FC経営の理想と現実とは?本部と加盟店が「運命共同体」になる条件

外食業のフランチャイズ(FC)展開において、本部と加盟店が真の「運命共同体」となる条件を、株式会社エフビー代表取締役の神山 泉 氏が解説 。赤字店が陥る自滅の「4つの禁じ手」や、全米最大のチキンチェーン「チックフィレ」に学ぶ本部の圧倒的な優位性、そして成功率を飛躍的に高める「社員独立制度」について紹介します 。

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株式会社エフビー 代表取締役 神山 泉 氏
早稲田大学卒業後、株式会社 柴田書店に入社。「月刊食堂」編集長、同社取締役編集部長を経て、2002年に株式会社エフビーを発足。翌年、食のオピニオン誌「フードビズ」を発刊。35年以上もの間、飲食業界を見続けてきた、業界ウオッチャーの第一人者として知られる。

Vol.176

赤字店が陥る「4つの禁じ手」がチェーンの寿命を縮める

フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)は、よく「運命共同体」だと言われますが、その言葉が当てはまるのは、売上と利益が十分に出ている時だけです。実際には売上が目標に届かず、営業赤字に陥ると、両者の関係は急速に悪化していきます。

私は 50 年以上にわたり、外食の業界をウォッチしてきましたが、本部と加盟店が常に「仲良し」などという、フランチャイズ(以下、FC)は見たこともありません。どこかで必ず、トラブルや紛争が起きているものです。

特に本部が勧めた立地で思うような売上が上がらない場合、確執は一気に激化します。こうしたリスクを避けるため、「立地指定はしない」「売上保証もしない」というのが本部の原則になっています。物件を紹介しても「最後に決めるのはあなたです」と念を押し、責任の所在を明確にするのです。

そのため、損益分岐点ギリギリで苦しむ加盟店は、生き延びるためにしばしば「禁じ手」に手を染めます。必ず、と言って良いくらいに以下のような行動を取ります。しかし、これらはどれも自滅への、悪手(あくしゅ)なのです。

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1.人員を削る
売上過少でも利益を確保しようと店長をすら置かず、アルバイトだけで店を回そうとします。それで利益が出ればいいのですが、あるべき営業ができないのですから、結果、サービスの質が落ちて評判を落とし、さらに売上が下がり、赤字幅を増やしてしまうという、悪循環に陥ります。

2.勝手に新しいメニューを入れる
藁(わら)をもつかむ思いでメニューを増やしますが、これはFCの根幹である「仕組み」を壊す行為です。オペレーションが混乱し、提供時間がバラバラになるだけで、客数増にはつながりません 。本来であれば本部は断固、はねつけなければならないのですが、売上未達の現状が本部を及び腰にするケースがしばしばあります。

3.食材を独自ルートで仕入れる
主力商品の食材を変えることまではしませんが、サブアイテムの食材やサラダ用の野菜、飲料、アルコールなどの副食材を安く買おうとします。これは本部側の「卸し利益の取りすぎ」という問題とも根深く絡んでいます。

4.追加投資(リフレッシュ)を嫌がる
客数が減っている店ほど、店をきれいにするための投資を惜しみます。外食業にとって定期的な追加投資はチェーン(店)の人気を保つために必須なのですが、投資をしないことで客数減に拍車をかけ、ジリ貧の道を突き進むことになるのです。

こうした事態を防ぐために、例えば、「これだけの投資をしたら 1年間ロイヤリティを 1% 下げる」といったインセンティブを用意し、実例をもって示し続けなければなりません。そのため本部は、強力なサンプル(追加投資による利益改善例)を豊富に持っていることが大事です。

全米最大のチキンチェーン、チックフィレに学ぶ「本部の絶対的優位性」と「儲け」

本部と加盟店は元はといえば赤の他人ですから、利益が出ないとなると途端に犬猿の仲になってしまいます。そういうことにならないためにはどうしたらよいか。答えは簡単です。「絶対に儲かるチェーン」になればいいのです。

それは至難の技ですが、その理想を実現しているのが、全米で最大にして最強のチキンチェーン「Chick-fil-A」(以下、チックフィレ)です。3,100 店舗以上を展開し、総売上高は、マクドナルド、スターバックスコーヒーに次いで 3位、ほぼ 100% FCです。しかも、日曜日は安息日として休業、商品はチキンバーガーとチキングリルバーガーの2品が基本という、極めてシンプルな構成ながら、1店舗あたりの売上高はなんと10億円を超えます。

チックフィレのすごみは、本部の指導力にあります。加盟店希望者が非常に多く、本部に殺到しますが、実は「狭き門」なのです。お金を持っているだけでは店は持てません。既存の店でキチッと修業を積んでマネージャー資格を持った人だけが、この狭き門をくぐることができるのです。一番求められていることは、「街の人たちに愛される店になる」ことです。チックフィレ精神を十分に持った人だけが、フランチャイジーになれるのです。私も訪米のたびにお店を訪問しますが、商品もサービスも素晴らしいものです。

また、本部の指導は絶対であり、店の立地も本部は決めたところに従わなければなりません。もし、勝手な行動を取ったら即、加盟店資格を取り上げられます。これが成り立つのは、本部に「必ず儲(もう)けさせる」という圧倒的な優位性があるからです。これこそが、FCビジネスのあるべき姿と言えるでしょう。

“街になくてはならない存在”になる。これを実現できれば、加盟店は必ず十分な利益を得ることができます。チックフィレではそれが実現されているのです。

成功率を高める「社員独立制度」と利益が出る店を譲る覚悟

日本のマクドナルドも今や多くの店舗がFCですが、フランチャイジーの多くは元社員です。マクドナルドは、「社員独立のチェーン」と言っても過言ではありません。社員独立型のFCが強いのは、長い歴史の中で培(つちか)われた「マクドナルド精神」を身につけており、本部の指導を素直に守るからです。つまり、本部と加盟店の一体化、運命共同体化が実現しているのです。

元は同じ釜の飯を食った仲間ですから、スピリットが共有化されており、お互いに譲るべきは譲る、という「阿吽(あうん)の呼吸」を持ち合わせています。一般的なフランチャイズを考える前に、まずはこの「社員フランチャイズ」に着手した方が、成功への近道になるかもしれません。

ただし、ここには絶対のルールがあります。それは「直営店としてしっかり利益が出ている店を引き渡す」ということです。

せっかく利益が出ている店を譲るのは、会社としては勇気が要る決断です。しかし、独立した社員が最初から黒字でスタートできれば、成功体験が生まれます。その姿を見て「よし、俺も後に続こう」と現役社員のモラルが上がり、組織全体が活性化するのです。社内フランチャイズでは、成功者が次々に出ること、これが大事なのです。

“利益が出る店を渡す” という覚悟。これがあって初めて、本部と加盟店は本当の意味での「運命共同体」になれるのです。私が長年この業界を見てきた経験から言っても、これは間違いありません。

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