2011/07/26 繁盛の法則

日本人が食べやすい味で支持されるアジア料理店とは

東京・世田谷と狛江市内に中小規模店を5店舗展開。小田急線狛江駅から徒歩3分ほどの「亜細亜食堂狛江サイゴン」は、店名通りベトナム料理をメインとしながら、日本人にとって食べやすいアジアの料理を手頃な価格で提供している人気店である。

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亜細亜食堂狛江サイゴン(東京・渋谷)

小田急線狛江駅から徒歩3分のビルの1階に出店。賑々しいアジアンテイストの内外装が目を引く

Key Point

  1. 多彩なアジア料理を手頃な価格で提供
  2. 本場の味を日本人向けに調整
  3. 野菜類の自社栽培による地産地消を開始

東京・世田谷と狛江市内に中小規模店を5店舗展開

小田急線狛江駅から徒歩3分ほどの「亜細亜食堂狛江サイゴン」は、店名通りベトナム料理をメインとしながら、日本人にとって食べやすいアジアの料理を手頃な価格で提供している人気店である。東京都下だが、多摩川を挟んで神奈川県に隣接する狛江市にあり、リピーターが約8割を占める。

経営元は株式会社タイムサービスで、1号店は1998年11月に出店した東京・世田谷の「上町サイゴン」である。東急世田谷線上町駅からすぐの線路沿いにあり、アジアの雰囲気を醸し出す独特の内外装で、街のランドマーク的な存在となっている。ほか、2003年1月オープンの狛江サイゴン、2005年10月オープンの「チャオサイゴン」、2007年3月オープンの「リバーサイゴン」、同年11月オープンの「カレー工房サイゴン」があり、上町本店以外はいずれも狛江市内で経営している。

同社の広幡武(ひろはた たけし)社長は、狛江市を中心に多彩な事業を展開する実業家である。仕事の関係でオーストラリアに行った際に、ベトナム人と出会った広幡社長は、その縁でベトナムを訪ねたところ、昔の日本を見るような活気、人々のたくましさに感銘を受けた。また、ベトナム料理もおいしかったことから、ぜひ日本でベトナム料理を紹介したいと考えた。そこで、ベトナム人の料理人を招き、上町本店を出店した。

当初はベトナム料理を前面に出していたが、その後、インド人やネパール人とも出会ったことから、カレーとナンも提供するようになった。一時はベトナム料理よりインドカレーを目当てに来店するお客が多かったほどだが、次第にベトナムをはじめ、他のアジア料理もよく出るようになり、季節の料理も工夫しながら、多彩なアイテムを提供するようになっている。現在は同社として、ベトナム人6人、ネパール人8人の料理人を擁している。ただし、料理人以外はほとんど日本人のスタッフであり、日本人にとって食べやすい味に調整するとともに、接客時には詳しく商品内容を説明し、またお客の要望にもきめ細かく対応している。

エビ入りの生春巻2本610円、手羽先を使ったチキンのオーブン焼き720円。甘口で子供でも食べられるバターカレー780円は、チーズをたっぷり挟んだチーズナン550円との組み合せが人気

ベトナム野菜などの自社栽培も開始し、
地域とのつながりを強化

「ベトナムを旅行したり、滞在した経験のある方には若干物足りないかもしれませんが、独特の香りを持つパクチー(香菜)が苦手な方には、パクチーなしにすることもできますし、それぞれの料理について私たちが詳しく説明します。パクチーや魚醤のニョクマムなどの香りの部分を除けば、もともとベトナム料理はあっさりした味のものが多く、初めてのお客様にも比較的食べやすいと思います」と、狛江サイゴンの古橋俊亮(しゅんすけ)マネージャーは語る。

同店は20坪45席で、狛江市内の4店舗の中では一番大きい。30代前後を中心に、地元の家族連れから年配者まで幅広く集客しており、女性客が約7割を占めている。昼は、麺・飯類、カレー、定食類などを提供し、客単価750円で、1日平均40~50人を集客する。夜は、食事目的のお客も多いが、ビール、ハイボール、果実酒、本格焼酎や、ベトナムウォッカなどとともに料理を楽しむお客も来店し、客単価2,000円で、こちらも1日平均40~50人が利用している。

また3年ほど前からは、近くに農地を借り、野菜類の自社栽培を開始した。ベトナム料理でよく使うパクチー、空芯菜、葉もの野菜のカイロー(カイラン)をはじめ、春菊やニンジンなどの根菜類も栽培している。広幡社長自ら畑仕事に取り組んでおり、その話を耳にした東京都の職員が視察に訪れ、「とうきょう特産食材使用店」として登録された。

同店が地元密着型のアジア料理店として常連客を掴んでいる要因は、以下のようになるだろう。
1ベトナム料理と、カレー、ナンなどのインド・ネパール料理を中心に、多彩なアジア料理を手頃な価格で提供している。
2ベトナム人、ネパール人の料理人と、日本人スタッフとで話し合いながら、日本人のお客にとって食べやすい味に調整している。
3ベトナム野菜などの自社栽培を開始し、地産地消により地元とのつながりを深めている。

「今後もお客様に気持ちよく楽しんでいただける店を目指し、お子様連れから年配の方まで来ていただけるように努めていきたいです」という古橋マネージャー。還暦を迎えた広幡社長がこれまで築いてきた地元とのつながりを、若いスタッフたちでより深めていきたいという。

住所
東京都狛江市和泉本町1-3-1
TEL
03-3430-5186
営業時間
11:30~14:30、17:00~23:30
定休日
月曜