり定着しました。外食チェーンがこれだけ勢力を伸ばす中で、昔ながらの町の中華料理店が結構頑張って繁盛している。このしぶとく生きる店の存在を捉えて、町中華という言葉が広がったわけですが、なぜそういう店が町中華の領域に多く残っているのでしょうか。そこに思いを馳せなければいけません。
結論を先に言うと、「強火と鍋振り」をやり続けているからです。店主の技術力と火力、これが店に温存されているために、外食独自のお客を守り続けることができているのです。ラーメンにしても、中華メニューにしても、インスタント食品、冷食、チルド食品、レトルト食品がスーパーにもコンビニにもあふれかえっています。麻婆豆腐、チャーハン、酢豚、回鍋肉(ホイコーロー)、天津飯…なんでも安価で手に入ります。そして、そこそこのものが家庭で食べられるのです。しかし、それで一応満足はしても「何か違うな」という思いが残ります。そして「やっぱり、店主が鍋を振っている近くの店の方がうまいな」という結論に至ります。
つまりこの時、飲食店がスーパーやコンビニに勝ったのです。なぜ勝ったか。町中華のおやじさんの技術力と火力です。これが勝利要因です。ここに外食の強さが極めて象徴的な形で示されています。中華料理は特にこの店舗調理力の「利き」が強い領域です。強火で鍋を振ることが絶対的なバリアになります。
しかし、ほかの外食も程度の差はありますが、店舗調理力こそが武器になります。スーパーやコンビニでは出せないレベルのものを出すためには、店舗調理力を捨ててはならないのです。捨てるなどとんでもない話。もっともっと強化しなければなりません。
外食業の平均原価率は30%ですね。粗利7割ということです。なぜこんなに高い粗利が取れるのかというと、最後の調理を店でやるビジネスだからです。ここで人件費をかけて技術を投入するのだから、高粗利でなければ成立しないのです。はっきり言って面倒なビジネスです。しかし面倒だからと言ってここを捨てたり、簡略化してしまったら、先に述べた冷食類、そのほかの物販商品が一気にお客様を持っていってしまいます。
業種を問わず、外食の防波堤はまさにここです。「面倒なことを店でやり続ける」。この一点です。コンビニの巨大な冷食ケースを見て戦慄するまっとうな感覚をまず身に付けてください。生半可なことをやっていたら、この商品群に全部お客様を持って行かれてしまう。その危機感を強く持ってください。繰り返しますが、ポイントは技術の温存です。いや、強化です。店でやらなければならないことは、きちんとやり続ける。それによって壁を高く厚くしておけば、冷食をはじめとする物販商品にお客様を奪われることはありません。
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