2012/10/16 挑戦者たち

株式会社ブルームダイニングサービス 加藤 弘康氏

名古屋市を中心に17店舗を展開する株式会社ブルームダイニングサービス。幅広い業態に加え、それらを同物件の各階に置くなど新しいスタイルに挑戦中だ。そんな加藤氏にこれまでの道のりと展望を聞く。

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個人の枠を越えたチームワークで、満開の笑顔を咲かせ続ける

「自分の枠を越えることが大切」。株式会社ブルームダイニングサービス代表取締役、加藤弘康氏は言う。現在、愛知県名古屋市を中心に17店舗を展開。ホルモン、鉄板焼、バル、ラーメンなど幅広い業態に加え、それらを同物件の各階に置くなど、常に新しいスタイルに挑戦中だ。枠を広げ続ける加藤氏に、これまでの道のりと展望を聞いた。

加藤 弘康 氏

――独立する以前は、サラリーマンだったこともあるとか。起業の経緯を教えてください。

“自分らしさ”を真剣に考えたことが、独立の大きなきっかけだったと思います。ある企業に勤めていた頃、古着屋を始めたばかりの姉に会ったとき、姉はいきいきと目を輝かせて自分の仕事を語っていました。対する私は、3年制の専門学校で経営学を学んだ後、何の信念もなく就職して、ただ漠然と働いていました。姉の姿を見て、「このままじゃいけない」、そう思いました。父からは「3年は続けろ」と言われていたのですが、25歳までは「やりたいことをやろう」と決め、意を決して1年半ほどで退職。以後数年間は、アルバイトをしながら大好きなサーフィンに没頭しました。世界中の波を味わうために働くような日々です。その過程で、居酒屋のアルバイトを経験しました。24歳の頃でした。

飲食業の仕事は初めてではありませんでしたが、そのアルバイト先の社長は、店長になった私に接客の考え方から店作りまで、やりたいようにさせてくれました。好きなやり方をして、お客様に喜んでもらえる。自分らしい仕事はこれだ!と確信し、飲食業で独立を目指すようになったのです。

それからは、「人の3倍働こう」という気持ちでひたすら真面目に働きました。その甲斐あって、27歳の頃にはもう、独立への自信も持てるようになり、30歳までに独立するための具体的な構想を練り始めました。そして、その会社の取締役になっていた2006年、29歳でフランチャイズとして「小田井ホルモン」をオープンして独立。同年、ブルームダイニングサービスを設立したのです。

――様々な経験をしてきた分、大きな確信を得ての独立だったのですね。

2006年には、さらにもう1店舗をフランチャイズ出店し、2店舗とも想定以上の売上。滑り出しは順調そのものでした。独立したときの心の奥には、同世代に負けたくない、どこかにそんな気持ちもありましたから、達成感は大きかった。しかし実際には、そこからが本当の試練でした。

フランチャイズでは、ブランドやメニューはすでに用意されています。私はサービス面だけに注力すればいい。しかし3店舗目のオリジナルブランドの出店では、すべてをゼロから作り出さなくてはなりませんでした。ところが当時は、私自身の知識が不足していたこともあり、行きづまりました。それから4店舗オープンまでの1年半は、組織の基盤を固めることに専念しました。また、これからのブルームダイニングサービスを担う人材をしっかり育てるため、新卒採用を始めたのもこの頃です。私自身もまた、経営スキルを磨くためにセミナーなどに頻繁に通いました。

――会社としての体力をつける時期だったのですね。そのときどんなことを考えましたか?

あの頃、私たちは会社を続けるために何を大切にし、何を変えていくべきなのかをみんなで徹底的に話し合いました。その最大の成果は、会社の方向性や想いを、仲間と共有できたことです。未熟な私についてきてくれた仲間は、本当に大きな財産です。気軽に利用しやすい店をドミナント戦略で出店していく、という会社の方向性が明確になったのもこの話し合いのおかげでした。そして、名古屋市を中心に、地域に根差した店舗を目指そうと、一枚岩になることができたのです。

2009年8月に4店舗目として出店した「下町もんじゃ 花ちゃ花ちゃ」も、そんななかで生まれた店の一つです。もんじゃ焼きは気軽に楽しめて名古屋でも人気がありながら、店舗数は少なかった。このようなニーズの高さと競合店の少なさから、目的を持って来店する人たちが見込めると考えたのです。実際、この店舗が波に乗ったことで、ようやく経営が安定。そこから、ホルモン業態や鉄板焼の新店舗を出店していくことができました。

――まさにチーム力が結実したのですね。その後、会社は大きく成長していきます。

創業2年で最初の転機を迎え、その後2年で4~7店舗目をオープン。そして、2010年12月の8店舗目から、再び大きな転機を迎えました。その象徴が「縦丁」だと思います。

「縦丁」とは、異なる業態が軒を連ねる「横丁」を縦に並べたイメージのこと。初期投資はかかりますが家賃比率が安く、一つの建物で多様なニーズを取り込めるのが利点です。これを実現したのが、金山にある12坪3階建てビルでした。1階に「つけ麺・ラーメン カナヤマ55」、2階に「がブリチキン。金山店」、3階に「GABUCHIKIワイン倶楽部」の新しい3業態を相次ぎオープン。1業態なら月商800万円ほどの見込みが、3業態の相乗効果で約1400万円になりました。

各業態は、「気軽に利用できる」点で共通していて、上層に行くほど客単価が上がります。ラーメン業態は、有限会社SOUP BEATの澤竜一郎社長にフランチャイズ展開を申し入れ、ご厚意で実現できました。「がブリチキン。」は、お客様のニーズを考えて生まれたものです。味噌カツや天むすなど、名古屋では「王道メニューを少しアレンジする」メニューの受けがいい。また、ブランド地鶏・名古屋コーチンもあり、鶏肉が人気です。そこで、気軽に楽しめる骨付き鳥・からあげの店「がブリチキン。」に至ったのです。「ワイン倶楽部」は、ワインを気軽に楽しめるバルとして考えました。

この「縦丁」が成功し、当社は出店を加速させました。2011年から現在までに10店舗以上を出店。特に今年9月頭には、名古屋駅西口徒歩1分という超一等地に、再び「縦丁」を出店することができました。1フロアわずか8坪ですが、4層+テラスという構造を活用し、4階は予約制貸切スペース「PARTY SALON 家NOMI」、屋上のテラスは、1日2組限定の「GARDEN TERRACE空NOMI」を展開。飲食店の新しい楽しみ方を提供できればと考えています。

――現在、好調の波に乗っていますね。最後に、御社の今後の目標と夢を教えてください。

来期までに年商10億、経常利益1億、中期的には2016年までに年商30億を目指します。会社の規模拡大に合わせて、マネジメントの方法も変えていくつもりです。当社では、2010年より業態ごとにリーダーを置く事業部制を採っていますが、今後は、全社的な人材育成機関として「ブルームアカデミー」を開設予定です。また、来期末を目標に郊外型の大型カフェ業態の展開を考えています。これは、需要が見込めるという点だけでなく、深夜営業ではない業態を増やして、女性社員が長く働ける道を作りたいからです。

経営者として忘れてはいけないのは、すべての仲間やお客様、地域への感謝だと考えています。自分にとっての利益や、自分の能力といった枠を越え、チームで取り組み、お客様やスタッフの喜びを創造する。経営者として一番大切なのはそこであり、社名の「ブルーム」にも、「幸せの花を咲かせよう」という想いが込められています。みんなを幸せに、笑顔にするために、これからも私自身、努力し続けていきたいと思います。

がブリチキン。 名駅西口店
(名古屋・中村区)http://r.gnavi.co.jp/n016428/今年9月、名古屋駅西口徒歩3分のビル1階にオープンしたからあげと骨付き鳥が売りのバル。2階~ 4階、屋上テラスまで別業態をそろえ、「縦丁」を実現。
がブリチキン。 栄店
(名古屋・中区栄)http://r.gnavi.co.jp/n016425/地下鉄栄駅、名鉄栄町駅のいずれからも徒歩5分。大分県中津市名物のからあげや、香川県讃岐名物の骨付き鳥を独自にアレンジした鶏料理が大人気。特にからあげは日本唐揚協会主催の第3回からあげグランプリで、「中日本しょうゆダレ部門」金賞の実力。ハイボールと合わせて楽しむ人が多い。
大曽根鉄板軒
(名古屋・北区大曽根)http://r.gnavi.co.jp/n016421/2010年、大曽根駅前徒歩1分の好立地にオープン。鉄板を用いた焼鳥や「名古屋コーチンの炭火黒焼き」などが人気。また、系列店「花ちゃ花ちゃ」のお好み焼き、「がブリチキン」のからあげなども楽しめる。カウンター席、掘りごたつ席、ベンチ席、座敷席など、様々な利用シーンに対応可能。

Profile

かとう ひろやす

1977年

愛知県名古屋市生まれ

1997年

3年制の専門学校を卒業後、就職し、営業を担当。サービス業の基礎を学ぶ

1998年

趣味だったサーフィンに集中するため、退職。サーフィン中心の生活を送る

2001年

居酒屋でアルバイトを始める

2006年

フランチャイズとして「小田井ホルモン」開業して独立。同年、株式会社ブルームダイニングサービスを設立

Company Data

会 社 名

株式会社ブルームダイニングサービス

所 在 地

愛知県名古屋市西区赤城町16-1

店 舗 名

「がブリチキン。名駅西口店」「がブリチキン。金山店」「GABUCHIKIワイン倶楽部 名駅西口店」「GABUCHIKIワイン倶楽部 金山店」「鉄板炉端 花ちゃ花ちゃ」「大曽根鉄板軒」「つけ麺・ラーメン カナヤマ55」「名古屋名物! 味噌とんちゃん屋 小田井ホルモン」など

※本記事の情報は記事作成時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報はご自身でご確認ください。

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