2018/04/24 特集

0からはじめるインバウンド対応

インバウンド(訪日外国人)の勢いが止まらない!マーケットは都市から地方へ、モノからコトヘと広がりながら、拡大する見通しだ。好調が続くインバウンドの現況と今後を展望し、今始められる対応を考察する。

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インバウンド(訪日外国人)の勢いが止まらない! 2018年1月・2月は、ともに前年同月を超え、各月の過去最高を更新(推定値)。マーケットは都市から地方へ、モノからコトヘと広がりながら、ますます拡大する見通しだ。好調が続くインバウンドの現況と今後を展望し、すぐに始められる対応を考察する。

【INTERVIEW】インバウンドのプロフェッショナルに聞く、訪日外国人の現状とこれから“打てば響く”、好調マーケット。日本の食への期待値も高い!

株式会社やまとごころ
代表取締役 インバウンド戦略アドバイザー
村山慶輔氏■ https://www.yamatogokoro.jp兵庫県神戸市生まれ。米国ウィスコンシン大学マディソン校卒。2000年アクセンチュアに入社。2003年同社戦略グループに異動後、地域活性化プロジェクト、グローバルマーケティング戦略などの様々なプロジェクトに従事。2006年同社を退社。2007年にインバウンド観光に特化したBtoBサイト「やまとごころ.jp」を立ち上げ、ホテル・小売・飲食・自治体向けに情報を発信し、教育・研修、コンサルティングサービスなどを提供している。2013年朝日新聞社発刊の雑誌「AERA」で「アジアに勝つ日本人100人」に選出。インバウンド関連諸団体の理事や、国・自治体の委員、アドバイザーを多数兼任。最新著書「インバウンドビジネス入門講座 第3版」(翔泳社)が発売中。

極めて順調な伸び率。国や自治体の施策も活発

インバウンド(訪日外国人)市場が、引き続き活況を呈している。2017年の訪日外国人数は2800万人を超え、伸び率は前年比19.3%と極めて順調。政府は2020年に4000万人、2030年に6000万人という目標を掲げ、様々な政策を打ち出している。実現すれば、12年後は、現在の2倍以上の市場規模になる計算だ。

株式会社やまとごころ代表取締役・インバウンド戦略アドバイザーの村山慶輔氏は、「打てば響くマーケット、それがインバウンド」と断言する。国が施策を打つと、それに反応して、着実に成果が表れてきた。実際、ビザの緩和、免税品目の拡大、LCCやクルーズ船など交通インフラの整備、海外での活発なプロモーションなどの政策が、市場を刺激してきたのだ。

しかも、こうした施策は地方にも波及。「例えば、宮崎県では世界最大クラスとなる、5000人規模の大型クルーズ船を日南市油津港に受け入れるため、県として岸壁を整備する方針を打ち出しています」と村山氏。ほかにも、多くの自治体が予算をつけて外国人客の誘致に乗り出しており、今後の成長に大きな期待がかかっている。

2020年以降も伸び、国内旅行消費額を上回る

またインバウンドの成長は、2020年の東京オリンピック後も続くことが予想されている。政府は、訪日外国人旅行消費額の目標額を、2020年=8兆円、2030年=15兆円とし(※2017年は4.4兆円)、10年間で7兆円もの増収を見込む。一方、日本人国内旅行消費額のそれは、2020年=21兆円、2030年=22兆円と、増加額はわずか1兆円の見込み。市場規模そのものは日本人のほうが大きいが、伸び率は圧倒的に外国人の方が高い。「そこからさらに10年後の2040年には、消費額でも外国人が日本人を抜くかもしれません」と村山氏。インバウンドが、飲食店としても無視できない規模に成長していることは明白で、日本の人口が減少していることを考えればなおさらだ。

では、なぜインバウンド市場はこんなに拡大すると考えられているのだろう。「それは海外旅行が世界のトレンドだからです」と村山氏。実際、世界中の人々が積極的に海外旅行に出かけていることを表すデータがある。国連世界観光機関(UNWTO)の調査では、2010年の海外旅行者数が9.4億人だったのに対し、2020年には14億人、2030年には18億人になると予想。なかでも特筆すべきは、中国、香港、韓国、台湾などアジアからの出国者数の増加。村山氏は「所得水準の上昇にともなって、アジアの人たちの海外旅行ニーズの伸びが顕著です。地理的に近い日本が選ばれやすく、日本の観光政策も功を奏して、訪日というアクションにつながっています」と分析する。

確かに、現在の訪日客の8割はアジアからだ。直近では韓国が前年比40%増と高い伸び率を見せる。一方、アジア以外の地域について村山氏は、「欧米やオーストラリアには伸び代があります。観光庁も国別に推進室を作り、予算とともに体制を整えていますから、今後のインバウンドの重要なポイントとなるでしょう」と指摘する。

リピーターは6割を維持。地方の飲食店にも注目!

現在、訪日外国人のリピーターは6割。政府は、人数の増加とともにリピーター6割の維持も目標に掲げる。「リピーターを継続的に獲得していくと、様々な変化が起きます」と村山氏。例えば買い物は、おみやげの爆買いから自分が日常的に使うものが好まれるようになり、購入品目が拡大する。そのため、有名百貨店だけでなく、様々な小売店へも足を運ぶように。行き先や宿も多様化し、都市部の高級ホテルだけでなく、地方での民泊や農泊(農家の宿)など、体験的な要素も多くなる。

さらに、食へのニーズも拡大するという。「1日3回の食事は、旅の関心として必然的に上位にきます。特に日本食はヘルシーで高級というイメージがあり、日本食を食べることへの期待値は高い」と村山氏。「和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたこと、世界のトップシェフが、旨みや発酵など和食の技法を学び、取り入れていることも、外国人の和食人気の要因の1つでしょう。なかでも寿司は強い」(村山氏)。日本の寿司職人を追った米国のドキュメンタリー映画「二郎は鮨の夢を見る」も、寿司人気に拍車をかけている。

「和食だけでなく、フレンチやB級グルメへの評価が高いのも、日本の特徴」と村山氏は言う。さらに、食材や日本酒への視線も熱く、「東北のアワビの価格が、香港のレストランでは日本の20倍以上することも。日本酒では『獺祭』や『十四代』など、海外で注目されているブランドも多数あります」(村山氏)。こうした日本の食への注目が、訪日を後押ししている。

2017年の訪日外国人数は、日本政府観光局(JNTO)が統計を取り始めた1964年以降最多に。主要20の国・地域のすべてで過去最高を記録した。※人数の千の位は四捨五入
今年もすでに数多くの外国人が日本を訪れており、1月は前年同月比9.0%増、2月は23.3%増と、各月の過去最高を記録している。
日本から近い韓国・中国・台湾・香港の東アジア4市場の合計は、前年比21.9%増の2,129万人。全体の74.2%を占め、訪日外国人のほぼ4人に3人は、東アジアから来ていることがわかる。
観光庁が昨年行ったアンケートデータを見ると、外国人が「訪日前に期待していたこと」(複数回答)の1位は「日本食を食べること」と、やはり日本食への関心は高い。ちなみに「訪日前にもっとも期待していたこと」(単一回答)の設問でも、「日本食を食べること」は1位で27.9%。2位の「自然・景勝地観光」の16.4%を大きく引き離している。

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