※スマイラー113号(2025年7月)より転載
なぜ、あなたの店は儲からないのか!!数字から逃げる経営者の末路
――須田さん、飲食関係者で数字が苦手で、すぐに拒絶反応を起こしちゃう人、結構多いじゃないですか。でも、数字に向き合わないビジネスってそもそもあるんでしょうか。
そうですね。まず、飲食店で働いている人、店長でも料理長でもいいですが、お店を回している人っていますよね。彼らのほとんどは経営者ではなく、オペレーターです。お店を回すには、お店の数字に向き合わなきゃだめなわけで、数字を把握できていないってことは経営者じゃないってこと。
――つまり「オレ、数字に弱いから」なんて言っている人は経営者じゃないってことですね。
そうです。スタッフのところにお客様を連れてくるのが、経営者の役割なんです。お店のコンセプトを考え、業態に落とし込むのが経営者。それを回すのが現場の役割なんです。でも、自分がお店に立っているってことは、オペレーターとして働いているだけなんだよね。それでも、日銭が入ってくるから経営者になったような気になっているんじゃないかな。
飲食業界で赤字店が多いにもかかわらず、出店する数と閉店する数がほぼ同じっていうのは、そういうことですよ。1年以内の倒産確率が34.5%の原因は数字を把握していない、わかんない経営者がいかに多いか、ということです。でも大丈夫です。それが学びのテーマだからダメとは言わない。
実際、飲食店の中にはきちんと学んでいる人もいます。で、その人たちは生き残る。学ばない人は、運が良ければ残れるかもしれないけど、ほとんどの人は、やっぱり市場から排除されちゃいますよね。
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――テンポスのお客様はみなさん、飲食業は多店舗経営しないと儲からないっておっしゃいます。でも、1店舗じゃ儲からないのはなぜなのか。今回は多店舗展開をキーワードに飲食店経営についてお聞きします。
はい、喜んで。結論から言うと、だから数字を知りなさいって話なんだけどね。まあ、1店舗でも儲けるんだっていう人もいるかもしれないけど、飲食を始める人は、居酒屋のおやじとか、ラーメン屋のおやじになりたいんじゃなくて、ラーメンビジネスがやりたい、居酒屋ビジネスがやりたい、業界で有名な誰々さんみたいになりたいといった野心というか、希望的観測が根底にあると思うんです。
で、その人たちがどういう軌跡を歩んできたかっていうことも知らず、ただ憧れとして年商何億、何十億って夢を描くのは間違っていると思います。そのクラスの人達って、やっぱりどっかで数字に向き合って経営者になったわけですから。
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――そうでしょうね。遅かれ早かれ、そこを学んでクリアした人が次のステージに上がれるのでしょうね。
そう。それで、一番数字に向き合えるのはどういう時かといえば、店が赤字になった時です。最初は友人、知人、そして新しくできた店だから行ってみようという人たちが来店してくれます。消費者は新しくできた店は、まあ一度は体験してみたいんですよ。
――確かにあそこにオープンした店、行ってみようというお客様は必ずいますよね。
そのオープン景気ってね、昔は半年ぐらい続いたんですよ。なぜかというと、今と違って情報が浸透するのに半年ぐらいかかったからです。ところが今は1カ月ですよ。たったの1カ月でオープン景気は終了します。情報が氾濫している時代ですから、オープン月はドーンと売上が上がるんです。想定していたのと近かったり、下手すると想像以上に売上が上がって、それで、ヨシ!と思うじゃないですか。でも翌月にはドーンっと下がっちゃうんです。
――その中にはオペレーションが悪くて、30分待たされたお客様の口コミなんかもあるんじゃないですか。
それもあるよね。お店だけじゃなくて、お客様も慣れていないってことを店主は分かっていない。そう、初対面だよ、どっちも。分かんない同士がガチでぶつかるのが新規オープンなんです。
しかも、街には飲食店がいっぱいあるから、お客様は消去法で選んでいるってことも分かっていない。あなたのお店に魅力を感じているわけじゃないってことを。リピートしてくれるお客様は、通いやすいとか、他の店より空いているとか、いろんな要素が絡み合ってリピートしている、これが現実なのです。そう、だから2カ月目の来店動機のほとんどはマイナスの感情なのです。行きやすいとか安いとか。
――あ、あそこだったらすぐ座れるし、みたいなね。
そうだね。なので、新規オープンの店のマーケットのポジションは低いんですよ。でも、店主はそんなことを考えない。だから初月ドーンと行きました。OK、いい数字だね。そしてこの調子続くものと思いきや、翌月は早くも売上が下がったところで、最初の支払いが月末に来るわけです。お金が残っていればいいけど、オープン前にお金使ったじゃない。その支払いがオープン月に来て、売上から払ってるじゃないですか。それで、2カ月目の売上げが悪い。しかし、先月の売上が良かった分、支払い金額も多い。オープンに備えて食材もたくさん買っちゃったし、その時に気づくのです。「うわぁ、こんなはずじゃなかった。やべぇ、資金がショートだ」って。
――つまり、2カ月目で早くも現実に直面するんですね。
それで一気にトーンダウンしてマインドが崩壊するんですよ。開業から3カ月目。「待てよ。今月もこんな調子だったらどうしよう」ってハラハラドキドキしながら店に立つから、ますますそれが現実になるわけです。なぜなら眉間にシワが寄っていて、お客様に満足していただく接客ができるはずがない。そういう状況が半年続いたら、大抵の人は精神が崩壊します。
で、どうするかっていうと、何も学んでない人は値段を安くするんですよ。安くすれば客が来るって信じているから。デフレ時代の幻想を引きずったまま値段を下げるんですよ。実際、ファストフード店って安いからみんなが利用するんだと思っているでしょ?
――そうじゃないんですか?潤沢な資金で設備投資するから安く調理が提供できて、その儲けで多店舗展開できるという、数の論理で収益を上げているわけで。
ファーストリテイリングを例に挙げると、ユニクロは安くて良い品を消費者に提供できているから儲かっているのではありません。柳井 正という強烈なカリスマ経営者によるトップダウンでもありません。ユニクロの強さは、むしろその真逆なところにあります。つまり、企業理念に基づいて新たな市場を創造し、特定の人に頼らない“仕組み”を作って、事業を回している。それがユニクロの最大の強みであり、これこそが柳井さんが時間をかけて取り組んできたことなのです。
飲食店も全く同じです。多店舗展開するなら、1店舗目から儲かる仕組みを作らないと、多店舗展開なんてできっこないんです。多店舗展開を正しく理解しないで、単にスケールメリットを考え、とりあえず3店舗開業しようなどと考えていては、間違いなく失敗するでしょう。“仕組み化”に取り組まない多店舗展開などありえないのです。
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