飲食店が値上げで客数を増やす秘策とは?食材の質と提供価値を最大化する経営戦略

値上げは客離れを招くと思われがちですが、実際には客数を伸ばす店と減らす店に分かれます 。その差は、お客様が価格改定に「納得」しているかどうかです 。清掃やサービスの質を磨き、値上げ分を上回る変化を提供できれば、お客様はむしろ応援してくださいます 。安易なコストダウンの危険性と、価値を高めて繁盛させる具体策を、株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏が解説します。

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株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

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「納得」を生む店と、「離反」を招く店の境界線

同じような値上げをしても、客数が減らない店と大幅に減らす店があります。その違いはどこから来るのでしょうか。結論は簡単で、お客様が値上げに「納得」していれば客数は維持でき、そうでなければ離れてしまうのです。

たとえば、入口もフロアもキッチンもトイレもピカピカに磨き上げられていて、いつ行っても笑顔があふれている。キビキビとしたサービスを実現している店は、値上げをしてもお客様は「まあ仕方ないよなぁ。これまでよく頑張っていたもんだ」と納得し、むしろ応援してくださるでしょう。一方で、店は汚い、サービスのレベルも低い、いつ行っても無愛想。こんな店が値上げをしたらたまりません。「もう二度と来るか」と、値上げを機にお客様は二度と足を運ばなくなってしまいます。

また、価格を据え置いたとしても、以下のような対応はかえってお客様の信頼を損ないます。
1)食材の質を落とす
2)ポーション(量目)を減らす
これらを行うと、お客様から厳しい評価を受けることになります。特に1)の食材の質を下げることは、店の信用を失墜させる「命取り」の行為です 。食材の質を落とすくらいならば、適切に値上げをする方が誠実な判断ともいえます。

2)ポーション(量目)を減らすのはどうでしょうか。食品メーカーでは、値上げを回避するために量目を減らす「ステルス値上げ」がよく行われますが、外食業では注意が必要です。食品メーカーの商品は、量目を減らしても味そのものは変わりませんが、外食業の商品は、量目そのものが味の一部を形成していることが多いのです。

たとえば丼物などです。カツ丼、親子丼、牛丼、どれをとってもご飯と具材の全体量、そして量の比率が味そのものを決めていることがわかります。外食業では、不用意なポーションカットが味を変質させてしまうことがあることを、確認しておかなければなりません。

現在、価格据え置きで注目されているチェーンが「サイゼリヤ」です。もともと低価格を打ち出しているファミリーレストランですが、「うちは値上げはしません!」と断固言い続けています。客単価は850円。これで値上げをしないでやっていけるのですから、大したものです。

客数が伸び続けて、売上も利益も伸び続けています。他のチェーンのお客様がサイゼリヤに流れ込んでいるのです。現行価格維持が圧倒的な支持を得ていることは間違いありません。こういうチェーンがあると、他のチェーンや個店は、より慎重に「自店の価値」を考えなければなりません。

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店の強さをさらに磨けば、値上げは受け入れられる

さて、賢い値上げの方法について述べておきましょう。先の1)と2)、食材の質を落としたり量を減らしたりするのは論外として、現状のまま価格だけを上げるのも、お客様の不満を招きやすいものです。何かちょっとでもいいので、変化をつけないとお客様は納得しません。「値上げをしたけど、ここが良くなった」という、プラスの変化、つまりお客様への還元ポイントを一つ添えることが大切です。今ならばお米の質を上げて「ご飯が抜群においしくなりました」、などは強い訴求力を持ちます。多くの店が安いお米に切り替えていますから効果は絶大です。他にも「ガルニ(付け合わせ)が変わって種類が増えた」、これもお客様の値上げに対する不満を和らげてくれます。

一番強くアピールできるのが、食材の質です。一般的に個人店は安くてもっといい素材はないか、という食材の質の向上への探究心が弱すぎます。なぜならば十年一日のごとく、同じ食材を同じ供給会社から受けて保っているところが多いからです。若者の求める水準が上がっている、それは実質、品質を下げていることになります。価格を上げなくても、質を上げる方法はいくらでもあるのです。

値上げをするとしても、「その代わりにこの部分でお客様に還元します」というものがなければなりません。それは食材の質を上げることが一番なのですが、メニューに関係ないことでもいいのです。前述のサービスの質の向上、クレンリネスの徹底もそうです。ともかくお客様に「お店も努力しているのだし」、という感覚(同情心と言ってもいい)を持ってもらわなければなりません。

お店は案外無頓着ですが、特にトイレの改善などは、お客様(特に女性)が非常に敏感な部分であるため、清潔感の向上や設備の充実を図るだけで、値上げに対する大きな納得材料になります。「やむを得ず値上げをしますが、その分さらなる努力をしています」という姿勢が店全体から伝わることが不可欠です。そのためには、日頃からお客様がどこに不満を持ち、何を求めているかに敏感でなければなりません。ただ、漫然と価格改定(値上げ)をすることが、一番お客様の怒りを買うのです。

お客様が自店のどこに価値を見出しているか正しく見極めてください。「安さに価値あり」と認められている店ならば、値上げにはよほど慎重になり、上げ幅を小さくしておかないとお客様の失望は倍化してしまいます。「価格はそこそこ。安いわけでもないけれど、食材の質と料理の腕はベスト」と、評価されている店ならば、質とスキルをさらに上げれば、お客様はその努力も認めてくださいます。逆に、「サービス力が抜群」と評判だった店が、ベテランクルーを解雇して未熟練のパートアルバイトに置き換えたならば、それこそ取り返しのつかないことになります。値上げに当たっては、自店の強さをさらに強くする方策こそが必要です。

結局のところ、値上げをしないことによって提供価値が下がるような「価格据え置き」は悪手(あくしゅ)でしかありません。先のサイゼリヤも「安さ」が最大の強さですから、価格据え置きという形で強い武器(価格力)を、さらに強めることができたのです。自店の強さが強化されているのであれば、「適正な値上げが許される」ということです。

これまで述べてきましたように、人を減らしてサービス力や店の活気が落ちてしまったら、それはまさに価値の下落です。「値上げしないので頑張っているけれど、味は落ちたし、店は汚くてなった」では、それは「頑張った」ことにはなりません。適正な値上げによって店の価値を高め、それをお客様に認めていただく。この循環こそが、客数増と将来の繁栄につながるのです。

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