2022/08/02 繁盛の法則

ビジネス街のニーズをつかむカレーライス専門店とは

東京・八丁堀にある「ロダン」は、オリジナリティー溢れるカレーライス専門店。2009年のオープン以来、周辺のビジネス層を中心に愛され続け、平日はランチだけで約100人を集客している。

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ロダン

Key Point

  1. 他店では味わえない独自のカレーを開発
  2. ビジネス層のランチ需要に配慮
  3. 自家農園で栽培する野菜やスパイス類を活用

カレー好きが高じて専門店をオープン

 おいしく、ボリュームがあり、手ごろな価格でランチに利用できる飲食店は、都心のビジネス街ではありがたい存在である。東京・八丁堀にある「ロダン」は、オリジナリティー溢れるカレーライス専門店として、2009年のオープン以来、周辺のビジネス層を中心に愛され続けている。

 中でもオーダーの7~8割を占める圧倒的な人気メニューが「ロースカツカレー」(950円)で、やや硬めに炊いた白飯200gに、欧風カレーをベースにした特製ルーをかけ、カシューナッツソースで模様を描き、揚げたての120gのロースかつ、燻製にした半熟卵を2分の1個、皮ごと茹でて素揚げしたジャガイモを添えている。一つ一つの構成要素に独自の工夫がありながら、限られたランチタイムに気軽に素早く食べられるのも魅力である。

 地下鉄八丁堀駅から徒歩3分ほどの場所にある2階建て、計24坪38席の小ぢんまりした店舗は、昭和レトロの純喫茶を彷彿とさせる内外装が目印で、店前の券売機で食券を購入して入店する。ランチタイムのピーク時は2階席も使用するが、回転が速いので、通常はテーブル席、カウンター席、キッチンのある1階をメインに営業している。

 「この物件を借りた当時は、ほぼ廃墟のような状態でした」と、オーナーである佐藤克也氏は振り返る。本業として古美術商を営む佐藤氏は、縁あって同物件を借りることになり、素人からできそうな飲食店としては、自身が食べることも作ることも大好きなカレーしかないと考えた。

 佐藤氏は1958年神奈川・横浜生まれで、東京・茗荷谷の高校時代にはカレー店を巡り、中でも学校から自転車でよく訪れていた上野広小路の「デリー上野店」、神保町の「キッチン南海」、新宿三丁目の「新宿中村屋」に大きな影響を受けてきた。自分でも週末にカレーを手作りして楽しむようになり、カレーの本場であるインドも何度も訪れたが、現地あるいは国内のカレーの有名店での修業経験があるわけではない。その中で佐藤氏が独自に創り出したのが「ロダン」のカレーであり、実際の調理方法はそれほど複雑ではなく、主婦はもちろん、高校生でもすぐに作れるようになるという。

 特にメインの欧風カレーの特製ルーは、エスビー食品株式会社のロングセラー商品「赤缶カレー粉」をスパイス類の4分の1ほどの分量に使っているため、日本人にはどこか懐かしさを感じさせる。ほか、ベースから全く作り方が異なる「ホールスパイスカレー」(1,000円)、「ディープオニオンカレー」(1,200円)、「グリーンパクチーカレー」(1,200円)、「牛挽肉カレー」(1,200円)をそろえている。全体的に塩分を控えめにしているのも特徴で、来店客が好みで塩味や辛さを調整できる調味料類やミックススパイス、ナンプラー漬け青唐辛子などを用意している。メインのカレーメニューは昼も夜も共通だが、夜は一品料理も数品加わる。客単価は1,050円で、平日はランチだけで約100人を集客し、男性が7割近くを占めている。

「2種盛りカレー」(1,500円)の一例で、ロースカツカレーとホールスパイスカレーを選んだもの。オーダーごとに揚げるロースかつは、薄めにスライスして2分半で揚げ上がるようにしており、カレーソースともよくなじむ。カシューナッツソースは、欧風カレーにもインドカレーにも合い、風味付けの決め手として使われることが多いが、混ぜると見えなくなってしまうため、カレーの上からかけることにした。ホールスパイスカレーは、スパイス類を丸ごと使うことで豊かな風味になっている。燻製にした半熟卵は、少しずつ崩して薬味のようにカレーに加えて食べるのがおすすめ。各テーブルに置かれた自家製の福神漬けは、自家農園で収穫した新鮮な野菜やハーブを使い、サラダとピクルスと福神漬けの中間的な、さっぱりした味わいが好評

自家農園の野菜やスパイス類を効果的に使用

 佐藤氏は茨城・下妻市の自家農園で、年間で30種ほどの野菜やハーブ、スパイス類を農薬を使わずに栽培しており、自ら毎週農作業に出向いている。開業当初はパクチーが入手しにくかったことから栽培を始め、次第に種類を増やしていった。また2018年ごろにダイコンを作り過ぎてしまい、その使用方法として福神漬けを自家製に切り替えることにした。福神漬けにはダイコンのほか、タマネギ、ニンジン、ナス、セロリ、ルッコラ、パクチーの花や実、ラッキョウ、カンピョウ、ミョウガなど季節の野菜を使い、酢、塩、しょう油、少量の砂糖などで漬けており、来店客から好評。消費量は市販品を用意していた頃の3倍ほど増えている。

 同店がカレーライス専門店としてビジネス街で根強い人気を獲得している要因は、以下のようになるだろう。

  1. 他店では味わえない独自のカレーを開発している。
  2. ビジネス層のランチ需要に合ったボリューム、価格、提供スピードに配慮している。
  3. 自家農園で栽培している野菜やスパイス、ハーブなどを効果的に使用している。

 コロナ禍においては、時短要請には応じたものの、休業はせずに営業を続けた。客数3割減という時期も経験したが、スタッフのシフトの調整などで乗り切ってきた。テイクアウトやデリバリーにも対応しているが、多いときでも売上は全体の2割弱、現在は1割弱に留まっている。

 時流や状況の変化に合わせて少しずつ進化を続けており、近年は女性客も徐々に増え始めている。また土・日曜日は関東一円から来店する人も多く、平日の7割ほどの売り上げを上げるようになっている。
(Text and photo by Food Biz

ロダン
住所
東京都中央区八丁堀3-8-4
TEL 03-5541-5777
営業時間
11:00〜15:00、18:00~21:30(変更の場合あり)
定休日
無休(年末年始、お盆は休業あり。2022年8月13日~8月16日は休業予定)
https://r.gnavi.co.jp/fbgpu5uu0000/

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